呼び出しは校舎裏が定番です

第12話 アカシアとカリン (アカシア)

 カリンさんがこちらを睨んでいるので、私は仕方なくそちらに向かいます。

 そばに近付き、何か用かと尋ねると、魔術ランク0のことを馬鹿にされました。


 これでも、子供の頃、聖女を目指して、魔術の特訓をしてきました。

 婚約者のウォールは、毎週のように特訓に付き合ってくれていました。


 結局、聖女になれるほどの魔術は習得できませんでしたが、それは、それで良かったのかもしれません。


 努力の末、その甲斐あって、やっと人並みにはできるようになったのですが、ランク5の人から見れば、できて当たり前なのでしょう。

 ランク5の人から見たら、ランク0なんてゴミ屑以下でしょうが、だからといって皆さんの前で、大声でランク0だと馬鹿にするのは酷いと思いますわ。


「ちょっと、声が大きいですわ!」

 我慢できずに、きつめにカリンさんを咎めます。


「すみません。すみません。すみません」


 すると、カリンさんは、何度も私に頭を下げて謝ってきます。

 これでは私がカリンさんを虐めているようです。


 ハッ!

 これは、予言の書にあった、私を陥れようとした罠ですわ。


 まずいですわ。このままではカリンさんの術中にハマってしまいます。

 どうしたらいいでしょう。


 そうですわ。こちらも謝って、周りに友好関係にあることをアピールしましょう。


「カリンさんが謝る必要はございませんわ。むしろ謝らなければいけないのはこちらの方です。ごめんなさい」


「え? いえ、アカシア様に謝られるようなことは何も――」

「いえ、入学パーティーの時にカリンさんに迷惑をかけてしまったのではなくて?」


「ああ、別に迷惑だと思っていませんから気にしないでください」

「そうですか? カリンさんはお優しいのですね。これからは仲良くしてくださいね」


「え、男爵の娘でしかない私に畏れ多い!」

「そんなことございませんよ」


 私は、できるだけの笑顔をカリンさんに向けます。


「これって、裏シナリオの悪役令嬢ルートに入ったということなのかしら?」

 カリンさんがわけのわからないことを呟き始めました。


「ライバルキャラとの百合エンドってどうなのよ?!」

 ユリエンド? とは何のことでしょう。


「カリンさん、どうかされましたの?」

「いえ、なんでもありません!」


「すぐに、仲良くなるのは無理でも、お互いを知り合えば、いずれ仲良くなれると思うのですが、どうでしょうか?」

 兎に角、ここは、皆さんに、私は友好関係を築こうとしているとみてもらわないといけません。


「そうですか。そこまで言っていただけるなら、一つ教えていただきたいことがあるのですが」

「何でしょうか?」


「どうして婚約破棄宣言なんてしたのですか?」

「それは……」


 どうしましょう? 予言の書で婚約者のウォールが、あなたと浮気すると知ったから、とは言えませんよね。

 いえ、予言の書のことは秘密にするとしても、あなたの計画は既にお見通しであると伝えた方が、これからの計画を断念する可能性があるでしょうか?


「皆さんが注目している中では話しずらいので、後で、二人きりの時にお話ししますわ」

「そ、そうですね。すみません」

 カリンさんは、皆さんが見ているのに気付いて、また、頭を深々と何度もペコペコ下げて謝りました。


 だから、それはやめてください。私が虐めているようにしか見えませんから!


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