第12話 新しいお店。
街に新しいお店ができたと女性たちが噂をしてた。
侍女さんたちがお掃除をしながらそう話してるのが聴こえて。
なんのお店かなぁ? ってちょっと気になったけど流石にそんな事で声をかけるのもと思い躊躇する。
一応あたし、男の子だしね? 養子とはいえ、おぼっちゃま扱いだしね?
そうそう侍女さんたちの噂話に割って入るのも気が引けるわけです。
ほんとはそういうなんでもない話でわーきゃー盛り上がるのも嫌いじゃないし仲間に入りたい気持ちはあるんだけど、でもね。
地が出ちゃっても問題だし。
ちゃんと神秘的な美少年枠のキャラを演じなきゃとかも思っちゃうから、まあしょうがないの。
それでも。
最近はずっとクマぬいのデルタを抱っこして歩いてるから侍女さんたちからは微笑ましい目で見られてるのも感じてる。
デルタはほんとはぷかぷか浮いて移動できるんだけど、それだと初めて見る人が驚くかもと抱いて歩く様にしたらそれがけっこう好評だった。
まあね、まだ10歳だしね。こういうのも許されるかなと。
デルタについては目を離すと大変だからなるべく一緒にいる様にしてる。両親とか周囲には書庫の奥の奥から出てきたしゃべる魔法のぬいぐるみだよって話してる。嘘じゃないし。魔王だっていうのは黙ってるけど。
この子のが大きな魔力を持ってることは両親は感じてるらしい。あたしがそれに気がつかないのは逆にあたしに魔力の素養がない所為だと信じてるっぽいけど。
あたしに結構懐いてるしこの見かけから危険な感じはしないって思ってくれたのかな?
一緒にいるのを許してくれた。
まあね?
これで万が一何かあっても魔法を使ったのはデルタだって誤魔化せる? そんなふうにも思ってて。
「ねえ、エオリアは街の新しいお店について何か知ってるの?」
いつもの定例稽古のあと、そう聞いてみた。
あ、稽古中は流石にデルタはベンチで座っててもらってるよ?
「ええ。なんでもお洋服に小物に、それに本まで置いてあるそうですよ。けっこう広いお店だそうです」
はう。本もあるの?
「流石に剣や防具は無いそうなんですけど」
「エオリアは新しい武器が欲しいの?」
「いえいえ。私は特に……」
はうう。
「じゃぁ、お洋服は? エオリアは侍女服が多いけどお出かけの時に着る服は要るよね?」
「いえ……。それよりもぼっちゃま、ぼっちゃまは新しいお店に興味深々なのでは?」
「はは。うん。ちょっと興味あるかなぁ」
「それではこうしましょう。お勉強のお時間が終わったらご一緒にお出かけしましょうか?」
そうニコッと微笑むエオリア。
「あはっ。うん。そうしよ。楽しみだ」
あたしも子供らしく装いながら、笑顔を見せた。
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