3. ハイソックス

 中1の頃、一時期テニス部に所属していた事がある。

 テニスは一向に上達しなかったが、球拾いの時に手を使わず、ラケットで球を転がして掬い上げる、という技だけは覚えた。


 ある日、先輩が打ち損ねた球をいつものように拾いに行った。

 いつものように、お辞儀をするような姿勢のままラケットの先で球を転がす。

 その時自分のすぐ後ろに立つ、白いハイソックスに白いスニーカーを履いた足が視界に入った。

 他の子も来たのかな、とすぐ振り返ったが、既に誰もいなかった。


 おかしいな、と首を傾げながらコートのエンドラインまで戻り、わたしの後ろに誰か来なかったか、と友達に聞いた。

「誰も行ってないよ?なんで?」

 聞き返す友達に説明している途中で気がついた。


 誰かのイタズラかなとも思っていたが、女子はみなショート丈の靴下を履いている。

 白いハイソックスを履いているのは男子だが、男子テニス部は校舎の向こう側にある離れたコートを使っていて、見渡す限りここに男子は一人もいない。

 アレは誰の足だったんだろう。


―終―

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