第4話 初配信終了!(次回のコラボはヤバい相手?)

「で、では軽く自己紹介をす、するぞ? 

まずは妾の種族であるが一応『天使』である。

しかし、そのまぁ、なんだ……か、かか可愛すぎて神に堕天させられたといぅ……やめろやめろやめろ! かわいいを連呼するな神に同意するなぁ!」


 すごい勢いで神の賛同者が増えてる……あ~~~~頬がにやけるぅううううはずかしうれしぃぃいいあああああ!

 赤くなった頬をつねって、話題を軌道修正。

 カンペに書かれた設定を横見しながら、自分の言葉で言い直していく。


「そんな訳で堕天使になった妾だがな? 

天界から落とされた時に……一軒家を潰してしまってな? 

それで今はその家、宵月家に居候しているのじゃ」


[ コメント ] 

・堕天が思ったより物理!

・踏み潰してしまったか……

・メガトン堕天使


「メガトン言うなぁ! そんなおっきくない! 重くもなぁい!」


[ コメント ]

・体重何キロ?

・一軒家の破壊規模からエネルギー規模特定して、堕天速度が分かればワンチャン計算できる?E=mc2の法則。人ひとり分の質量で被害が一つの家屋限定だから堕天速度はそんなでもなさげだけど(以下略)

 

「まってまってまって⁉ すごいインテリいた今⁉ 

すごい論理的に妾の体重計算しようとしてた⁉ ていうか堕天速度ってなに⁉」

 

 不意に流れてきた長文コメントに思わずギョッとする。 

 川から桃が流れてきたおばあさんの気持ちが分かってしまった。

 そこから私の体重を特定しようとするコメントが多くなったので、さっさと公式見解(体重:20グラム)を与えて鎮火。

 その流れで身長(159センチ)と年齢(2000歳)をさらりと公開した。


[ コメント ]

・メガトン級からフェザー級に……

・ててんてん天使の羽根(20グラム)

・キ〇ィだって900グラムはあるぞ……


「体重のことはもう良いよぉ! とにかく家潰したの! だから弁償するためにバイトしてたのぉ!」


[ コメント ]   

・とにかく家潰したww

・この天使意外とバイオレンス!

・バイトはどんなバイトされてたんですか?


「コンビニである」


 視線だけで伽夜ちゃんと会話。

 妹マネージャーから許可貰ってから、コメントの質問にウキウキと答えた。


「こう見えても妾、棚整理めちゃ得意なのだぞー。お客のおじさんにめっちゃ褒められてなぁー。でもレジ打ちは未だに苦手で……ほんと途中から水道代の紙とか出すのやめてほしぃ……妾のスマイルは商標登録されてないんじゃよぉお……」 


 ――ハッ、しまった!

 自慢話(誰も聞いてくれないから)しようとしてたのに、いつの間にか愚痴になってしまった! 今のはあんまり堕天使らしくなかった、どうしよう!

 私は慌てて訂正しようと思ったら……


[ コメント ]

・公共料金の支払いは最初にやろうね

・わかるマーン

・スマイルで金取りたいマジで


 あ、れ? 

 意外と反応が良かった。むしろ共感してくれるコメントの方が多かった。  

 それを見て私は……おそるおそると、アノ事について触れてみることにした。


「あの、眷属達に聞きたいことがあるのだが――――?」


[ コメント ]

・は? 

・え、コンビニだよね?

・きしょいきしょいきしょいきしょい

・ヤベェ職場じゃねぇかww

・すまん、吐いてくる

・パパって呼んで♡(このコメントは通報されました)


 自分の顔が一気に晴れやかになるのを感じた。


「だよねぇ⁉ やっぱり変だよねぇ⁉ いや私だって変だなーって思ってたの! 『アットホームな職場ってこういう意味だっけ?』って首傾げたもん! ちがうよね、バイトにパパ呼び強制はアットホームじゃないよね⁉」


 その時、私の中で何かタガが外れた。

 どうしよう、止まらない。ずっと我慢してたことが溢れてくる。

 伽夜ちゃんが後ろから小突いてるけど、一人称『私』に戻っちゃってるけど、構わず話し続ける。

 みんな、そんな私の愚痴に共感して付き合ってくれるから、ブレーキも利かなかった。


「タバコの銘柄とか言われても分かんないよぉ~~! 

棚の番号で注文してよぉ~~! 『マイセン一ミリ』ってなんだよぉーーーー‼」


[ コメント ]

・あれ、酔ってる?

・泣き上戸カワイイ

・脳内でアルコール分泌できる天使

・良い大人のみんな、タバコは棚番号で注文しようゼ! 


 時間はあっという間に吹き飛んでしまい、伽夜ちゃんがカンペでバァンと頭叩いてくれてやっと正気に戻れた。 

 

「あぅぅうう……えっと、その、取り乱した……ごめんなさい。みんなが優しいから甘えてしまった……ほんとにごめんなさい」


[ コメント ]

・⁉ ⁉ ⁉

・何の音⁉

・誰かいる?

・甘えたって……ええんやで

・せやせや

・一向に構わん


「~~~~っ! 温かい……みんな温かいなぁ……ぅぅぅごめん、ほんとうにごめん……優しい、ほんとやさしいぃなぁみんなぁ――――おわり、たく、ないなぁ」


 じわっと広がる胸の温もりに切なさを覚える。

 あんまり上手くできなかったのに……本当にありがたくて、目が潤む。

 でもさっきからずっと伽夜ちゃんがツンツンと頭をつついている。


 滲んだ視界に次回の配信予告について書かれたカンペが映る。

 名残惜しさに後引かれながら、配信画面に向き直る。


「――――うむ! でも明日もまたみんなと会えるから! 

だからちょっとだけバイバイなのだ! うむ! 

という訳で明日はきゃ……【】というVtuberとコラボ……するらしい! 眷属のみんなぜひ来てくれ!」 


 最後くらいハツラツに、ハキハキと!

 そう思って元気よく言ったんだけど――――。 


[ コメント ]

・え

・あっ

・あっ、これは

・うそやん

・初手でとコラボ⁉

・天使が

・貴重な天使枠が……

・こうしてにかかるのね……

・キャスパァァァーーーー‼

ですよ、レヴィアたん


「……え? え⁉ ちょっ、それってどういう……」


 詳しく聞こうとした途端、後ろから伸びた手が配信終了ボタンを押した。


「初配信、お疲れ様☆ おねーーちゃん!」


 伽夜、ちゃん?

 振り返って見た私の妹の顔は――――年より幼い、無邪気な笑みを咲かせていた。

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