第23話 探し物 (アカシア)

「おかしいですわ……」


 確かに、更衣室のロッカーに入れておいたはずなのに、私のmPadが行方不明になってしまいました。


 学院入学のお祝いに、お父様からいただいた、最新式の可愛らしいmPad。

 なくしてしまっては一大事です。


 何が一大事って、お父様からのプレゼントである以上に、今、あのmPadの壁紙は婚約者のウォールの写真になっているからです。他にも、調査のために撮ったウォールの写真がたくさん保存されています。


 そんな物、他の人に見られたら……。


「おしまいですわ!!」


 恥ずかしすぎて、学院の中を歩けなくなってしまいます。


 なんとしてでも、あのmPadを人目に晒される前に探し出さなければ!


 確か、あのmPadは最新型で、紛失しても見つける方法があったはず――_。


 私は、パスワードをいれずに、壁紙を変更する方法を見つけるために、持っていた取扱説明書を鞄から取り出し、紛失した場合に見つける方法が書かれたページを探します。


 ちなみに、壁紙の変更は、パスワードを入れればすぐできるようですが、パスワードが、好きな人の誕生日だと言われて、ウォールの生年月日を入れるなんて、意地でもできません。


「まったく! この取説、何ページありますの‼︎」


 兎に角、この取扱説明書、ページ数が多くて、細かいです。もっと、簡潔にしてもらいたいものです。

 

 それでも、なんとか、mPadを探す方法が書かれたページを見つけ、そこに書かれた魔法陣を実行します。

 何度か失敗しましたが、昔、ウォールに教わったことを思い出し、ゆっくりと慎重に、魔法陣を描き上げるとなんとか魔法が発動しました。


 光の塊が宙に浮き、ゆっくりと動いていきます。


 この後を追いかければ、あのmPadに辿り着くはずです。


 私が近づくと、光の塊は速度を上げて離れていきます。

 そこで、私が走り出すと、それは、もっと速度を上げます。


「ちょっと、早すぎ! 追いつけないわ」


 息を切らしてその場に立ち止まると、光の塊は、速度を落として待っています。


「私をからかっているわけじゃないわよね?」


 私が動かないでいると、光の塊は、私の周りをおちょくるように回り出しました。

 なぜかその行動が、ウォールに重なって「カチン!」ときました。


 いくら追いかけても、追いつけず、ならば、離れようとすれば、放してくれない。まったく、頭にきますわ。


「こら! 待て‼︎」


 私は、mPadを探すという、当初の目的を忘れて、光の塊を追いかけます。

 なにがなんでも、捕まえてやるんだから!!


 周りからは、何事かと、視線を向けられますが、そんなことは気にかけてもいられません。

 散々走りまわって、やっと、追い詰めたと思ったら、扉の中に消えてしまいました。


 バタン!


 私は勢いよくその扉を開け、中に入っていきます。


 中には、人がいて、全員がこちらに注目しています。

 そんな中、光の塊は、その人たちが囲んでいるテーブルの上の箱に吸い込まれました。


 そこで、私は当初の目的を思い出しました。


「そこに私のmPadがあるでしょう! 返しなさい!!」


 箱のそばにいた男が慌てて箱を引き寄せると、大声で、反論します。


「何を言っている! これにmPadなど入っていない。変な言いがかりはやめてもらおう!」

「嘘おっしゃい! なら、その箱の中身を見せてみなさい!!」


「これは、その……。あれだ。秘密兵器だから見せる訳にはいかない!!」

「秘密兵器?……」


 もしかして、これは予言書にあった、学院の支配を企む悪の組織では……。

 私は、とんでもないところに足を踏み入れてしまったようです。


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