2. 隣の家のおじさん
まだ両親と一緒に寝ていた子供の頃。
既に宵っ張りだったわたしは、小学校に上がると大人と同じくらいの時間に床につくようになった。
「電気消すよ」と母が照明の紐を引く。
豆電球は点いているが、すりガラスの窓を通してさし込む県道の灯りの方が明るかった事を覚えている。
父は既に酔い潰れ、寝付きのいい母も寝息をたて始めた。
ひとり眠れないわたしは母の隣で横になり、窓の方を向いてぼんやりとその灯りを眺めながら眠くなるのを待っている。
その時、窓ガラスに人影が映っている事に気がついた。
最初は窓枠に服がかかっているのかな、と思ったが、明かりを消す前は何もなかった。
ああそうか、お隣の家のおじさんが窓際に立っているのが映ってるんだな、とウトウトしながら思う。まぶたがだんだん重くなり、いつの間にかわたしも眠っていた。
翌朝。
目を覚ましたわたしは、昨夜見ていた窓からお隣のおじさんに挨拶できるかな、と思い窓を開けてみた。
その窓から見えた景色は、家の真裏にある田んぼと、田んぼの向こうを走る県道ばかり。
この方角には隣家などなかったのだ。
―終―
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます