音声A
美少女は死してのみ真の美を発揮する、そう神は仰せられた。
神は私だ。
美の真偽を決定するのは私の御言であり、それ以外の言説は夾雑物に過ぎない。
美学者の生涯に渡る全仕事すら私の呟き一つに劣る。
私の曇りなき眼は全てを見抜く。
はっきり宣言しよう、全ての生ける美少女はゴミである。
吐瀉物以下なのだ。
彼女たちは原材料に過ぎない。
デッサン以前の真っ白なキャンバス。
それが美少女だ。
彼女たちは私の製作行為をもってして完成へと至る。
真のアートになる。
アート! それにしても、なんて甘美なる響きだろう。
口蓋を少し開いて舌先で軽く歯を叩く。
ワインを賞味するような繊細さで空気を攪拌するのがコツである。
アート。アート……。
私にとってのアートとは、まさしく生きるための技術である。
アートがなければ、私の人生は瞬く間に色褪せるだろう。(ここで咳払い)
失礼、少し脱線してしまった。
私の繰り言など、真のアートに比すればゴミだ。
真のアートには神さえも平伏す。土下座する。全裸土下座してやってもいい。
真のアートとは、勿論……美少女の屍体である。
(しばし沈黙。溜息が漏れる音)
……この神々しいばかりの光を、如何に表現したものだろうか。
チャップリンの白黒映画のように洗練、未開民族のブリコラージュのように野蛮、ダリの絵画のように前衛……止めだ。
どんな修飾を用いてもかの光を表すにはほど遠い。
筆舌には尽くし難い、それが真のアートの深さである。(唐突な電話のコール)
ええ、ええ。申し訳ございません、今すぐに伺います。失礼致します。ガチャ。……残念ながら、今回の講義はここまでである。次回は真のアート製作について語らせて頂く。
期待して待つが良い。(ここで音声は終わる)
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