第43話 だいすきだいすき美味しいな(※収益化記念配信……だよね?)

 ほわほわほわんレビレビ~(回想)

 身バレの後、伽夜ちゃんは店長に脅しをかけてた。


『まって! 言わないから別に言わないから! 身バレなんてしないからぁ!』

『わがんねぇよぉ、何言ってんのかさっぱりわがんねぇ。無償で切り抜き作れよぉ。ア〇ビ使えないなら死ねよォ』


『もぉ厄日だよこれ! なんで一日に二回も少女に命脅かされてんだよぉ⁉』

『――――なにそれ? ちょっと詳しく』


 馬乗り瞳孔ガンギマリの妹は圧を抑えて、店長から話を聞いた。


 私が泣きながら店長を締め落とそうとした話を。

 伽夜ちゃんの目が輝いた。

 回想終わり!


 ねぇ、伽夜ちゃん一個だけ聞きたい。

 やらされることは確定だから、もう何も言うまいだけどさ……【宵月レヴィア】って清楚ティブを目指すんじゃないの?


 配信前にそう聞いたら――――低めの声で『はぁ?』って言われた。


 宵月レヴィア清楚計画は挫折した。

 そして新たな方向性を目指す。

  

「という訳で眷属みんなぁ―――――ずーっとずーっと一緒にイヨ?」


[ コメント ]

・えっ?

・え??

・ナンデェ?

・どうしてこうなった⁉


「んぅ? あれぇ、なんでみんなザワザワしてるの? 妾と……レヴィアと一緒が――嫌なの?」


 声が一段、落ちる。


 シャリンッ!

 包丁と研ぎ石の合奏が鳴る。

 

「これ良い音だよねぇ。包丁研ぐ音。きもちいいねぇ?」


 シャインッ!

 

[ コメント ]

・ロリボイス(恐)ふたたび!

・包丁研ぐASMRが未だかつてあっただろうか

・いや、準備良いな⁉

・ばいばい

・逃げろぉ、病みロリだぁ‼


「ぇ」


 温かい気持ちでいっぱいだった胸が冷える。 

 すると、コメント欄に『さようなら』とか、どこかに行っちゃうようなコメントが流れる。


[ コメント ]

・他の子のところに行きます

・リエルの配信見に行こう 


「なんで……そんなこと言うのぉ?」 

   

 悲しくて、寂しくて、声が震える。

 お仕事だからって離れていくパパを引き留めるように、私はイヤイヤする。


「やだぁ、いかないで眷属パパァ。やだよ……レヴィアから離れないで?」


 行かないでほしい。

 ここにいてほしい。


 眷属パパを引き留めたくて――――ふにっと唇の形が柔らかく変わる。


「んっ」

 目を閉じて。


「んーー」

 マイクの向こうに、キスを送り込む。


 パッと唇を離す。

 はぁはぁと、息できなかった分を荒く呼吸する。 


「もどってきて? 眷属パパ、レヴィアとずっと一緒にいて?」


[ コメント ] 

・ただいま

・他の所なんか行ってらんねぇ

・戻ってきました

・娘のちゅーに勝るものなんかあるくぅあ‼


「あっ、パパ! パパ、パパ、パパ! おかえりぃ~いひひっ♡ ……すきっ」


 レヴィアがにぱっと笑う。

 なんか同接も増えたぁ……やったぁ。

 あぁーーーーよかったぁ。

 ロープを手に持つ。


        「  もう逃がさないからね?  」


 

 逃げないように、しっかりと。


 ギチチチッ! って締め上げる音が、マイクに入る。


[ マイク ]

・⁉⁉⁉

・音えぐっ⁉

・絞められてぅうううう⁉


「だいすき。だいすきだいすきだいすき離さない……ねぇ聞こえる? 

 レヴィアの音」


 とくんとくんとくん、と鼓動に合わせて口ずさむ。

 ダミーヘッドマイクを強く強く抱きしめて、胸に押し付ける。


「ぎゅー♡」


 腕に力を込めて、いっぱいいっぱい眷属の首をぎゅうぎゅうしてあげた。


 でもまだ足りない。

 もっと眷属みんなと一緒になりたい。


 だから切った。

 くちゅくちゅとお肉を手に取って、すっと包丁の刃を通す。


 そうしてあむあむと。

 もぐもぐと。


 好きって言いながら。大好きって言いながら。ゴメンナサイッテイイナガラ。


 お肉を咀嚼した。


「美味しいっ♡」

 これで―――――――――――ずーっとずーっと一ついっしょダネ?

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