王宮で王女とお茶会ですよ

第26話 義妹 (アカシア)

 学院が始まってもうすぐひと月になる週末、私は王女殿下たちからお茶会に呼ばれて王宮に来ていました。


「ニレ姫様、カヤ姫様、本日はお招きいただきありがとうございます」

「アカシア、よく来てくれました。久しぶりに学院のことなど聞ければ嬉しいわ」

「アカシア、あたしにも!学院のこと、いっぱい教えてね」

「畏まりました」


 ニレ姫様が、第一王女殿下で、私より三つ年上で、十九歳、今年、学院を卒業したばかりです。

 カヤ姫様が、第二王女殿下、私の一つ下になり、十五歳、学院に入学するのは来年になります。


 そして、今日のお茶会に呼ばれているのはもう一人。


「アカシアお姉様、ごきげんよう」

「エンジュ様、ごきげんよう」


「お姉様、私は義妹なのですから、様付けはおかしいですよ」

「まだ、ウォールとは正式に婚姻したわけではありませんから・・・」


「それにしたとしても、私の方が爵位も下ですし、年も下ですよ」

「年が下といっても、学院の学年は一緒でしょ?」


 エンジュは、ウォールの妹で、年は私より一つ下になります。ただ、一つ飛び級をしているため、学院入学は私と一緒です。


「それは、今年だけですよ」

 エンジュが私に注意を促す。

「そうだったわね___」


「ごめんね。エンジュ」

「あ、カヤ姫様、謝らないでください。これは、私のわがままですから」


 エンジュはカヤ姫様の側付きとなることが決まっています。カヤ姫様は来年学院に入学するので、それに合わせて、エンジュももう一度学院に入学し直すことになっています。

 つまり、第一学年を二度やるのです。


 なぜ、そんなことになってしまったかというと、エンジュが飛び級してしまったからなのですが、エンジュとしては、もう一段飛び級をして、兄であるウォールと同じ学年になりたかったようです。残念ながら届きませんでしたが。


 本当なら、学院入学を一年待って、その間に側付きとしての教育を受けるべきなのですが、一年でも多く、兄のウォールと同じ学院に通いたいと、一年ダブルのを承知で、今年学院に入学したのです。まあ、本人は、そのことを認めていませんが___。


 つまり、エンジュは、お兄ちゃん大好きっ娘ということです!

 本人は否定していますが、これは、予言の書にそう書かれていましたから、間違いありません!!


 予言の書によると、小姑であるエンジュは、表ではいつもニコニコ接してくれますが、裏では何を考えているか、わかったものではありません。

 表面上の言葉を信じて「エンジュ」などと気安く呼び捨てにしようものなら、後でどんな目に合わせられることか・・・。


 だからといって、無視したり、敵対するのは得策ではありません。

 この手の義妹は、最後に味方になってくれることが、予言の書に書かれているからです。


 それに、エンジュは大変優秀で、一つあれば人生勝ち組と言われるランク4の素質を、彼女は五つも持っているのです。

 クインタプル-フォーと呼ばれ、ランク5より珍しいとされています。


 記憶術、社交術、護身術、射撃術、裁縫。


 文武両道。敵対すれば、精神的にも物理的にも完膚なきまでに叩き潰す。おまけにレース編みを嗜む完璧令嬢です。


 特に、記憶術の素質のせいか、一度会った人のことは忘れませんし、過去に何があったか全て覚えています。

 やった本人が忘れてしまったような、ちょっとした嫌がらせも、決して忘れることがありませんから、たちが悪いです。


 そんな彼女を敵に回したくはありません。


 もっとも、大好きなお兄ちゃんの婚約者になった時点で、敵認定されている可能性が強いですが___。


「それに、しても、二人はよく似てますよね。まるで、本当の姉妹のようです」

「そうでしょうか?」


 そのことは、正直よく言われます。

 ですが、髪色と瞳の色が同じ「黒」というだけで、それほど似ているとは、自分では思っていません。


 私が、気が強く、冷たい印象を与える釣り目なのに対して、エンジュは垂れ目で、愛くるしさを感じさせます。

 もっとも、実力行使させたら、エンジュの方がよっぽど恐ろしいですが___。


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