第17話 永遠の17歳

「・・・はーい、以上でホームルームは終わりだけど、あと5分したら高校生としての学習が始まるから頑張ってねー。高校生の本分は学習よー。授業は遊びじゃあなくて学習というのを忘れないでねー。授業が終われば好きにしていいけど、決してハメを外さないように気うをつけなさーい。それじゃあ、帰りのショートホームルームでお会いしましょう!」


 朝のショートホームルームは高砂たかさご先生のこの一言で終わりになったけど、高砂先生のホームルームの進行はちょっとと思ったのは僕だけだろうか?ま、それは仕方ない。何しろ若葉しょしんしゃマークの先生で、手探り状態なのだ。担当教科は日本史だけど、実は1年7組の最初の日本史の授業は全教科の中で一番最後。『お楽しみは最後まで取っておく』と言わんばかりの時間割に、男子も女子もガッカリしているくらいだ。

 えっ?どうして?たかだかクラス担任の授業くらいで落胆するな?

 あー、それはですねえ、昨日のロングホームで「茶道部の顧問になりました」と言ったんだけど、7組のみんなから「何で茶道部の顧問になったの?」と逆質問され、答えをつもりが、何と裏千家の上級の許状、簡単に言えば免許を持っている事をポロリと言ってしまったから、女子からは一斉に「大和撫子やまとなでしこの鏡!」「ニッポン女子の誇り!」とキャーキャー持てはやされ、男子からは「オレ、茶道部に入ります!」とか「先生のカレシに立候補しまーす!」と一斉に歓声が上がったほどだ。本人は「大学生でも持てるレベルの物ですからあ、その程度でキャーキャー言われてもー」と逆に困惑していたのが印象的な、大和撫子やまとなでしこの先生だ。

 そんな大学を卒業したての高砂先生が1年7組を出て行って、ほどなく今日の1時間目の国語の教科担任である、早晩山いつかやま先生が入ってきた。

 最初に簡単な自己紹介があったけど、1年5組のクラス担任で、3月までは浜砂市立高校の3年生を担当していて、今月からは国語教師として戻って来たと言ったから、一斉に「おおっ!」とドヨメキが起こった程だ。5組から8組までの国語を担当しているから、手毬てまり姉ちゃんが早晩山先生の国語の授業を受ける機会はないけど、知っての通り(?)ソフトボール部の顧問だから、手毬姉ちゃんも早晩山先生との関わりを持っている。「高台寺こうだいじさん以外でソフトボール部に入りたい人は、この場で名乗り出て欲しいなあ」と言ったけど、誰も手を上げなかったから、早晩山先生を含めて全員が笑っていたほどだ。

 相当美形な先生だから、教壇の真ん前の席の神代じんだい さくらさんがいきなり立ち上がって「先生!どういうメイクをしているのか教えて下さい!!」と手を上げて質問した程だ。だけど、早晩山先生はアッサリと「ノーメイクだ」と言った事から、女子も男子も一斉に「冗談だろ?」「嘘でしょ!?」「絶対にナチュラルメイクよ!」とか騒ぎ出した。早晩山先生は仕方なく、その質問した神代さんを呼び寄せて自分の頬や唇をワザと触らせたけど、神代さんが「メイクしてなーい!」と絶叫したから、クラス中が大騒ぎになったほどだ。因みに年齢を男女問わず質問されたから、開口一番「永遠の17歳!」と言って全員が爆笑したほどだ。しかも「本当の年齢は絶対に教えないから、もし知ったら地獄へ墜ちると思って覚悟しておけ」と言って笑わせた。

 でも、大変申し訳ないけど僕は早晩山先生の年齢も、どうしてノーメイクなのかも、そのんだよねえ。

 ただねえ、午後の6時間目の体育は僕にとって地獄だった。体育は男女別で8組の男子と合同でやるけど、1年6組担任の駒繋こまつなぎ先生は男子柔道部の顧問だ。いきなり持久走だから、女子以下の体力の僕にとって持久走は地獄そのもの。しかも駒繋先生が後ろを一緒に走ってるから、僕は駒繋先生から「おーい、アラフィフの先生より体力が無いとは情けないぞー」と揶揄われつつ後ろからツンツンされたから、まるで閻魔えんま大王に後ろから追いかけられているみたいで怖かった(?)です、はい。因みに女子は1年3組担任の塩釜しおがま先生だけど、その細身のスラリとした体形は、かつて1回だけだが箱根駅伝を走った事もある陸上部の顧問だから、青葉さんを始めとした7組と8組の女子が熱狂しながら体育館でバスケの授業をしていたのが、グラウンドにまで聞こえていたくらいだからなあ。


 そんなこんなで今日の7時間の授業が全て終わり、高砂先生の帰りのショートホームルームも定時キッカリに終わって下校になった。

 1年生が正式な入部届を出すのは今月中が期限だから、4月中は体験入部の形で全ての部や同好会に参加して全然OKだ。ただの見学でもいいし、手毬姉ちゃんや青葉さんのように入部前提で練習に参加しても全然問題ない。

 僕は最初から帰宅部のつもりだし、アーリーも「『Vチューバー同好会』というのを自分で立ち上げる気もないし、かと言って『釣り部』は金がかかるからなあ」と言ってるから、今のところは帰宅部が濃厚だ。


 僕は真っ直ぐに帰るつもりだったけど、まさかこの後にに巻き込まれる事になるとは、全く予想してなかった・・・

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