第5話 聖王国エレクレスク。
あたしがあたしになって三年が過ぎた。
あたしも八歳になって随分と周りのことがわかってきたかな。
まずここは、エレクレスク聖王国の首都エレクレア。
窓から見た長閑な風景からもわかるように思いっきり田舎だ。
歴史もあり格式高い王国ではあるしどうやら王様のお父様は周囲の国から尊敬されてるらしいけどそれでもね。貧乏なのは間違いないと思う。
お城の周りの城下町を見てもわかるよね。
どう見たって貧乏国家だって。
この世界は文化的にこんなものなのかな?
そう思った時期があたしにもありました。
でも。
お隣のドトール王国の首都バルバロッサには高層建築物が立ち並び、街には綺麗な商品が並んでるって話を侍女さん達に聞いたらね。
その格差に唖然としちゃうしかないよ?
いつかはバルバロッサでお茶して買い物してっていうのが夢だって言ってたっけその侍女さん。
うちでちゃんとお給料出てるのかなぁとちょっとだけ心配になったのは内緒だ。
そういえば。
あたしの周りにいるのは普段はメーベラとマシマー先生だけだ。
兄二人姉二人の第三王女のあたし。貧乏国家でも一応王女様候の暮らしはできてる。
ただ、あたしのお母様は身分の低い側室だったから、上の兄様姉様たちとはほとんど交流が無くて。
この間七つの誕生日が過ぎて初めて姉様たちのお茶会に参加させて貰えるようになったくらい?
たぶんお行儀のしつけも兼ねてなんだろう。その時ばっかりはメーベラもいろいろ口やかましい。
お父様にはおくさまが全部で三人。第一夫人の王妃様、第二夫人、そして側室のあたしのお母様だ。
お兄様お姉様のどなたが誰のお子様かとか詳しい情報はあたしの耳には入ってこないけど、どうやら王妃様のお子が三人第二夫人に一人うちのお母様にあたしが一人。そんな感じらしい。
お母様は後宮に入っててなかなかお外に出ないしあたしはこの離宮で育てられたから、幼い頃はたぶん寂しくてしょうがなかったんだろうな。随分とメーベラを困らせたのかも。その分、あたしが甘えられるのもメーベラだけだったっていう事なんだけどね。
お部屋のお掃除とか片付けとかそう言ったお仕事は入れ替わりたち替わりほかの侍女さんが出入りしてたけど、ほんといつもそばにいてくれたメーベラはあたしのおかあさんみたいなものだ。
そして。
たまにやってきては皆にいろいろ指示を出して帰って行く侍従長のセバス。
ロマンスグレーの紳士なんだけどなんだかちょっと怖い。物腰は柔らかいんだけど目つきが鋭いの。
彼に「ダメです」って言われたらあたしなんかシュンってなっちゃうよ。
マシマー先生は魔法学から社会学まで幅広い見識を持った先生で、あたしは結構優秀な生徒でいられたと思う。
まあね、身体は子供だけど気持ちはハタチだもん。そこはまあそれなりに、ね。
国の成り立ちから周囲の国家のこと。そして、魔族討伐戦争の事……。
うちの国が貧乏なのもそんな戦争のせいで慢性的な働き手不足予算不足ほんと何もかもが足りないからだと思う。
早く戦争が終わればいいな。
この頃はまだそんなふうに捉えていただけだった。
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