第18話 呑気
僕は『
僕は本当は帰りのショートホームルームが終わったら真っ直ぐに帰るつもりだったけど、
いや、本当は僕は図書室へ行くつもりだったけど、アーリーが僕を半ば強引にソフトボールグラウンドに連れ出した、が正しい。でも、普通の人が見たら『女子の練習を見ている呑気な男子生徒』だろうね。
今はフリーの打撃練習をやってるけど、打撃投手をやってるのは部長の
僕たちはやる事がないから、打球の行方を目で追ってるだけなのだが・・・
「・・・ホント、手毬さんが言ってたけど、
「まあ、それについては僕も否定しないよ。だいたいさあ、打球の行方を追ってる人よりも手を振ってる子の方が多いって、何を考えてるんだあ?」
「それなりに可愛い子が揃ってるのは俺も認めるけど、真面目な話、俺とヨッコー以外に観客がいない。それに引き換え、女子のテニスコートには男子が殺到しているけど、ソフトボールグラウンドには全員が背を向けている。この差は何だあ?」
「仕方ないだろ?女子テニス部には、
「結局、可愛いだけではダメ!強ければ男が勝手に擦り寄って来るという典型的な例だよな」
「手毬姉ちゃんは一部では名前が知られているけど、
「その時の手毬さんの最後の1球が119キロだったっていう話だろ?」
「そう。正しくはベンチのスピードガンの記録だから、正確かどうかは分からない。結構速い球だったらしいけど、公式記録じゃあないからね」
「今朝の
「『手毬姉ちゃんと一緒にソフトボールをしたい!』とか言い出す1年生がいる事を2年生や3年生、それに顧問の
「その腹いせとばかりに、俺たちに手を振る事に熱を上げてるのかあ?」
「アーリーの目に叶うような
「お前さあ、俺を揶揄ってるのかあ?」
「というより、何でアーリーはここにいるんだ?」
僕はニヤニヤ顔でアーリーの方を向いたけど、そのアーリーは「はーー」と短いため気をついた。
「・・・本当なら俺は今頃、
「茶道部?何だそりゃあ?まさかとは思うけど
「さすがの俺も、教師に手を出すのは絶対にマズいというのが分かってるぞ!」
「じゃあ、再質問だけど何で茶道部なんだあ?」
「大和撫子なら
「お前さあ、それって偏見だぞー」
「偏見でも何でもなーい!この3つの中で男子部員がいるのは茶道部と書道部だけど、昨日は
「はいはい、わかりました。よーするに茶道部の大和撫子を探しにいくつもりだったんだろ?」
「まあ、それは否定しない。2つ年上までは俺の守備範囲だ」
「だから高砂先生は守備範囲外だと言いたいのか?」
「その通り。俺を
「それで、話は戻るけど、どうして茶道部ではなくソフトボール部なんだ?」
「
「青葉さん?」
「そう。あいつ、『セブンシックスのカフェで我慢してやるから、今日の帰りに奢れ。しかも砂糖4つとミルク2つだからな』とか言うんだぜー。完全に上から目線は勘弁して欲しいぞ、ったくー」
「それなら練習が終わってから合流すればいいだろ?」
「俺だってそうしたかったぞ!だけどさあ、『先に帰るのは許さん!ここで待ってろ!』とかブーブー言ってるから、仕方なくだぞ」
「はいはい、そういう事にして・・・」
僕はアーリーとの話を無理矢理打ち切った。というより、アーリーが僕から目線を切ったから、僕もアーリーの目線の先を見たのだが、そこで僕は信じられない物を見た!
なぜなら・・・手毬姉ちゃんは立ち上がって、制服姿の女子と何やら言い争いをしているけど、その女子の胸元にあるのは赤色リボン、つまり1年生だ。しかもその1年生が誰なのか、僕は一目で分かった!
♪♪♪~ ♪♪♪~
はあ!?何でこんな時に電話が鳴るんだあ?しかもこの音は雅姉ちゃんだ!
ここで出なかったら後で何を言われるのか、僕には全く想像出来ない。仕方ないから僕は大慌てでブレザーからスマホを取り出した。
「・・・もしもーし」
『はーい、お姉ちゃんでーす!今どこにいるのー?』
「随分呑気な事を言ってますねえ」
『そんな事はどーでもいいけど、早く質問に答えなさーい!』
「ソフトボールグラウンドだよ!」
『ソフトボール?あんたさあ、本気の本気でお姉ちゃんを振って高台寺さんに乗り換えるつもり?それとも大芝山さんあたりに「マネージャーをやってね」とか言われたのお?』
「どっちも違います!それより今、大変な事になってるんだからさあ」
『大変な事?何それ?』
「手毬姉ちゃんが口論してるんだよ!」
『口論?相手は誰?お姉ちゃんが仲裁してあげます!』
「仲裁できるようなら僕も苦労しない!」
『どういう事?』
「手毬姉ちゃんと口論してるのは・・・菊枝垂さんだよ!」
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