1.5 遙か

 児玉???


 児玉って、もしかして、あの司書の児玉さん?


 そういえば、タイトルに「遥か」っていう言葉の入った本が好きだって、いつか児玉さんは言っていた。「自分の名前入りの本って素敵じゃない?」と。


 それにあの筆跡……。図書室の掲示板で何度も見た。『おすすめの本』を紹介している字だ! ——と言うことは、僕は児玉さんが作業中に本棚に置き忘れたノートを、持って帰ってきてしまったんだろうか? でも、児玉さんが何年も前に書いた手紙を、児玉さんが持っているなんて変だ。

 

 頭が混乱したまま、手紙をベッドの脇に置くと、急いで図書室に戻って児玉さんにノートを返すべきか、こっそり本棚に戻すか悩んでいるうちに、僕は眠ってしまった。


 目を覚ますと、すっかり夕方になっていた。今から学校に行っても、児玉さんはもう図書室にいないだろう。


 膝の上に開いて置かれたままになっているノートに目が行く——僕は誘惑に耐えきれず、ノートの一ページを読み始めた。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る