第12話 隣国のコンダー。
十歳になった。そろそろ社交も考える歳になったからとセバスがいろいろ用事を入れてくる。
先日は隣国の王太子がみえると言うのであたしも晩餐会に出席させられた。
姉様達はそろそろ着飾ると大人とそう変わらなくみえるようになったけどあたしはまだまだ子供っぽいしそんな席に出てもふにゃぁと思ったけど、どうやら向こうの希望だと言うことで。
王太子は十五歳になって成人の儀を迎えそろそろ伴侶をお探しになっていると言うことで、歳の近いあたし達は候補になってるっぽい?
まあ隣国のコンダーは小国だけどうちよりは裕福だ。家格は落ちるけどそれでもそこはそれ、上のアリステリア姉様はもう十四だしちょうど釣り合うんじゃない? とは思うけど。
レイア姉様は王妃さまの娘でアリステリア姉様は第二夫人の娘。そういう意味でもレイア姉様の方はもっといい縁談待ちだろうと思う。
あたしは……。ないない。あたしは無い。
平民出身なお母様には申し訳ないけどやっぱりそういうのにこだわる人は多いから。
「素敵でしたよねー。アルル・コンド様。あの方なら姫様もお幸せになれそうな」
「はう! ばかばかメーベラのばか。あたしはそんなの無いって。まあかっこいい人だったけど……」
「ですよメーベラさま。姫様はあんな小国には勿体ないです」
「はうクロム。もったいないっていうのは違うかも……」
「いえいえ姫様はご自身を過小評価しすぎです。この透き通るような肌。ふわふわな金髪。サファイヤブルーにクリソベリルキャッツアイ。宝石のようなオッドアイ。もう全てが神の芸術の域にありますわ」
はうあう。もうクロムったら……。
「しょうがないですよ姫様。クロムは姫様の事女神さまのようだと思ってますからね」
「女神のよう、ではなくて女神さまなのですアリシア様は」
そう言ってあたしの腕に抱きつくクロム。
その黒い髪からちょこんと見えるツノは大きめなリボンで隠してる。
黒いゴスロリ風なエプロンドレスに喉元には黒いチョーカー。
この二年の間にすっかり垢抜けて、今ではあたしの身の回りを全てこなすまでになった。
それに。
この子の色はずっと気持ちのいい穏やかな色のままだ。
辛い過去があった筈なのに。人を恨んでもおかしくないのに。
そんな色はカケラも見せなかった。
純粋で、綺麗で。
クロムは、そんな素敵な心の持ち主だったのだ。
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