第11話 魔術の実習 (カリン)
学院での魔術の授業は、本当に基礎の基礎だった。
魔導書で魔法陣を覚えて、タクトに魔力を込めて魔法陣を描いていくわけだが、この時描く順番や、魔力の込め所を間違えてはいけない。
描き終わった見た目が同じでも、描いていく手順が違うと、魔術は成功しない。
逆に手順が合っていても、魔力を込める所を間違えていては駄目である。
イメージとしては、筆で草書体の漢字を書く感じだ。と、いってもこちらの人には通じませんが。
魔法陣の大きさにより、魔法の規模が、込める魔力の量により、魔法の強さが決まる。
一通りの講義を受けてから、実際に魔術を使ってみことになった。
教室では危ないので、訓練場に移動する。
mPadを使っていても、魔術を使ったことがない人もいるようで、なんだかんだ言いつつも、自分で魔術を使うことが楽しみなようだ。
訓練場で、タクトを受け取り、まずは水を生み出す魔術を練習する。
初めての人は、タクトに魔力を込めるのが上手くいかないようで、最初は四苦八苦していたが、すぐに慣れて、水を作り出していた。
実はタクトは、魔法陣に魔力を込めるための補助具でしかなく、慣れればタクト無しでも魔法陣を描くことができる。
私は、タクト無しでもできるのだが、余り目立ってもいけないので、タクトを使って授業を受けている。
と、いっても、こんなことは基礎の基礎なので、言われたところまではすぐに終わり、暇なので、周りの様子を観察していた。
見た限りでは、公爵令嬢のアカシア様が一番魔術に慣れているようである。魔術のランクが高いのだろうか?
感心して見ていたら、アカシア様が私が見ていたことに気づかれた。
アカシア様には、入学歓迎パーティーで絡まれて以来、関わらないように避けていたのに、迂闊なことをしてしまった。
アカシア様は、こちらにやってくる。
今更逃げるわけにもいかず、私はその場に立ち尽くすしかなかった。
「カリンさん、私のことを見ていたようですが何か用でしょうか?」
「いえ、えーと。アカシア様は魔術が上手いなと思いまして」
「それは嫌味ですの! あなたの方が遥かにお上手でしょうに!!」
「いえ、まあ、そうかもしれませんが、私はランク5ですし。できて当たり前というか……」
「やはり私を馬鹿にしてるのですね。どうせ私の魔術ランクはゼロですよ!」
「魔術ランク0なのですか!」
私は驚いて大きな声をあげてしまう。
ランク0といえば、素質無しだ。
因みに、ランクは0から6まであり、
ランク0、素質無し。
ランク1、素質あり。普通の人はみんなここ。
ランク2、セミプロ級、一般人より素質がある。十人に一人。
ランク3、プロ級。千人に一人。
ランク4、王者級。百万人に一人。
ランク5、伝説級。現れるのは数十年に一度。人間では最高ランク。
ランク6、神級。人間を超えている。人間でこのランクの者はいない。
と、なっている。
素質無しで、ここまで魔術が使えるなんて、驚かずにいられない。
「ちょっと、声が大きいですわ!」
私が大声を上げてしまったために、みんなの注目を集めてしまった。
「すみません。すみません。すみません」
私は何度も頭を下げて謝った。
しかし、アカシア様は、いったい、これまでどれだけ努力を重ねてきたのだろう?
私のように素質があるわけではないから、並の努力では、今のレベルにはならない筈だ。
私のように、何も努力をしなくても魔術が使えるようになったのとは違うのだ。
その努力に敬意を払う意味でも頭を下げ、自分がチートで申し訳ない気分になり頭を下げる。
それにしても、アカシア様は、今は無用の長物といわれる魔術に対して、なぜ、そこまでの努力をしたのだろうか?
普通なら考えられないことだ。
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