第8話 帝都に向けて

 サグザーさんから話を聞いて、取り敢えずは一安心した僕はこれからの事を改めて考えていた。


 宿の支払いは向こう三ヶ月分を先払いしてあり、寝食の心配はまるで無い。


 こちらの世界に来て七日程経っているが、元の世界に戻る方法の手掛かりはまだ何も掴めていない。


「風香達は元気にしているかなぁ? 僕が居ない間に、あの暴走娘がみんなに迷惑をかけていなければいいんだけど、無理だよなぁ」


 そもそも風香を止める事なんて、僕でもほとんど上手く行かないんだからな。


 あの中で風香の思考の軌道修正が出来そうなのは、康太かそれとも蒼羅?


 うーん、どっちもどっちか。早く戻らないと下手したら街一つくらい壊滅してそうだな。怖い怖い。


「いやいや、ダメだ! こんな事ばかり考えていても仕方ない。少し体を動かしておこう」


 昨日は早く床に着いたために、まだ日も登らない内に目が覚めてしまいこんな事を考えてしまっている。


 部屋を抜け出して井戸で顔を洗ってサッパリした所で、師匠の教えを頭の中で反芻する。


 目を閉じて仮想の相手を想像しながら型を一からさらう。


 約一時間ほど掛けて全ての型をこなしてから目を開けると、やっと日が昇り始めたくらいで朝焼けが気持ちいい。


「ふう、しばらくやっていないかったから流石にキツイな。こんな所を見られたら師匠に怒られるよな。明日から毎日やるかね」


 今回の仮想敵は師匠である朝霧巌だ。一度たりとも勝った事は無く、何度挑んでも一撃すら当たらない。自分が知っている限りでは最強の生物だろう。あの化け物に比べたら赤熊なんてほんとうに可愛らしいものだと思っている。


「いつかアレに勝てるのかなぁ? いや無理だろ!」


 強さが理不尽過ぎて、つい苛ついてしまった。


「さてとそれじゃあスキルの検証でもしてみますかねと」


 レヴィにスキルについて質問した結果、スキルを強化する為にはひたすら使用するしか無いらしく、効果的な方法など存在しないらしい。


「僕が今持っているスキルで伸ばしておきたいものといえば、鑑定と光魔法だな。遠距離の高火力の銃はあるし、近接攻撃はまぁ素手でも何とかなるからな。鑑定は人だけで無く、物にも使えるから掘り出し物とかを探せるとサグザーさんが言っていたし、光魔法は守りと回復が充実しているから、この二つだな」


 早速鑑定を使用する。


木製の机


 うん。分かるよ?


木製の机


 見たら分かる。


木製の机


 役に立つの? 鑑定。


粗末な木製の机


 お? 少し変わったぞ。しかしこれ、もの凄く地味だな。部屋の中でやる事じゃないか。外にでて市場でも見て回って片っ端から鑑定していた方が気分も変わっていいかもな。


 鑑定は諦めて魔法の方を試してみるか。


 えーと使えば良いのか? 光魔法でできそうな事か、何だろう? 明るくする?


 光源。


 一つだけ小さな光球が手の上に現れる。


 これは、暗い道では役に立ちそうだけど、光で自分の居場所バレるよね? 使い所が難しいな。だけど修行には使いやすいかな?


 光源、光源、光源。


 何個も作り出していき、光球を維持しながら手のひらの上でグルグルと回してみる。


 これが思ったより難易度が高い。気を抜くとすぐに消えてしまい、地味に集中力を要求される。


 部屋中を埋め尽くすほどの光球を作り、光球の形を変えてみた。イメージは羽ばたく蝶、光の蝶は今は百匹を超えただろうか。これは光球が消費魔力量が少ないからなのか分からないが、まだまだ作れそうだ。


 使用出来なくなるまで光球で遊ぼうと思ったがこのままでは際限が無い。一旦中止するとドアがノックされてリナちゃんの顔がひょっこり出てきた。


「ハルト、そろそろ朝ご飯だよ!」

「もうそんな時間?」

「早く来ないと朝ご飯抜きにするからね!」

「はいはい、今行くから待ってて」


 そう言えばお腹が空いている。少し集中し過ぎたかも知れないな。


 今日のメニューはコバルトさん特製、山盛りソーセージに目玉焼き、焼きたてのパンにサラダ。


 ああ、なんて健康的なんだ!


