第11話 早過ぎる再会

~その夜~


 エイリスはアユムを呼び出していた。


ノックの後、アユムが入って来る。



「魔法通信を使って私を呼び出すのはいい加減に止めて下さい(# ^ω^)」


「いちいち探すのは面倒くさいでやがるでしょ。我慢しやがりなさい」


「はぁ……(-公-;) それで、何の用ですか?」


「明日からフェルマーの補佐をしやがりなさい」


「……何故ですか」


「上位魔法を打ち消す何かを調べやがるのよ」


「アンチマジックでも使ったのでは?」


「魔法は使ってないとフェルマーが言いやがってたわ」


「な……!」


「上位魔法は使っていやがらない。尚且つアユムの魔法が無効化されやがった。それなら答えは1つでやがるわね」


「本人が自覚していない魔法を無意識に使っている……」


「察しが良くて助かりやがるわ」


「ありがとうございます。若干イラっとしてますが」


「それに」


「それに?」



 エイリスはあの事件を思い出さずにはいられなかった。


2度と繰り返すわけにはいかない為だ。


フェルマーをギルドに誘った理由とは違う感情。


自分が逃げる訳にはいかなかった。


フェルマーの両親を殺害するように命じたのは、外ならぬエイリスだったから。



「兎に角、頼みやがるわ」


「……(# ^ω^)」



 イラっとしながらもアユムは頷いた。




~次の日の朝~


 ぐがー。


ぐっすり寝てるフェルマーの部屋に、アユムが入って来る。


ぐっすり寝てるフェルマーにアユムは。



「全てのものよ。我がものになれ。マインドネット」



 小声で詠唱し、魔法をかける。


この魔法は上位魔法の中でもかなりのチートであり、実は相手を意のままに操ると言う性能だった。


フェルマーは何事も無かったように寝返りを打つ。


やっぱり効かない。


って言うか乗っ取るための精神がどこにもない。


こいつは一体何者……。


そんな事を考え、魔法を解く。


そんな時。


目を開けたフェルマーと目がばっちりと合う。



「……雑魚ボス?」




   ∧∧.∩       ∩_ ∵’、

  (    )/  ⊂/"´ ノ )

 ⊂   ノ    /   /vV

  (   ノ    し'`∪

   (ノ


フェルマーは場外ホームランした。




 鼻血をアユムがヒールで癒す。


なーんで殴られたのか寝ぼけてて良く覚えてないけど、殴っといて癒してくれるならやらなきゃ良いのに。


って言ったらまた殴られそうだから言葉には出さないでおく。



「雑魚ボスじゃないと何度言ったら分かるんですか貴様は(# ゜Д゜)」


「口悪いの移ってますから! ごめんなさい寝ぼけてたから許して下さい(>_<)」


「まあ良いでしょう。許しませんが(# ゜Д゜)」



 どっちだよ!


下らないやり取りの間に治療が完了する。



「って言うか何でいきなり俺の部屋に来たんですか!」


「ああ。そう言えば忘れていましたね」



 この人も頭おかしいだろ。


ここのギルドのトップ2人が頭おかしいって大丈夫なのか!?



「今日からフェルマーの補佐をさせて頂く事になりました」


「……は?」


「フェルマーはまだ新米で年齢もかなり若いですから。リーダーからの要望です」



 あーなるほど。


所謂研修と言うかOJTと言うか。


営業だったから何だか懐かしいな。


順番は頭おかしいくらい間違ってるけど、理に適ってるっちゃ適ってる。


頭おかしいけど。



「さっさと着替えて朝食をとって、訓練場へ来てください」



 それだけ言い残し、アユムは部屋を出て行った。


ふあー。


大きな欠伸が出る。


とりあえず頑張るか……。




 朝食は何の動物か分からない肉多目のメニュー。


体作りの為に考えられたメニュー……は考え過ぎか。


こう言うメニューの方が好きは好きだ。


ステラが作ったクリームシチューも好きだけど。


そんな朝食をちゃちゃっと済ませ、訓練場へ向かうと、既に何人もの人が集まっていた。


遅刻じゃない……よな?



「昨日の坊っちゃんじゃねえか」


「ん?」



 振り向くと、見たような顔……。



「昨日の渋いおじさん!」


「間違っちゃいねえな。だが、俺にはサナル・テルクラって名前があるんだぜ?」


「あ。サナルさん。宜しくです」


「サナルで良いぜ坊っちゃん」



 握手を求められ、サナルと握手をする。


昨日は自分にいっぱいいっぱいだったけど。


かなりの大柄な体格。


握る手は比較的硬い。


マメがあるって事は武器を使うタイプなんだろう。


両手ともそうって事は、両手を使う武器。


槍か薙刀だろうか。


そんな事を考えながら手を放す。



「そうか。坊っちゃんが新しく配属されたってメンバーか。名前は何て言うんだい?」


「……フェルマーって言います」


「フェルマーか。宜しくな」



 サナルは手をひらひらさせ、どっかへ行った。


ノーザンの方は伏せとく。


昨日、エイリスが言ってた事が本当なら。


確実にサナルは俺を虐待した事について知ってる筈。


そんな人にノーザンの名を語れば、余計な気遣いをされるかもしれない。


俺の力だけを評価されてここに来た以上、それはアンフェアだろう。

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