151皿目 油揚げの煮つけ

 子供のころ大好きだったメニュー。今でも好き。


 厚揚げと油揚げの中間くらいの分厚いお揚げを三角に切り、醤油、砂糖で煮込む。酒とかも入っていたかもしれないが何分家事に興味がなかった時期の事なので記憶が曖昧だ。甘じょっぱかったことは覚えている。

 

 一人暮らしをするようになってから急に食べたくなり、母に作り方を聞いた。母は作り方こそ教えてくれたものの、とんでもない爆弾も落としていった。

「あの揚げは〇〇屋さんじゃなきゃ売ってないからそっちで作るの無理だと思う」

 〇〇屋さん、とは自分が高校を出るまで育った町にある超ローカルなお豆腐屋さんである。地元スーパーでは買えたらしいが、地元を離れてしまった今、あの揚げを手に入れる術は潰えた……と思っていたのだが。


 たまーに、見かけるのだ。スーパーで。何をって、例の分厚いお揚げ。製造元を見ると〇〇屋さんではないし、常時売っているかと言われるとそうでもないのだが運がいいと出会うことがある。そういう時は迷わず買いだ。母がやってくれたように三角に切って、油抜きし、醤油と砂糖でぐつぐつする。料理酒もちょっと入れてみた。

 これこれこの味!

 油揚げとは思えない分厚いおあげをかみしめると、じゅっとあふれる煮汁の滋味。シンプルだけどこたえられない、わが生涯最高の油揚げ料理。

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