 毎日一緒なんだけどね。いや? 美味しいよ。凄く美味しいんだけど流石に飽きてくるな。


「ハルト、悪いな。調子に乗って作り過ぎたんだ」

「いや、美味しいから良いですけど。これいつまで続きますか?」

「今日で終わりだ。やっと全部捌けたよ」


 テーブルの下で思わずガッツポーズをした。コバルトさんには悟られないように。


 そんな朝を過ごしているとレヴィが宿まで迎えに来てくれる。


「ハルト! 今日はどうするの?」

「えーと、そうだ! 欲しいものがあるから買い物に行きたい」

「買い物かぁ。何が欲しいのよ?」

「隠蔽の魔道具」

「あのねハルト?」

「何?」

「それならわざわざ私がここまで迎えに来なくても良かったじゃないの! ハルトがウチまで来たら良いのに何で昨日言わなかったの?」

「今思いついた」

「もうまったく。ここまで来るのに時間が掛かるんだから二度手間じゃない」

「ゴメンゴメン。でも必要だと思わない?」

「まあね」

「別にどうしても仕事をしなきゃいけない状態でもないし付き合ってよ」

「はいはい、どーせハルトはお金持ちだもんねー」


 うん、確かに赤熊を全部売った金額はもの凄く多かった。金貨五百五十枚に加えて毛皮と爪その他もろもろ合わせてなんと金貨千五百枚にもなってしまった。


 一千五百万円の収入が半日程で稼げてしまい、チマチマ仕事をする気にもならず、自己強化に励んでいる毎日が続いている。


「半分渡そうとしてもレヴィは受け取らないじゃないか。今からでもいいから貰ってよ」

「いやよ! アレはハルトが倒したんだからハルトの物よ。お情けで貰えないわ」


 別に一緒に行って倒したんだから受け取ってくれればいいのにレヴィは案外頑固だ。決して受け取ろうとはしない。


 だけど、昼食は素直に奢らせてくれるから、毎日一緒に食べている。他はいっさい駄目だけどね。せめて何か良さそうな装備とか買ってあげたいのにな。


 宿から歩きながら軽食を買い食いしてゆっくり歩いていると、デートしてるみたいだな。こうして過ごしているとレヴィの機嫌が凄く良くて僕も楽しく過ごせるからいい事尽くめだね。


