第11話 不甲斐なくて、ごめんね。
「命に責任って……」
「魔獣や魔物と一緒です。魔族であっても人の所有物であれば他者から害されることはありません。そのためには貴女の持ち物だという印をつけなければなりません」
い、や、だけど……。でも……。
「こちらの魔具、奴隷用のチョーカーをあの少女におはめください。これはそれをはめた者の魔力に反応し、所有者に対して反抗する事も所有者を傷つける事も防ぎます。常に貴女のおそばに置く事で他者からあの少女を守る事にも繋がります」
はう。
うん。言ってることはごもっともだ。あたしには反論する事もできないよ。でも。
「あの子をここに連れてきてください。彼女の話を聞いてみたいです……」
「ええ。わかりました。ではそのままお待ち下さい」
セバスはそう言うとするっと部屋を出て行った。
黙って隣で立っていたメーベラがあたしの頭を優しく抱いてくれた。
あたしはメーベラの胸でしばらくの間泣いて。セバスが戻ってくる頃合いにはなんとか泣き止むことができた。
目の前に立つ黒髪の少女。
あたしとたぶんそんなに歳は違わないと思うけど、それでも痩せ細って小さく見える。
頭に生えた二本の黒い小さなツノが、彼女を魔族であると主張して。
風呂上りで麻のワンピースに身を包み綺麗にはなっているはずだけれど肌の色もふつうの人とは少し違って見えた。
たぶん、血液の色が違うのかもしれないな、そう思う。
お尻には獣のような尻尾がふさふさと垂れ下がり、ゆらゆら揺れていた。
まだ頭が濡れているからだろうか、ハンドタオルを手に持ってあたしの前に立つその少女はこれから一体どんな運命が待っているのか不安で仕方ない、そんな表情をしていた。
「あの……。アリガトございます。姫さま」
そう辿々しく話すその声は、普通の人間の女の子となんら変わりがない可愛らしい声だった。
「ごめんなさいね。あたしにはあれしかできなくて……」
そう声をかける。不甲斐ない、そう思って。
「いえ、姫さま、助けてくれました。あったかいお風呂もご飯も頂きました。あたいはほんと、感謝してます、です」
「でも……」
「もう死ぬんだ、そう思ってまシタ。あたいの両親も仲間も、皆コロサレタ……。でも、姫さまだけ、チガウ。姫さまだけ、あたいを人間扱いしてくれた……」
あたしは思わずその子に抱きついて。
もう我慢ができなくて。
「ごめんね。ごめんね。怖かったよね。ごめんね。でも、自由にしてあげる事もできないの。それが不甲斐なくて」
そう泣きながら。
「はう。びっくり。デモ。嬉しい。あたい、いいよ。自由、要らない。ずっと姫さまのそばにいたい……」
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