第9話 ああー!いたいた!!
午前の生徒会主催のオリエンテーションは、父さんや
そのまま時間は進み昼休み・・・
1年生は午後からの部・同好会合同説明会に参加する義務があるけど、2年生と3年生は、生徒会執行部と説明会への参加者以外は自由参加だ。
お昼ご飯の食べ方は3種類ある。家からの弁当持参、購買のパン、それと食堂のランチだ。
僕は食堂へ行こうと席を立ったけど、それとほぼ同時にアーリーも席を立った。
「・・・おーいヨッコー、飯は?」
「ん?食堂」
「初日からスペシャル定食かよ?」
「そういうアーリーだってスペシャル定食だろ?」
「そりゃあそうだ。うちは共働きだから弁当は期待してない」
「じゃあ、行く?」
「行く」
そう言うと僕もアーリーも並ぶようにして教室を・・・と思ったその時、僕の左腕を誰かが『ガシッ!』と掴んだ!
何が起こったのかと思って僕は左を向いたら、それは
「・・・
「へっ?どうしたの?」
「食堂へ行くんでしょ?」
「そうだけど・・・」
「じゃあ、もう少し待ってなさい」
「はあ!?」
「食堂へ行くなら8組の側の階段を降りた方が近いでしょ?もうすぐ
「あれっ?手毬姉ちゃんが来るの?」
「そう」
「僕、アーリーと約束してあるんだけど」
「はーー、あたしも不本意だけど手毬ちゃんがいい、って言ってるから、お情けで同席させてあげる」
当たり前だけどアーリーは「『同席させてあげる』が上から目線だぞー」とブーブー文句を言ってるけど、手毬姉ちゃんと同じテーブルに座れるなら、という事で本気で怒ってない。むしろ上機嫌だ。
そんな時に7組に手毬姉ちゃんが入ってきたから、そのまま僕とアーリー、手毬姉ちゃんと青葉さんは並んで食堂へ向かった。
食堂は結構な人数で賑わっていたけど、僕たち4人組は空いてる席を探して、奥の方の席に座った。テーブルは6人掛けと4人掛けがあるけど僕たちのテーブルは4人掛けだ。僕の隣にはアーリーが座り、僕の正面が手毬姉ちゃん、その隣が青葉さんだからアーリーの正面だ。
僕たちは4人ともスペシャル定食を食べてるけど、今日は和食メニューになっていて、
僕から見て右のテーブルの3年生男子4人組は全員がカレーの「大盛り」か「超大盛り」としか思えない量だし、ポテトサラダだって僕の3倍から4倍としか思えないくらい盛ってある。青葉さんや手毬姉ちゃんは女子とはいえ運動部だから結構食べる方でポテトサラダは結構盛られているし、アーリーも『痩せの大食い』だからポテトサラダは隣の男子といい勝負だ。逆に僕のポテトサラダの量は左のテーブルの1年生女子2人組の量とほぼ同じくらいだ。
そんな僕たちは午前の愚痴り合い、要するに「暇だった」というのを笑いを交えて話してたけど、アーリーが「思い出した」と言ってブレザーの内ポケットからスマホを取り出した。
僕は何事が起きたと思ってアーリーのスマホを見たけど、そのアーリーはメールを開いた。
「・・・
「写真?」
「昨日言ってた、5組の可愛い女の子」
「あー、ナルホド。
「そう。それで日暮に突っ込んだら、ドサクサに紛れて5組の女子数人と一緒に取った写真の中に例の可愛い子が写ってる写真があるってのを聞いたから、送ってもらった」
そう言ってからアーリーは1枚の写真を開いたけど、その写真には3人の女子が写っていた。3人のうち2人は僕も知ってる
たしかに可愛い子だ。パッと見た感じでは大人しそうな子で、髪は肩より少し長いくらいだ。でも2人の女の子より頭1つ高いから、手毬姉ちゃんと同じくらいの身長だというのは容易に想像がつく。
青葉さんや手毬姉ちゃんも「見せてー」と言ったからアーリーはスマホごと手毬姉ちゃんに渡した。その写真を見て手毬姉ちゃんは「あらー、結構可愛いわねー」とか言ってたけど、青葉さんは「はっ!」という表情をしたかと思ったら手毬姉ちゃんからスマホを奪い取った!
「ちょ、ちょっと青葉ちゃん!どうしたのよー!」
「こいつ、似てる!」
「はあ!?何の事?」
「
そう言って青葉さんは手毬姉ちゃんにスマホを渡したけど、手毬姉ちゃんは首を傾げている。
「・・・たしかに、あの大和錦さんに似てるけど、こんなに髪が長かったかなあ」
「前回、あたしらが大和錦を見たのは去年の夏だから、あれから髪を伸ばしていたら丁度こんな感じにならないか?」
「でも眼鏡を掛けてるし・・・まあ、元々コンタクトだったとしたら眼鏡にしていても全然不思議じゃあないけど、普通に考えたら
「普通に考えなくても有り得ない。大和錦ほどの女なら
手毬姉ちゃんと青葉さんはスマホを見て考え込んでるけど、これだけの情報で本人かどうか分かれば誰も苦労しないですよね。だいたい、僕には『ヤマトニシキ』さんが誰の事なのかサッパリ分かってないし、アーリーも分かってないから互いに顔を見わせてるくらいだ。
「・・・ああー!いたいた!!」
いきなり後ろから大声が上がったから、僕やアーリーだけでなく周りのテーブルの連中も一斉に声の方を見たけど・・・はあ!?
「ちょ、ちょっと陽ちゃん!どうしてウチの電話に出ないのよ!!」
「えっ?どういう事?」
「あんたさあ、そのスマホを見せなさい!」
「ちょ、ちょっと雅姉ちゃん!食事中です!食事中!!」
雅姉ちゃんは僕が食事中だというにも関わらず、強引にブレザーからスマホを取り出したけど、それを手に取った途端、声のトーンを上げた。
「はあ!?
「あー、ゴメンゴメン。授業中は電源オフが基本だから入れるのを忘れてたあ」
「『忘れてたあ』じゃあないわよ!おかげでお姉ちゃんはスペシャル定食を食べ損ねたでしょ!どうしてくれるの!」
「そんな事を僕に言わないでくださーい」
「罰としてセブンシックスのカフェを奢りなさい、絶対よ!」
「えーっ!勘弁してよー」
「問答無用!」
「はあああーーー、分かりましたよ、奢ります、奢ります」
「今日中よ!絶対だからね!!」
「はいはい」
「『はい』は1回だけ!」
「はい!約束します!」
「ついでに購買でパンを買うから、その金も出しなさい」
「勘弁してよー。スペシャル定食よりパンの方が安いんだから、そっちは自分で出してよー」
「スペシャル定食とパンは別物です!」
「はい!分かりました!」
雅姉ちゃんはえらい剣幕だったけど、僕が素直にハイハイと言ったからニコニコ顔で右手をサッと差し出した。仕方なく僕は雅姉ちゃんに百円玉を1枚、手渡したけど、それを受け取った雅姉ちゃんは一層の上機嫌だ。
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