曇天と墨色の心
@rinna0504
第1話
「じゃあいきますよ。」
耳の後ろで軽快に音が鳴る。
頭が軽くなっていく。長い夢から覚めたかように。
「こんな感じでどうですか?」
若い女の美容師が言う。
私は今日、髪を切ったのだ。
長い間伸ばし続けた髪を、バッサリと。
鏡で自分の姿を確認すると、毛先がほほをかすめる。
「ありがとうございましたー」
甲高い声を遠くに聞きながら、私は帰路についた。
翌朝学校に行けば
「髪、どうしたの!?」「めっちゃ短い!!」
などの吃驚の声。
「まあ、イメチェンかな?」
なんて、心にもない笑いを浮かべて言う。
私は平静を装いながら、自席に向かう。
君を横目で一瞥する。
だけど視線は合わない。
周りの友達と楽しげに話してるだけ。
いつもなら、挨拶をするだろう。
だけど、きっともうすることはない。
もしかしたら、あれが最後の会話になるかもしれない。
そんな事を考えながら空を見つめた。
湿気に満ちて陰鬱な空だった。
乾ききったと思っていた視界は
また白く滲み出した。
曇天と墨色の心 @rinna0504
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