 たけどやっぱり少しだけ刺激が欲しいのも事実だ。赤熊を倒した時のあの緊張感、高揚感は普段感じる事が出来ないので、あの感覚をまた味わいたい気もする。


 その事を話すとレヴィに呆れられる。


「レッドベアーにまた会いたいなんて事言うのはハルトくらいよ。他とは感性が違うのかしら?」

「そうかな?」

「私は絶対いやよ! まだ死にたくないもの」

「でも今は生きてるよ?」

「それは……偶々よ!」

「そんな事無いさ。あれ位なら何とでもなる」

「あの武器があるから?」

「いや? 無くても平気だよ。僕は結構強い」

「ほんとにー?」

「信じられない?」

「うん!」

「レヴィてさ」

「何よ?」

「何気に失礼だよね」


 歩きながら話していたけど、ふと気がつくとレヴィが居ない。


 後ろを見ると立ち止まっていて、結構離れてしまっている。


 何故か歩いて来ないので、少し戻り目の前に立つ。それでも下を向いたまま動こうとしない。


「レヴィ、どうしたの?」

「怒ってる」

「え?」

「ハルト、怒ってる」

「いや、全く」

「本当に?」

「怒る要素は何処にも無いよね?」

「だって、失礼だっていった!」

「アハハ、言った言った。でもさ強いかどうかなんてさ、一緒に過ごして居たらその内分かると思うから気にしてないよ」

「良かった……嫌われたかと思った」

「そんな訳ないよ。レヴィは考え過ぎだ」


 レヴィが再び笑顔になって二人で歩き出す。辿り着いた先はあいも変わらずサグザー商会。最近は宿とここを行き来しているだけのような気がするね。


「はい、いらっしゃ……なんだレベッカか」

「ご挨拶ね。叔父さん」

「ついさっき出て行って、もう帰ってきたのかい?」

「そんな言い方しなくてもいいでしょ! 今日はお客さんよ」


 二人はとても仲が良い。本当の親子なんじゃ無いかと思うほどだ。


「サグザーさん、こんにちは。今日は欲しい物があるんですけど」

「ほう、何がご所望ですかな。お客さん」

「嫌だなぁ、いつもの様にして下さいよ」

「ははは、悪い悪い」

「それでですね、実は隠蔽の魔道具があったら欲しいのですけどありますか?」

「隠蔽か……最後の一つだがこれでどうだい?」


 出てきたのは指輪が一つ。流石魔道具だけあって他の物とは作りが違う。石をはめる台座は複雑だが洗練されたデザインで、中央に大きな青い石がはめられている。凄く良いものだという事は分かる。


 その大きさを除けばだけど。


「大き過ぎません?」

「やっぱりそう思うかい?」

「手袋を付ける事も出来ないし、そもそもこれを付けて戦闘とか絶対無理じゃないですか!」


 そう指輪には巨大な石がはめられている。三十センチ程の綺麗な青い石。


「限度がありますって!」

「うん、分かってるけどね。面白そうだから仕入れてみた」

「これ、売れるんですか?」

「売れたらここにある訳ないだろう?もう三年は置いてあるよ。はぁ誰か買ってくれないかなぁ」チラッ


 チラッじゃねー!


「サグザーさん。買う訳ないですよ! 分かっているでしょう? 少なくとも街の外に出る仕事をしている人は絶対に手を出しませんよ?」

「分かってるよ、これはジョークグッズだから」


 全く、隙あらば妙な物を売りつけようとする変な癖さえ無ければサグザーさんは良い人なんだけど。


「それで、まともな魔道具はありますか?」

「それがねハルト君。今は本当に品切れなんだよ。あれしか無い」


 マジか。だけど、あんな物を身につけて街を歩くなんてある意味拷問だしなぁ。


「そうだ! ハルト君。一つ仕事を頼みたい」

「へ? なんですか?」

「実は懇意にしている魔道具技師と連絡が取れなくてね。そろそろ他の魔道具も品薄になってきている」


 魔道具技師か。


「そこでだ、ハルト君にその技師の所へ直接出向いて納品予定の品物を受け取ってきてもらいたい」

「お使いですね。良いですよ」

「コラ! ハルト。報酬を聞く前に仕事を受けちゃダメよ、ただ働きになるわよ!」


 えー。サグザーさんにはお世話になっているし、ただで受けようとおもってたのに。


「ハルト君。報酬は納品される品物から何でも一つだけ君にあげよう。どうだい?」


 なんでも……だと?


 僕はすぐに跪いて頭を下げる。


「仰せのままに!」

「ハルト……」


 レヴィがドン引きしてる。


 だって魔道具だよ? 前から一つは欲しかったんだ。


 青い狸の秘密道具みたいなやつが欲しい!


「ははは、じゃあ契約成立だね。早速サインをして貰えるかい?」

「はい!」


 契約書には魔法が掛かっていて、誰にでも簡単に使える物で契約破棄には結構なペナルティがある。


「場所は首都ディルティアだ。なるべく早く行ってきて欲しい、頼むよ」


 え? 首都? それって確か片道一ヶ月は掛かるよね? 往復で二ヶ月も掛かったら、先払いの宿代が無駄になるし、それだけ時間をかけて魔道具一つじゃ割に合わないじゃないか!


