第25話 お姉さんの心をくすぐるなあ
「・・・だってー、女の子しかいない部に男の子が見学って事は、どう考えたって可愛い子を探しに行ってたとしか思えないよー」
菊枝垂さんはそう言ってニコニコしているけど、マジで何を考えてるのか、全然分かりません!というか、偏見が酷すぎます!!
「ま、所詮は男なんてそんなモンよねー。女の賞味期限を勝手に決めて、それを過ぎたらゴミ扱い。違う?」
菊枝垂さんはニコニコ顔で僕の顔を覗き見ながら言ってるけど、表情とは逆に、言ってる事は相当
僕は思わず『ハッ!』となって菊枝垂さんをマジマジと見てしまったけど、逆に僕がマジマジと見た事に気付いたのか、菊枝垂さんの方が視線を外した。
「・・・君に聞きたいんだけど、君はカノジョさんといつまで一緒にいたいと思う?」
「いつまで?」
「うーん、ちょっと質問が抽象的すぎたかなあ・・・取りあえず今だけなのか、1年生の間だけなのか、この学校を卒業するまでなのか、それとも5年、10年、20年・・・男って、長くて10年も一人の女について行けば十分だと思ってない?」
菊枝垂さんは視線を真っ直ぐ前に向けて自転車置き場に向かって歩いているけど、言ってる内容は、
僕は正直『カチン!』ときたけど、ここで言っても仕方ないと思って黙っていた。菊枝垂さんも僕がまさか気分を害しているとは思ってないようで、ハッキリ言うけどニコニコ顔だ。そのまま僕と菊枝垂さんは、並ぶようにして自転車置き場に向かって歩き続けた・・・
「・・・わたしねえ、ずうっと一人の女に寄り添ってくれると宣言して、それを実行してくれる人に憧れてるけど、そんな純愛小説に出てくるような好青年がいるとは思えないなー。君の知り合いにそういう人がいる?それとも、君自身が君のカノジョさんに『僕は一生、君のために尽くすよ』とか、背中が痒くなりそうなセリフを言うの?」
「ちょ、ちょっとー、仮に僕が菊枝垂さんのカレシだったとしても、この場所には
「あれっ?わたしの事を知ってる?」
「だってー、昨日、ソフトボールグラウンドで大泣きしてましたよねえ」
「うわっ!その場所に君がいたのをスッカリ忘れてたあ!」
「そういう事ですよ」
「ま、その話はこっちへ置いておくとして、じゃあ、話を元に戻すけど誰もいなければ言う勇気はある?」
「うーん、そうですねえ・・・菊枝垂さんみたいに可愛い子が相手だったら、本気の本気で言ってもいい!って思ってますよ」
「あらー、結構嬉しい事を言ってくれるわねえ。そう言ってくれると嬉しいから、わたしの心のメモ帳に豆粒くらいの記録を残しておいてあげるねー」
「豆粒くらいは酷いですー。せめて1ページにして下さいよお」
「うーん、君は可愛いし、ホントの意味で弟みたいだから1行にしておいてあげるね」
「豆粒から1行にしてくれたのは嬉しいけど、もう少しランクを上げて欲しいなあ」
「拗ねない拗ねない。ホント、チビのくせに生意気なんだからー」
「悪かったですね!どうせ僕は160センチにも満たないですよーだ、フン!」
「そういうところはお姉さんの心をくすぐるなあ」
「同じ1年生なのに『お姉さん』は無いと思いますよー」
「あー、ゴメンゴメン。でも、ホントのホントで、君って典型的な弟タイプだと思うよ」
「そうですか?」
「女の子に褒められて嬉しくないと思う男の子はいない筈だよー。素直にハイハイと言っておくのが将来のためだよ」
「そんなモンなんですかねえ」
「そうだよー。それが君と君のカノジョさんの為だよー」
「言っておきますけどー、本気の本気でカノジョいませんよ」
「あれっ?そうなの?」
「本当です!」
「という事は、昨日、ソフトボール部の子に突撃して玉砕したなあ?」
「勘弁して下さいよお。どうして僕が誰かにコクって断られた事になってるんですかあ?」
「という事は、昨日は君が望んでる女の子が見付からなかったから、今日は仕切り直しの日という事?」
「そういう事にしておいて下さい。本当は違いますけど」
「ま、わたしも君のプライバシーにかかわる事を根掘り葉掘り聞くのはやめておくわねー」
「そうして下さい」
「あー、そうそう、君に言っておくけど、このわたしに『好きです、付き合って下さい』とか言っても無駄だよ。君が可愛いから逆に先に言っておいてあげるから感謝しなさーい」
「まさかと思うけど、『君が傷つくのが可哀そうだから、お情けで先に断りを入れておいたわよ』とか言うつもりだったんですかあ?」
「ズバリ、その通り!感謝しなさーい」
「はいはい、分かりました。僕はタカビーで背の高い女の人は嫌いですから、フン!」
「あらー、わたし、早くも嫌われた?」
「というか、タカビーで背が高くて、それでいて僕より出来る姉に振り回されてますからー」
ここで自転車置き場についたけど、菊枝垂さんの自転車は一番手前にあったから、その自転車の鍵のロックを菊枝垂さんは外した。
外したロックを鞄の中に入れると、再び僕の方を見た。
「・・・なるほど、と言う事は、君の理想の女の子は、それとはまったく逆の『自分より背が低くて、それでいて大人しくて、女の子の方が自分を頼って来る』みたいな子ね」
「ほとんど正解ですー」
「それじゃあ、君とわたしは永遠に平行線のままね」
「そうなると思いますよ。菊枝垂さんは超がつく程に可愛い子だから正直残念ですけど、お互いに傷つかない事が一番いいですからね」
「ヒュー、泣かせるセリフを言ってくれるわねえ。お姉さん、グッときちゃうなー」
「あのー、僕には先に断りをいれたんじゃあなかった?」
「あー、そうだった、ゴメンゴメン」
それを最後に菊枝垂さんは僕に軽く右手を上げて、自転車に乗って僕の前から去って行った。最後に「また会いましょうねー」というセリフと笑顔を残して・・・
僕は最後まで『僕は
ただ、明らかに菊枝垂さんは父親を嫌悪している。それが男子に対する偏見になってるように思えて仕方なかった・・・
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