第13話 薔薇園で。
歓迎の晩餐会の後アルル殿下の滞在中は何度か親睦のお茶会が開催された。
当然出席者はあたし達姉妹と二人のお兄様も一緒で。
他の貴族を招いたお茶会も開催されたっぽいけどそれにはあたしは出席しなかった。
っていうのも出席を求められなかった、っていうだけだけどね? お姉様二人はちゃんと出席したのだからあたしだけがメンバーから外されたのは間違いない。
まああんまり人が大勢居る場所には行きたくはない。そんな風に思ってる事をお父様やお母様達もわかってくれているのかもしれないな。そうも思った。
今日もそんなお茶会が迎賓館で開催される予定とあってあたしを迎えに来たセバスの馬車に乗って会場に向かった。
今日のドレスはいつもの淡い色のドレスと違って真っ赤な色合いの派手目なもの。
あたしは普段自分の着るものに文句を言ったことが無い。
こんな暮らしができてこんな綺麗な服が着られるんだもの。それだけでもありがたいと思ってるし実は基本あんまりドレスは好きじゃない。
だって、窮屈だもの。
まあそんな事を言ってもしょうがないので用意されたものをただ着てるだけって感じ。
どうせあたしは壁の花だしそれ以上のことは望んでないしね。
迎賓館は王宮の隣にあるんだけどなんだか馬車の行き先が違うような気がするよ?
「ねえセバス。迎賓館に行くのではないのですか?」
馬車が迎賓館を通り過ぎたところであたしはそう聞いてみた。
「まだお時間がありますから、先に王宮に入ります。
へ?
「薔薇園で待つの?」
「はい。私はお姉様方の準備を待ってご案内しますから、先に薔薇園でお待ちくださいませ」
はう。姉様達も薔薇園に集まるというのなら先に待っててもいいかもだけど、なんでわざわざ薔薇園に?
なんだか納得いかなかったけどしょうがない。言われるまま薔薇園に入ったあたしとメーベラ。(さすがにクロムは今日はお留守番だ)
薔薇の香りが充満する温室の、その中程にある白いガーデンチェアに腰掛けた。
「うーん。いい香り」
そう思いっきりノビをして肺いっぱいに薔薇の香りを吸い込んで。
ああここって子供の頃に来たきりだったかなぁ。
そんな事を考える。
この薔薇園はこの国の先先代の王妃さまが大事にしてたって聞いたことがある。
おおおばあさま、かぁ。
どんな人だったんだろうな。
肖像画はあるけどこの世界には写真が無い。
でも、こんな素敵な薔薇園を大事になさってた方だもの。きっと素敵な方だったんだろうな。
そんな事を想ってた時だった。
がさがさっと奥から人が現れた。
え? っと思ってそちらを見ると、まさかのアルル殿下?
「ああアリシア姫。いらっしゃいましたか。ここは本当に素敵な場所ですね」
そうにこやかに声をかけられた。
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