「ハルトこれで分かった? 依頼は内容を確認してから受ける事。良い様に使われるだけよ」

「はい……」


 一度受けたものは理由無しに破棄出来ない。諦めて準備に取り掛かるしかないか。


 でも流石に一人で長い旅に出るのは不安がある。レヴィに色々聞いてしっかり準備しないとな。どれくらいの物資が必要かな?


 野宿とかした事無いけどテント見たいな物とかあるのか?


 食事は? ヤバイ。分からない事だらけじゃ無いか!


「レヴィ! お願いがある」

「はいはい、私もついて行ってあげるから安心しなさい。こう見えても旅には慣れているからね」

「え!?」

「えっ? なによ、ついて行ったらいけないの?」

「いや、そうじゃなくてさ。ついて来てくれるんだ?」

「ハルト一人じゃ危なっかしいからね。お姉さんに任せておきなさい!」

「一つしか違わないだろ!」

「ふふん、一年の経験は大きいのよ! 新人ギルド員さん」


 くそぅ、勝ち誇ったレヴィの顔がそこはかとなくムカつくわ。


 殴りたいこの笑顔。


 いやいや、ありがたい事だね。レヴィは契約に参加してないから正にただ働きだし。僕から何か別の報酬を用意してあげるべきかな?


「レヴィ、二ヶ月も掛かるんだから報酬で欲しいものはある? 何でもするよ?」

「な、な、な、何でも!?」


 何故そこで顔を真っ赤にする? 何をさせる気だ?


「分かった。考えておくわねー」


 何でもは言い過ぎたか?


 まぁレヴィなら変なことは起きないだろう。お金ならそこそこ蓄えもあるし。最悪全財産を渡せって言われてもレヴィなら構わないからどうでもいいか。


「ハルト! すぐに準備に入るよ! ついて来て」

「はーい、よろしくー」


 帝都なら賢者にも会えるかもしれないしな。魔法の事を質問して情報を貰う事も出来る。


 元の世界に戻る方法も帝都なら何か手掛かりが見つかるかもしれないから、いいかもしれないな。多くの人が集まる場所には情報も多い。期待できるかな?


「それでハルトは旅に必要な物は何を持ってるの?」

「逆に聞こう、何が必要なんだ?」

「……………」

「レヴィ?」


 黙り込んだレヴィは大きなため息を吐く。


「聞いた私が馬鹿だったわ……」


 すっかり元気が無くなったレヴィに連れて行かれたのは様々なお店。一件や二件では済まない。


 旅に必要な着替え、野営に必要なテントや食料、火を起こす道具に飲み水、万が一のための薬草類や回復ポーション、それに帝都までの地図、その他細々したものを大量購入する羽目になった。


「ちょっとレヴィまだ買うの?」

「これでも足りないくらいなのよ?準備をしっかりしておかないと、たどり着く事すらできないからね?」

「いくらなんでも買い過ぎじゃない?」

「そんな事無いわ」

「でもさ、これ本当に必要なの?ただのアクセサリーにしか見えないけど」

「ほ、ほ、ほ、本当に必要よ。絶対にいるの!」


 あー、まぁいいか。


 これ、レヴィが欲しいだけだな。買って欲しかったらいつでも言えばよかったのにね。


「これいくらするの?」


 お店の店員さんに聞いてみた。


「お客様こちらは大変貴重な魔法石でして、それをアクセサリーとしても身につけるようにデザインされたもので、帝都のデザイナーが作った逸品でお値段は金貨五十枚で提供させて頂いておりますよ」

「高っ!」

「いえいえ、このお値段ならとてもお安いですよ」

「五十枚は五十枚だよ」

「五十枚の価値は充分にありますよ。魔法石には魔力を溜めておく事ができますから」

「ハルト」


 やめろ、そんな目で僕を見るなよ。女の子の上目遣いってどうやっても勝てないんだよなー


「分かったよ、でもこれだけだからね!」

「ハルト! ありがとう」


 レヴィが僕に抱きついてきて腕に柔らかい感触が伝わってくる。外から見るとあまり分からないけど実は隠れ巨乳なの?


