第10話 天国みたいな高校
そんな僕と
「・・・他人の空似かもよー」
「
「でもさあ、この5組の子が本当に
「というか、どうして手毬ちゃんは入学式前からソフトボール部の練習に参加してたんだあ?こんな超弱小校なのに」
「あー、それはねえ、雅お姉ちゃんが同じ2年8組だった大芝山先輩に喋っちゃったのよー」
「はあ!?」
「それでー、
「あたしまで引っ張ってきたのは手毬ちゃんの責任よー。責任取りなさいよー」
「それも雅お姉ちゃんだよー」
「はあ?」
「だってさあ、8割程度の力で投げたって誰も受けられないなんて、私もマジで自分の目を疑ったよー。それでー、雅お姉ちゃんが推薦の形で青葉ちゃんを手弱女先生に教えたから、手弱女先生が青葉ちゃんのお父さんに頭を下げたって格好なのー」
「はーー、うちのお父さん、若い女の先生に頭を下げられたら『おう、任せとけ!』とか言わんばかりに張り切っちゃうからねー」
「そういう事だからゴメンねー」
「だからといってさあ、あたしがソフトボールをやってるのに、これが本物の大和錦で、しかもノホホンと他の部に入ったら納得できないよー」
「だからあ、責任の大半は雅お姉ちゃんにあるから、雅お姉ちゃんにカッコいい先輩を紹介してもらえばー」
「あー、それはいいかもー。でもヤマアラシ先輩はナシだからねー」
手毬姉ちゃんと青葉さんはそう言ってニヤニヤしながら僕の後ろに立っている雅姉ちゃんを見てるけど、その肝心な雅姉ちゃんはわざと顔を明後日の方に向けて口笛を吹いている。どう考えても、雅姉ちゃんは青葉さんをソフトボール部に無理矢理引き込んだ犯人だと自覚しているとしか得思えない!
そりゃあないだろ、雅姉ちゃん、無責任すぎますー
雅姉ちゃんは『これ以上突っ込まれたらヤバイ!』とでも思ったのか、右手を軽く振って食堂を出て行ったから、恐らく購買にパンを買いにいったんだろうけど、相変わらず手毬姉ちゃんと青葉さんはアーリーのスマホを手でいじりながら話し続けている。
「・・・ところで、この際だから手毬ちゃんに聞いちゃうけど、どうして桜岡高校を蹴って
「私は家に一番近いから
「はあ!?」
「ま、半分冗談だけど半分本当」
「ますます意味不明」
「だってさあ、桜岡高校にしたら、
「はーー、あんたらしいわね」
「
「たしかに
「野球部もサッカー部も万年1回戦校として有名で、公式戦に勝ったのは2回か3回だった筈だし、他の運動部も男女問わず似たり寄ったりの成績しか残してない。ソフトボール部に至っては、創部15年で公式戦で勝った事が無いどころか引き分けも無いとして、県内では超有名校だけど、逆に言えばスポ根とは無縁の、ただ単に『やりたいけど他の学校ではやらせてもらえない』という生徒たちの救済校になっちゃってるけどねー」
「そんな高校に、全国の強豪校からスカウトが殺到する手毬ちゃんみたいな子が入ってくれば、そりゃあ誰でも飛びつくよねー。あたしが顧問だったら、本人と親に土下座してでも入部してもらうだろうね」
「でしょ?ある意味、勝敗に拘らなくてもいいチームだから、こーんな天国みたいな高校、行かない手はないわよー」
「あんたさあ、まさかとは思うけどあの時の事を今でも根に持ってる?」
「うーん、持ってないと言えば嘘になるけど、根に持ってるのは大人の方だよ」
「大人の方?」
「えーとー、上手く説明できなんだけどー、『勝利至上主義』とでも言おうか、勝つためなんら何でもアリ!要するにエゴ丸出しで、それを選手に押し付けるのが当たり前。従わないなら使わない、去れ!というのが平然とまかり通るのが嫌になったというのかなあ。だけど、ここにはそういう物が無い。勝てなくてもいいからやりたい、やれるだけで幸せという人たちが集まってくる。私も
「スポーツ推薦で私立高や強豪校に入れば、勝つ事を強いられる。それが嫌だから
「そう言う事!」
「随分呑気に言ってるけど、そのせいで、あたしは髪もギターを手放さざるを得なくなったんだから、手毬ちゃんは責任を取って誰かいい男を紹介しろ!これは命令だあ!!」
「青葉ちゃんなら黙っていても言い寄って来るわよー。まあ、イザとなったら大芝山先輩の伝手で誰か紹介してもらうっていう手もあるけど」
「あの大芝山先輩が紹介してくれると思う?あたしらに向かって『
「というか、誰もカレシがいないんじゃあないの?他の先輩も私や青葉ちゃんに『お願いだから紹介して!』て言い寄って来る位だから」
「はーー、たしかに野球部の専用グラウンドが県道の向こう側の
「その話はまた後で考えるとして、本当にあの大和錦さんかどうか調べる手はないの?青葉ちゃんはフルネームを知ってる?」
「大和錦
「さっすが青葉ちゃん!」
「キャッチャーというのは対戦する相手のデータを常にインプットしておかないと話にならない。手毬ちゃんのように球を投げてるだけとは違うんです!だから男を紹介しろ」
「その話は後でって言ってるでしょー」
「はいはい、約束だぞ。それより
結局、アーリーは手毬姉ちゃんと青葉さんから急かされるようにして日暮君たち
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