第8話 レイア姫。

 馬車まで帰ったところでセバスとメーベラ二人からいっぱいお小言を言われ、しょんぼりふにゃぁなあたしだったけど。


 それでもお姉様のお茶会はやっぱり楽しみで。気を取り直して。


 そんなに時間がかからないうちに迎賓館に到着。


 エントランスの馬車回ばしゃまわし、ホテルの車寄せみたいなものかな? に、止まると先に降りたセバスが手を差し伸べてくれた。


 ああ、ちゃんとお姫様扱いしてくれるんだな。


 そんなことを思いながら手を伸ばす。


 ゆったりとベルベットのカーペットに足を下ろし、なるべく優雅に見えるよう気をつけて歩いた。




 ■■■■■■■



 王宮の敷地に隣接するように建てられたその迎賓館。


 各国の施設を出迎える時もそして国内の社交の場としても使われるその建物は、紅い煉瓦が基調の五階建て、歴史を感じる佇まいを醸し出していた。


 細工を凝らした飾り窓や豪奢な玄関。シャンデリアは何重にも灯りがとられ、壁の彫刻も梁や扉の意匠にも工夫が見て取れる。


 もともと歴史はあっても財政的にはそう裕福ではないこの国ではこう言った建築に携わる人々、いわゆる宮大工も伝統芸能の範疇でありその技術の継承のためにもと各国に出稼ぎに出ている始末。今では彼らはエレクレスクの宮大工としてこの世界各地に名を馳せている。


 そんな迎賓館で開かれる本日の社交の催しは第二王女レイア姫主催のお茶会だった。



 紅いベルベットの上をしなりしなりと進む第三王女の姿を見つけたレイア姫はチョコチョコと小走りに近づくと第三王女に抱きついた。


「ああアリシア。会いたかったわ。今日は来てくれてありがとうね。美味しいお菓子をいっぱいご用意してあるから一緒にいただきましょうね」


「はしたないですよ姫様ひめさま、ほかのお嬢様方も見ていらっしゃいますよ」


「もう、セバスったら堅苦しいんだから。いいじゃないアリシアはわたくしの妹なのですもの。ねえアリシア」


 そう言って第三王女に微笑むレイアに手を引かれ、顔を真っ赤にした第三王女は俯いたまま彼女の後についていくのだった。



 扇の間。いくつも有る広間のうちでもこぢんまりとしたその部屋が今回のお茶会の会場となっていた。


 第三王女アリシアの手を引きながらその部屋に入るレイアに視線が集まる。


「皆さま、妹のアリシアが到着しましたわ。仲良くしてくださいね」


 そうにっこりと微笑み見回すレイア。


「アリシアも。今日は歳の近い方ばかりですから。楽しみましょうね」


 そう言って自分と、そしてその隣に用意したアリシアの席まで案内して腰掛けた。

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