DAY20 パワハラギルド長、ざまぁを食らう(20日ぶり13度目)
ドドドドドドッ!!
「うわっ!?」
聖なる光の奔流が広間を包む。
”闇ダンジョン”の最奥、ボスモンスターであるグランスキュラと対峙するモニカを助けるため、サキュバスであるアルが作り出したマジックアイテム”光の矢”を使った私。
その矢がモニカに吸い込まれたと思った瞬間、爆発的な”聖女の力”が辺りに満ちた。
「これが……聖女の力……って、マズい!?」
"魔族"のアルには、過度な”聖女の力”は毒にもなる。
サブイボだけでは済まされない、彼女に何らかの影響が!
「にっしっし~、このくらい平気だよっ!」
慌てて振り返った私が見たのは、”聖女の力”が満ちる中で平然と高笑いするアルの姿だった。
「アル、大丈夫なのか……?」
「うんっ! 心がきれいなクレイと毎日えっちしてるアルは無敵なんだよっ!」
「……すこしは声を抑えなさい」
アルと私が漫才を繰り広げる間にも、広間を満たす聖なる力はグランスキュラを包み込み……。
オオオオオオオンンッ!?
カッ!!
雄叫びと共に、グランスキュラは消滅した。
キイイイイイインンッ……
その瞬間、”闇ダンジョン”は消え去り、私たちは外に戻る。
モニカもパーティメンバーたちも無事なようだ。
いまだ聖なる力に輝く自分の両手を見ながら、モニカは感激の表情を浮かべている。
「身体じゅうに溢れるこの力……クレイさん、アルちゃん、こんなわたしを助けて頂いてありがとうございます!」
「にはっ♪ モニカおね~ちゃんに眠るチカラを解放しただけだよっ! ねっ、クレイ!」
「ああ……モニカ、君の力がみんなや王国を救ったんだ。 胸を張って誇るがいい」
「はいっ!」
聖母のように微笑むモニカ。
こうして、モニカに目覚めた聖女の力により、王国の懸案となっていた”闇ダンジョン”の攻略は完了したのだった。
*** ***
「なっ!? なんだとうっ!!
”下請け冒険者に対する規定を超える多重依頼の強要により、冒険者モニカに対する依頼を禁止する”だとっ!」
「どういうことかね事務員! こんなもの協会の横暴じゃないかね!」
ほぼ同時刻、”タレコミ”によりパトリックの違法行為を把握した”協会”からの処分が伝えられる。
「そんなの、世界冒険者協会倫理規定の第27条に違反したからじゃないですか~」
相変わらず私の名前を覚えない人だな~そう思いながらセレナはパトリックに倫理規定を説明するのだが。
「馬鹿なっ! そんな規定俺は知らんぞ! いつ追加されたのだ!?」
「先月です~、ちゃんと読んどいてくださいね……あ、私はお掃除の続きがあるんで」
もう付き合いきれない……セレナは踵を返し、執務室を出て行こうとする。
「待ちたまえ君っ!」
怒りが収まらないパトリックは、セレナの形の良い尻目掛け手を伸ばす。
「あれ~、こんなことにカマキリ (凶悪モンスター、シザーハンズの幼体)が……踏まれちゃいますよ?」
パトリックの魔の手を華麗に回避し、しゃがみ込んだセレナがカマキリを外に出そうと手を伸ばす。
ふわっ……鎌を構え、警戒のポーズをとるシザーハンズを窓から吹き込んだそよ風が運んでいく。
ふよふよ……飛んだ先には不格好に盛り上がったパトリックの股間があり……。
サクッ!
「!?!?!?!?」
股間を鎌に挟まれたパトリックは痛みの余り、泡を吹いて悶絶するのだった。
「あらあら~?」
*** ***
「と、いう事でパトリックさんは股間負傷のため数日間お休みだそうです」
「痛そうでしたね~」
「あいたたた……どこかで聞いた話ですね」
のんびりと惨状を語るセレナさんに、下半身がきゅ~っとなる感覚を味わう。
「と、ともかく……モニカがウチの下請けから外れたのは残念ですが、孤児院が拡張されるみたいで、良かったですね」
”聖女の力”を解放した冒険者モニカ……その噂は王都中を駆け巡り、教会の肝いりで彼女の運営する私設孤児院は大幅拡張されることになった。
さらに、パワーアップしたモニカのスキル”フルエンチャント”が、無才能者にも十分な力を与えることが分かり……。
忌避されてきた無才能者の扱いが変わる、歴史的な出来事になりそうだ。
「クレイさん、アルちゃん、必要な時はいつでも呼んでくださいね」
「回復魔法でも強化魔法でも、いくらでもお手伝いさせていただきます」
名実ともに大陸トップクラスの聖女となった彼女の助力を得られるなど、結構な事だ。
「にはっ♪ アルはちょっとムズムズしちゃうから、聖なる力よりビーフシチューがいいなっ!」
「それよりクレイ! 闇ダンジョンで魔の力を補充したから……今日の夜は負けないぞっ!」
ぺろり。
アルの紅い目が怪しく輝く……やれやれ、私もさらなる”技”を身に着ける必要がありそうだ。
こうして、私に新たな心強いコネが出来たのだった。
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