魔法少女・偽史

足摺飯店

白鷺01

世界はただあるがままに美しい——とある魔法少女が言っていた。

誰が言ったのか、白鷺は思い出せない。

そもそも、白鷺は自分以外の魔法少女と会ったことがない。

それなら自分の思念から生まれた言葉だったのか。

いや、そうではない筈だ。

ならば夢? 心象風景?

それはとても大切な言葉だった気がするのに、白鷺の実感とは乖離してしまっていて、とても結びつきそうにない。

言葉だけがふわふわと宙に浮いている。

解けてしまった紐帯が何と何を結びつけていたのか、今の白鷺には了解し難い。

魔法少女としてやるべきことをやるだけだ。そう思い直す。

普段考え事をするような性質でもないのに、顔面を撫でる夜の冷気が感傷的にさせたらしい。

校舎の屋上のフェンスを越えた縁に立ち、視界に広がるS町を覆う薄闇に眼を凝らす。

白鷺は見つけ出し、始末しなくてはならない。

この薄闇に隠れ潜む魔法少女の敵——ハジケリストを。

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