第11話 ルークとデルタ。

 かちゃん。


 扉がひらく音。


 ほんの少しの隙間からかわいいお顔が覗く。



 うーん。ちょっとお行儀がわるいよ? ルーク。



 デルタを抱きしめながらベッドに転がってるあたしだけど、そんなあたしを覗き見るルークには気がついてた。


 魔力感知を防ぐ結界は物理的に部屋を施錠するものではないし、しょうがない部分もあるんだけど。さて。


「ねえルーク。覗いてるのはわかってるよ? そんなところに居ないで用事があるなら入っておいで?」


 そう声をかけた。


 観念した顔をして部屋に入ってくるルーク。


「ノックもせずに人の部屋を覗くのはお行儀が悪い事なんだよ? もうしちゃダメだよ?」


 そう注意をするのも忘れない。


「ごめんなさいにいたま。ルーク、黒い塊を持って走るにいたまが気になって……」


 はう。見られてたのね。


 でも。黒い塊か。


 ルークは男の子だからもしかしたら今までぬいぐるみなんか見たことないかな?


「この子はね、クマぬいのデルタ。黒いクマのぬいぐるみだよ」


 あたしはベッドの脇にすわるとルークを手招きしてデルタを抱え上げた。


「さわってみる? もふもふだよ?」


 そうにっこりわらってみせるとルークも笑顔になって。恐る恐るデルタの手を伸ばす。


 ふわっとした頭にちっちゃい手がのる。破顔したルークがもう可愛くて。


「はうう。くすぐったいよ?」


「わ! しゃべった。にいたまこのクマさんしゃべったよ」


 ふふ。


 どうしよっかなぁ。


 でも。仲良くなってくれるのは良いかな。


「ねえルーク。このこと内緒にできる? この子はね、クマさんのぬいぐるみだけど生きてるの。だからしゃべったりもできるんだよ?」


「ふぁぁ。クマさん生きてるの?」


「うん。そうだよー。ほら、デルタもちゃんと挨拶してあげて」


 あたしはルークをベッドの隣に腰掛けさせて。あたしとルークの間にちょこんとデルタを座らせた。


「もきゅう。ボクデルタ。よろしくね?」


 そうちゃんと挨拶するデルタの頭を撫でてあげて。


「はうあう。ぼくルーク。仲良くしてね」


 そう手を伸ばすルーク。デルタもそのフカフカの小さい手をルークの手に添えた。


 ああ。眼福。


 可愛いクマのぬいぐるみと可愛い小さい男の子が握手してる姿って、そうそう見られるもんじゃないよね。


 あたしは始終ニコニコして、ふたりの頭を交互に撫で回した。

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