第13話 山猫堂。

 街並みはいつみても心が弾む。基本は白い煉瓦でできた建物が多いのだけれど所々赤茶けた煉瓦も見えて。


 っていうかこの煉瓦って何処で造ってるのかなぁとかすごく気になる。まあ赤茶けた煉瓦ならわからないでもないの。白い煉瓦ってところがね。気になるの。


 元居た前世の世界でも赤茶けた煉瓦は結構一般的で古くから普通に作られてきてたはず。白い煉瓦はちょっと特殊? 珪藻土から作ったりしてたし作るの赤煉瓦より大変だったみたいだし。


 街の建物の基礎の部分とかあと道路にも満遍なく使ってあるこの白煉瓦は近くで見ても本当に白い。いったい何処でどんな技術で造ってるのかなぁ。今度お父様に聞いてみよう。


 そんな事をとりとめもなく考えながら歩くと活気のある商店街に辿り着いた。


 手を繋いで歩いてくれてるエオリアも、ちょっと動悸が早くなるのがわかる。


 人の往来も多く時々通り過ぎようとする馬車の御者と歩行者が言い合ってるのが聞こえたり。まあこういう喧騒もあたしは嫌いではない。


 人が生きている、生活しているって実感があるから。好きだな。



 あたしはこんな買い物にもデルタを連れてきている。背中のりゅっくに入れて背負ってるんだけど通り過ぎる人が顔だけ出したクマぬいをみて声に出して笑ったり、かわいいとか話してる声が聞こえてくるとなんだか嬉しく感じる。


 ふふ。デルタはかわいいでしょう? そう自慢したくなるのだ。もちろんしないけど。


 一応デルタには大人しくしているように言い聞かせてるので、何も喋らず動かないぬいぐるみのふりをしてくれてる。


 それでも目を輝かせて周囲を見ているのはわかる。


 時々ひゃうとかはぁとかもきゅうとか、そんなデルタの心の声が漏れ聞こえてくるのはまあご愛嬌。


 そんなところもかわいいなぁ、と、あたしはこのシチュエーションにめいいっぱい満足してた。




「ぼっちゃま。そろそろ目的のお店に着きますよ」


 そう目の前の店舗を指差して話すエオリア。


 山猫堂っていう木の看板がでているお店には、沢山の人だかりが出来てた。


「ぎゅうぎゅうだあ」


 そう声を出すデルタに、めってして。


 まあそのあと撫でてあげたけど。


 あたしはエオリアと一緒にその店舗の暖簾をくぐった。



 いらっしゃいませー!


 割と元気な店員さんの掛け声に一瞬びっくりしたけど、それでも。


 お店の中はほんと可愛い小物がいっぱい飾ってあって、あたしの目はそんなかわいいものたちに釘付けになった。

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