第24話 悪の組織 (アカシア)

 私は、mPadを探しているうちに、知らず知らず、悪の組織の秘密基地に足を踏み入れてしまったようです。


「あなたたち、学院を支配しようとする悪の組織ね。でも、私は負けないわ。私がここで捕まっても必ず助けが来るはずですわ」

「俺たちは悪の組織なんかじゃない! 崇高な目的のために集まっているだけだ!!」


「崇高な目的? ……悪者は皆そう言うのよ!」

「何だと!!」

 男が立ち上がって、今にも私に襲い掛かってきそうな勢いです。


「ちょっと落ち着いてください! アカシア様も煽るのは、やめてください!」

「あら、あなたはカリンさん。あなたも悪の組織の一員だったの?」

 男を宥めて、私の腕を掴み、男との距離を取ってくれたのは、男爵の娘のカリンさんでした。


「私は違います! 私はただ魔術研究会の見学に来ただけです」

「あらそう――。ということは……、カリンさんは、たまたま見学に来て悪事の現場を目撃して、監禁されていたということね。

 なるほど、ということは――、私が救出者の役だったのかしら?」

 私は疑問に思い、首を捻ります。


「え? もしかして、これはイベントだったんですか? 確かにそれっぽいですね。ということは、これは百合ルートですか?」

「カリンさん、――あなた何を言っているの?」

「あれ? 違うのですか??」

 カリンさんは時々、訳の分からないことを言う癖があるようですね。


「二人共何を言っている。訳の分からないことを!」

 カリンさんと話していたら、男が怒鳴り声をあげました。

「あら、ごめんなさい。悪の組織と対決中だったわね」


「だから、俺たちは悪の組織じゃない!」

「なら、その箱の中身見せてみなさいよ!」


「うッ、それは……」

 がっちりテーブルの上の箱をガードしながらも、男が言い淀みます。


「それは、それとして、あの、いかにも怪しい段ボール箱は何?」

 私は、部屋に入った時から気になっていた、部屋の隅に置いてある段ボール箱を指さします。

 もしかすると、テーブルの上に置いてある箱は、ダミーで、本物の秘密兵器はあちらの段ボール箱の中にあるのかもしれません。


「段ボール箱?」

 男は、私が指さした先を見つめます。

「あんな箱、今まであったか?」


 男は、どうやらとぼけるつもりのようです。怪しいです。


「そう言われると、今まであんなところに段ボール箱なんか無かったですよね」

「そうね」

「何でしょうね?」


 男だけでなく、他のメンバーもとぼけるつもりのようです。益々、怪しいです。


「それなら、私が中身を確認してもよろしいわよね?」

「どーぞ、どーぞ!」


 男は、手を差し出して、私に勧めます。

 そう言われると、中身を確認するのが怖くなってしまいますが、言い出した手前、確認しないわけにはいきません。


 私は、そーっと、部屋の隅に置かれていた、段ボール箱に近づいて、その蓋に手を掛けます。


 その時でした、段ボール箱の中から、何かが飛び出しました。


「キャー!!」

「いやー、アカシア。見つかってしまったか。上手く隠れたつもりだったのだが――」


 箱から飛び出してきたのはなんと、婚約者のウォールでした。

 そして、その手には、探していた私のmPadが握られていました。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る