白鷺02
マスコットキャラクターのリボが白鷺に呼びかけてきた。
魔法少女たちが属する魔法少女同盟の規約によって、マスコットと魔法少女の定期連絡は義務付けられている。
《退屈そうだね、白鷺。そんな君に良いお知らせだ》
リボからの連絡は、テレパシーで白鷺の脳内に直接送られてくる。
《新たにハジケリストが一人、捕まった。今まで魔法少女同盟が始末してきたハジケリストとの事実関係を調査したいところだけど、黙秘を貫いている》
《そこで、私に役割が回ってきたということね》
白鷺の固有魔法は、尋問に適していた。
特に、情報の全貌が既に相手に把握されていると思い込ませることに長けていた。自分が無駄に黙秘しているのではないかという無力感を味わわせ、スパイの存在を仄めかすことで仲間への猜疑心を煽る。そうして、全てを白日の元に曝け出させるのだ。
《そうだ、白鷺。君には期待しているよ!》
期待と称賛、そんなものがなくても私は確実に任務をこなしてみせる。白鷺は応答を保留することで、不快感を露わにする。もっとも、リボに魔法少女の思考は筒抜けなのだが、彼の下らないお喋りに付き合う気分ではなかった。
ハジケリストたちは、欲望の集団だ。あれは人間の形を留めていない。
抑制すべき禁断の欲求を共有し合うことで連帯する、社会的に孤立した忌まわしき男たち。
——白鷺の家族は、ハジケリストの一人に皆殺しにされた。
だから白鷺は天涯孤独の身で、彼女が人生でやり残したことなど、家族の復讐しかないのだった。
私は確実に任務をこなしてみせる。
白鷺はもう一度その言葉を反芻する。言葉は呪いだ。それは人の精神を縛る。彼女は引き寄せの法則を信じている。願望は言葉に出すことで、現実に近づく。
白鷺は、己に刻み付けるように悲願を口にした。
いつの日か私は、家族を殺したハジケリストをこの手で殺すだろう。
校舎の屋上から飛び降りる。強風に煽られて、スカートが音を立ててはためく。魔法少女の強化された脚力で難なく着地し、白鷺は歩き出した。
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