第14話 座布団10枚!

 時刻は7時半を少し過ぎた・・・


♪ピンポーン♪


 予想していたとはいえ・・・今日も玄関の呼び鈴が鳴った・・・

「・・・どっちだと思う?」

 僕はみやび姉ちゃんと手毬てまり姉ちゃんの顔を見たけど、二人ともニコニコ顔で互いの顔を見合わせている。

有明ありあけ君じゃあないのー?昨日は高台寺こうだいじさんに遅れを取ったから」

青葉あおばちゃんだと思うけどなー」

「お姉ちゃんは有明君に座布団10枚!」

「私は青葉ちゃんに座布団10枚!」

「毬ちゃーん、それじゃあ賭けになってないよー」

「たしかに」

「えーと、それじゃあ、お姉ちゃんは『有明君に女の子を紹介する』に変更!」

「あらー、雅お姉ちゃん、随分強気ですね」

「大丈夫大丈夫!ちゃあんとアテがあるからあ」

「そこまで言うなら、私は『青葉ちゃんに男を紹介する』に変える。当たり前だけど雅お姉ちゃんが責任を持って紹介してよ!」

「いいよー」

「ホントにいいの?随分軽い返事だけど」

「大丈夫大丈夫!どっちに転んでも相手がOKする自信があるからあ」

 はあああーーー・・・雅姉ちゃんも手毬姉ちゃんも、殆ど面白半分で言ってるとしか思えないぞ、ったくー。アーリーや青葉さんがこの場にいたら怒ってたかもしれないというのを自覚してくれ。

「・・・それはそうと陽ちゃん、早く出なさいよ」

「そうそう、相手は待ってるんだよー」

 やれやれー、ホント、こういう時に弟というのは辛いですねえ。


 モニターを見れば答えは一発で分かるけど面白みが無い。だから、僕はあえてモニターを見ないで玄関扉を開けたけど・・・


「・・・回覧板だよー」


 玄関前にいたのは、隣の家の妹背いもせ婆ちゃんだあ!

 僕は思わず「へっ?」と口に出して後ろを振り向いてしまったけど、雅姉ちゃんも手毬姉ちゃんも互いの顔を見合わせて笑っている。おいおいー、そりゃあないだろー。

 僕は気を取り直して回覧板を受け取ったけど、扉を閉めようと思ったその瞬間、アーリーと青葉さんが互いに顔を『フン!』とばかりにソッポを向きながら僕の視界の前に現れた。やれやれ、どうやら雅姉ちゃんも手毬姉ちゃんも賭けは不成立、つまり引き分けのようですねえ。


「「「「「行ってきまーす」」」」」

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