第8話 クマのマオウ。

 午後の授業は移動教室で魔法学の実習。

 やっと本格的な魔法の授業が始まるらしい。


 低学年の時は魔法の基礎を学ぶだけでほとんど実地はなかったし。

(やっぱり危険だから?)

 ちゃんとしっかりと魔法を使うのはこの授業がはじてになるのかな。


 あまり推奨はされていないけど見よう見まねで魔法を使っちゃったり家庭教師を呼んで学んだりしてるひともいるらしい。

 まあレイスが充分に育ってからじゃないと危険もあるし未熟な状態で勝手にゲートをこじ開けちゃうとその後の成長を阻害しちゃう可能性もあるからって、学校では習ったんだけどね。


 そんなあたしだって割と小さい頃から実は見よう見まねで魔法を使っちゃってたりした。

 お母様の真似したり。

 無茶すると叱られたけど、でもね?

 そのおかげであたしの中にはけっこう沢山のマナがあることもわかったの。


 お母様曰く、自分に似たのかなぁって。


 お父様はそんなに魔力が高いほうじゃ無かったって話し。

 剣の腕前はそうとうなものだったって聞いたけどね。


 マナの量はレイスの大きさに比例するらしいんだけど、お母様のレイスは他の追随を許さないほどの大きさ、広さを誇っていたんだって。

 あたしのもそんな感じ、らしいの。

 自分ではよくわからないんだけど。

 でも、いまもそのおかげで魔法少女になれてるわけだし良かったのかもだけどね。



 教室にたどり着いた時にはもう皆着席してて、マギルア先生も教壇の隅に座ってた。

 授業の開始を知らせる鐘が鳴るのを待っている状態で。

 あたしが席に着くのと鐘が鳴るのが同時くらい。けっこうぎりぎりだった。


「さあじゃぁ今日から本格的な魔法の実技にはいるわけだけど、みなさんはもう自身のナカでのマナの熾し方とゲートからのマナの放出は問題なく出来る様になっているのかしら? この辺りは低学年のうちに学んでいると思うのだけど」


 授業の開始はマギルア先生のこの言葉から始まった。


 一瞬ザワっと声が上がったけど、そのままスッと静かになる。

 皆結構真剣に先生の次の言葉を待っているようだ。


「では。今日は実際にマナをマギアに変換してみましょう。皆の目の前にある水晶球を両手で包み込むように持ってください」


 各々の机の上にはちょうど手のひらサイズのガラス玉のような球体が置かれていた。


 あたしも皆に習ってそのたまを手のヒラで包み込む。ひんやりとした感触が気持ちいい。


「その水晶の中に自分のマナを押し込めるように注いでみてください」


 押し込めるって。


 マナは物質じゃないから、身体から出るとすぐに湯気のようにどこかに行っちゃう。


 うーん。いつもだったらそのままギアに渡すだけでいいのに。


 何度か試すうちになんとなくコツ? が、わかってきた。


 マナをそのまま入れようとするからダメなんだ。魔法を使うときみたいな気持ちになって。


 指先から金色の光が漏れ、それがそのまま水晶の中に流れていく。


 あは。できた?


 顔をあげると、マギルア先生がこちらをじっと見ていた。

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