お姉ちゃんと愛好会

第6話 確定したのであります!

“トントン”


(シーン・・・)


“トントン”


(シーン・・・)


“ガチャリ”


「おーい、よーちゃん、おはよー」

「・・・・・」

「早く起きないとお姉ちゃんは怒るわよー」

「起きればいいんでしょ?」

「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」

「ちょ、ちょっとみやび姉ちゃん!バカでかい声を出さないで下さい!近所迷惑この上ないですからあ」

「だ、だってさあ、陽ちゃんが自分で起きるなんて信じられない!」

「僕が自分で起きたらダメなんですかあ?」

「明日は東海大地震だ!いや、南海トラフ大震災だあ!!」

「いい加減にしてください!」

 はあああーーー・・・早朝から大騒ぎしないで下さーい、僕だって普通に自分で起きますからあ。


 僕の家では朝ご飯は全員揃って食べる事はない。起きてきた人が勝手に食べるからだ。一応、婆ちゃんか母さんのどちらかが支度をしてくれてあるから、それを食べるだけだ。想像できると思うけど、婆ちゃんが作っても母さんが作っても基本は和食だ。どうしてもパンを食べたければ自分でやってください。もっとも、おかずは和食限定ではない。

 今朝はご飯と海苔のり、味噌汁、ゴボウの金平きんぴらアジの干物、ベーコンエッグ、佃煮つくだにだ。海苔は勿論地元浜名湾産、味噌汁の具は豆腐と青ネギ、浜名湾産のワカメ。当たり前(?)だが沢庵たくあんは毎朝定番である。

「・・・雅姉ちゃん、醤油しょうゆ取って」

「あいよー」

 僕はジャージの上に1枚セーターを羽織ってるし、雅姉ちゃんもパジャマの上に1枚セーターを羽織っている。僕の向かいの席に座っている雅姉ちゃんは自分用の小皿に醤油を垂らすと僕に手渡した。

 僕は醤油を小皿に垂らすと小瓶をテーブルの端に置いた。その小皿に海苔をポチャッツと漬け、それをアツアツご飯の上に乗せ、いわば海苔巻きのようにして食べている。これが僕のお気に入りでもあるのだ。

 そんな僕と雅姉ちゃんはテレビを見ながらご飯を食べてるけど、雅姉ちゃんはご機嫌だ。

「・・・ところでさあ、陽ちゃんはどの部にするか決めてあるの?」

「ん?帰宅部」

「それって、決めてないのと同じだよー」

「帰宅部だって立派な部です!」

「ノンノン!お姉ちゃんの権限で部を指定します!」

「ちょ、ちょっと雅姉ちゃん!それって本気で言ってるんですかあ?」

「生徒会には、全ての部や同好会に助言する権限が与えられています!同好会の存続が危うい時には幽霊部員を引っ張ってきて同好会を存続させるのは、極々当たり前の事なのです!」

「シレッとした顔で言わないで下さい!」

「とーにーかーく、陽ちゃんは既に決まってるから、お姉ちゃんが手続きを代行ね」

「冗談じゃあありません!僕は誰が何と言っても帰宅部です」

「いいじゃん、お姉ちゃんだって帰宅部だし」

「はあ!?MY高マイコーは帰宅部も届出が必要だったんですかあ!?」

「ノンノン!正確には部ではなく『愛好会』です!」

「愛好会?」

「愛好会は同好会でも部でもありません!陽ちゃんがお姉ちゃんと一緒の愛好会に入る事は、MY高マイコーに入学した時点で確定したのであります!」

「勝手な事を言わないで下さい!生徒会長の弾劾だんがい裁判を申請します!」

「陽ちゃんはお姉ちゃんの折角の好意を無駄にするつもりなの?悲しいなあ、グスン」

「嘘泣きはやめてください。僕は誰が何と言おうとも帰宅部です」

「それじゃあ、後でお姉ちゃんが愛好会のメンバーと一緒に陽ちゃんを誘います。それならいいでしょ?」

「誘ったイコール入会という条件だったら最初から拒否します」

「大丈夫だよー。お姉ちゃんを筆頭にして、みーんな可愛い子ばかりだから、黒一点確定よお」

「というと、雅姉ちゃんは女子生徒しかいない愛好会に、僕を無理矢理加入させたいんですか?」

「当たり前です!お姉ちゃんの言ってる事は絶対です!まさに『お姉ちゃんは神様です!』を体現したような愛好会ですからあ」

「絶対に拒否!百歩譲ってソフトボール部のマネージャーの方がマシです!」

「それだとハーレム確定だから、そっちの方が贅沢です!」

「雅姉ちゃんにあごで使われる位なら、手毬姉ちゃんとあごで使われた方がマシです!」

 はあああーーー・・・雅姉ちゃん、マジで中学の時より勢いが増してます!まさに超大型台風並みですー。


 そんな僕たちの口論(?)を尻目に朝の情報番組は占いコーナーの時間になったのだが・・・



『今日、一番運勢がいいのは双子ふたご座のあなたでーす』


「・・・お、手毬姉ちゃんが1位だ」

「えーっ、たしか昨日も1位だよー」

「雅姉ちゃーん、別に2日連続1位だったくらいで文句を言わなくてもいいと思うけど・・・」

「・・・で、毬ちゃんはどうしたの?」


 雅姉ちゃんはふと思い出したかのようにテレビから僕に視線を変えたし、僕もテレビから雅姉ちゃんに視線を変えた。

 そのまま僕たち2人は手毬姉ちゃんが普段座っている、僕の左の席を見たけど、今でも手毬姉ちゃんのお茶碗とお箸は手つかずのままだ・・・

 僕も雅姉ちゃんも『ハッ!』という表情になって立ち上がった!そのまま手毬姉ちゃんの部屋へ一目散に走った!!


“バターーン”


 僕は手毬姉ちゃんの部屋の扉をノックする事もなく開けたけど・・・


♪♪♪~♪♪♪!!! ♪♪♪~♪♪♪!!! ♪♪♪~♪♪♪!!! ♪♪♪~♪♪♪!!! ♪♪♪~♪♪♪!!!


 もはや爆音レベルとも言うべき目覚まし時計が鳴り響いてる中、今でも枕を抱きかかえたまま寝ている手毬姉ちゃんがいたのは言うまでもなかった・・・

「「はあああああああーーーーーーーーー・・・・」」

 手毬姉ちゃん、いくら学校が近くなったとはいえ、目覚まし時計が鳴ったら起きるよう、クセをつけて下さい・・・

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