 え? もう終わり? もう少し楽しみたかったなー


「それにしてもさ。そのマジックバッグ。デタラメな容量をしてるわね」

「そうなの?」

「普通ならこんなに入らないから!」

「まだ余裕あるみたいだよ?」

「だからおかしいのよ!」

「いっぱい入るなら便利じゃない? 気にしない方がいいと思うよ? なんなら一つレヴィにあげようか?」

「は?」

「まだいくつかあるから、一つあげる」


 小型の肩掛けになっているバッグを一つ取り出してレヴィに渡す。


「なんでこんなに持っているのよ!」

「だから貰ったんだって」


 その時、後ろから知らない声が掛かる。


「じゃあ俺にも一つくれよ、小僧」


 その声に振り向いてみると五人の男達がニヤニヤした顔で僕たちを見ている。


「誰ですか? 会った事ありましたっけ?」

「いーや?」

「お前なんかとは会った事無いぜ?」

「誰だか知らない人に渡す筈ないでしょ」


 付き合ってられないよ。


「おいおい、逃すワケ無いだろう?」


 二人が僕達の前に回り込み、すっかり囲まれてしまう。


「通して貰えますかね?」

「いいぜ、それを置いていけば通してやるよ!」


 はぁ。


 五人居れば何とかなるとでも思ってるのかな?


「あのー?」

「なんだ?」

「バッグを置いていく気になったか?」

「うひゃひゃひゃ」

「怪我をしたくなかったら、大人しくバッグとあり金を置いていくんだな!」


 何だ、ただの物乞いか。確かこういう時はと。


 ポケットから数枚の銅貨を取り出して地面に放り投げる。


 チャリーン!


 銅貨が落ちる高い音が鳴る。


「ほら、それで足りるだろ? さっさと行きなさい」


 うん完璧! 全く知らない人に施しが出来る様になるとは僕も成長したなぁ。昔はこんな状況だったらすぐに手が出てたからなぁ。大人の対応を師匠から教わっておいて良かった良かった。


「テメェ……」

「舐めやがって!」


 あれ? 何でだよ?


 五人共、武器を取り出したよ?


「ハルト、何であんな煽り方するのよ!」

「え!? あれは普通の大人の対応って教わったんだけど違うの?」

「ただ喧嘩を売ってるだけよ!」

「おかしいな? 師匠の時はみんな素直に居なくなったのになぁ」

「ハルトの師匠に会ってみたい気分ね」

「そう? 会えたら紹介するよ。僕の親みたいな人だからね。レヴィの事はちゃんと紹介しておきたいな」

「こんな時に何を言っているのよ……」


 なんで赤くなるんだ?


 いや、それよりもあっちを何とかしないとな。


「ふざけやがって!」

「こんな所でイチャついてんじゃねぇ!」

「くそう。俺だって……」


 なんかさっきより殺気が強くなった。


 いやいや、洒落にならん。


「おい小僧! いいか。バッグとその女を置いてすぐに消えろ!」


 レヴィになにをする気だ?


「冗談でしょ?」

「本気だよ! それともこの人数相手に勝てるつもりでいるのか?」


 この人数って、たったの五人だよね? 実はまだまだいっぱい隠れているとかないよな?


 周りを探ってみても、こいつらの仲間らしき人は何処にも居ない。


「えーと、五人だけですよね?」

「そうだが?」

「ボコボコにしてやるよ、色男!」

「え、そんな……褒めてくれてありがとう」


 面と向かってそんな事言われると少し照れるな。男に言われても嬉しくは無いけどね。


 しかし、なんであいつらあんな顔をしてるんだろうか? 赤を通り越してどす黒い色になってるぞ?


 今にも襲いかかって来そうな勢いだな。


「レヴィ……自分の身だけ守れる?」

「ハルト……」

「隙を見て逃げていいからね」

「分かった、衛兵を呼んでくるから」


 衛兵? ああそうか。捕まえて貰う為か。一応ここでも犯罪になるんだね。


 じゃあさっさと無力化しておきますか。


 犯罪者に手加減は無用だ!

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