第41話 ガワが無くてごめんなさい(こっそり受信する重大発表)
「あれ? なんでレヴィアたんの『パパ切り抜き』流しっぱにしてるの?」
やめて。
「あれ? なんで叔父さん土下座してるの?」
やめて。
「あれ? なんで姫宮さん、中二ポーズでレヴィアたんの挨拶……」
「ぃやぁあああああああああああああああああああああぁああああああああああああーーーーーーーーー!!!!!!」
淡々とした質問(状況説明)が、私のSAN値を根こそぎ削り取った。
私はバックヤードから飛び出した。すると。
「ッ⁉ 紗夜ぴ⁉」
レジの内側で待機していた日和ちゃんと鉢合う。
バレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレた(高速で煙草の陳列台の補充)
「紗夜ぴぃ‼」
三波くんに見られた三波くんに見られた三波くんに見られた三波くんに見られた三波くんに見られた(スタイリッシュにレジカウンターを飛び越える)
「さ、紗夜⤵ぴぃ⤴⁉」
店長の土下座高らかにこんレビ店長の土下座高らかにこんレビ店長の土下座高らかに今レビ(蛇行ダッシュで店内の商品棚を整理していく)
「さ、紗夜ぴよぉ⁉」
のろのろと開くコンビニの自動扉の前で――――タンッと大地を蹴る。
「こんレビぃやぁああああああああああああああーーーーーーーーー‼‼‼」
空中で一転二転と回りながら、私はわずかな扉の隙間を潜り抜けた。
「ぴ、ぴよ紗夜ぁああああああああああああああーーーーーーーーー‼‼‼」
ひよこギャルの鳴き声を背に受けて、私はコンビニから飛び出していった。
走りながら、思い描く。三波くんが見たであろう光景。
薄暗いバックヤード。
無限パパ呼びするデスクPC。
ブルーライトに照らされるは、地にひれ伏す始祖の
そして私は片目を手の平で抑え、胸を張り、高らかに鬨の声を上げぅっ、ふぐっ、ぇうううう!
「なんで……なんでぇええ」
泣きじゃくりながら走る。
体が熱い。走ってるから? 恥ずかしいから?
そんなのわかんない。
でも――――もう今までみたいにいかないことだけはわかってい
「ねぇ、姫宮さん。さっきの中二ポーズ挨拶だけどさぁ」
「ほわぁああああああああああああああ⁉⁉」
全力疾走からの横っ飛びで、私は道端のブロック塀に激突。
ずるる、とずり落ちる。
人影を見上げると、三波くんの不思議そうな視線とぶつかった。
「んなっ! なんで音もなく併走してるのよぉ⁉」
「いや、いきなりダブルアクセル決めて泣きながら飛び出してったら気になるよ」
うん、私もまさかダブルアクセルできるとは思わなかった。そして自分がそんなことするとも思ってなかった。
自分の奇行にさめざめと目を覆っていたら、三波くんがしゃがみ込んだ。
「姫宮さん。さっきのポーズとレヴィアたんの挨拶だけどさ」
びくっと肩がすくむ。
うつむいて、顔を隠して、ただ一つを思う。
―――――ごめんなさい。
こんな私でごめんなさい。
あなたの好きな
「 むっっちゃ上手かったね、モノマネ‼ 」
……は?
三波くんは控えめに腕を振って、興奮を露にする。
「レヴィアたんの、中身とキャラ設定のちぐはぐ感がすごい出てたよー!
それにポーズがさ、良い! 令和の厨二とは思えない
何気ない一言で、堕天使師匠が傷ついていく。
私の魂もガワも、等しく平等に。
「さすが姫宮さん、古参の眷属! とても善きクオリティのオタ芸でした……っ!」
「三波くん」
「ん? どした?」
涙を拭って、立ち上がって、彼の肩に手を置いて――――笑顔。
「ばーーーーーか!」
ありがとね、は胸の中に取って置いた。
ピコンとスマホが震える。
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