第27話 マヒルのスカウト

 

 俺はS級パーティーのマヒルにスカウトを受けていた。

 単独で 火馬かばのダンジョンを攻略した腕を見込まれたようだ。


 少女らの年齢はみな14、5といったところ。俺の妹イチカとそう変わらない。

 リーダーマヒルを筆頭に美少女と言っていいだろう。しかし、見た目とは裏腹に実力は本物である。彼女達の胸には青のギルド最高位であるS級のバッジが光っていた。


 さて、そんな女の子達に誘われた訳だが……。


「仲間、足りてないのか?」


「実はこの前の冒険で仲間の女の子が一人怪我をしてね。今は療養中なんだ」


「そうか……。それは大変だな。お前んとこのパーティーはみんな同年代の女の子ばかりじゃないか。俺は男だぞ?」


「そ、それは……。し、信用度による」


「なんだそれ?」


「あ、あんたは女の子を見下したり、変なことはしないだろ?」


「……どうかな。俺だって男だからな。気の迷いが出て襲ってしまうかもしれんぞ」


「そうやって、心配してくれてる方が安心できるよ。ギルドでももっぱらな噂なんだ。ゼロって男は信用できるってな」


 うーーむ。そんな噂をされていたのか……。まぁデオック達と比べればマシってだけだと思うけどな。


「しかし、俺はギルド内でも最底辺のF級冒険者だぞ? そんな奴をいれるのかよ?」


「だ、だから大抜擢さ。メンバーみんなが、あんたを推すんだよ。等級こそ低いが、単独で 火馬かばのダンジョンを攻略したんだ。実力は申し分ない。マヒルのS級パーティーならさ。あんただって鼻が高いだろ?」


 確かにな。彼女の実績はギルド内ではもっぱらの噂だ。そんなパーティーに入りたい冒険者は大勢いる。俺が入ればみんなに羨ましがられるだろう。

 だが……。どうにも心の整理が追いつかん。


「悪いな。俺は一人で冒険をするよ」


「「「「 そ、そんなぁ〜〜〜〜!! 」」」」


 マヒルは食い下がる。


「私らの何が気に食わないのさ!? S級パーティーだよ!?」


「デオックのパーティーで色々あったんだ。今……仲間はちょっとな」


「な、なんだよそれ!! 後悔したって知らないよ!! 私が仲間を誘うなんて滅多にないんだからな!」


「そうか……。それは残念だったな。じゃあ今回は縁がなかったってことで。じゃあな」


「な、なにさ! ちょっと単独で攻略したからっていい気になってさ!! 次に成功するって保証はないんだからな!!」


 ふーー。怒らせてしまったな。

 でも、今はどうしても仲間と一緒に冒険をする気になれないんだ。彼女達のことは何も知らないからな。また裏切られるのはごめんだ。


 マヒルは俺の背中に向かって叫ぶ。


「ゼロのバカァアア!!」


 やれやれ。怒らせてしまったんだ。仕方ない、言わせておこうか。

 待てよ……。少し気になるな。


「おい。マヒル」


「え!? ご、ごめん。お、怒った??」


「次に行くダンジョンはどんな所だ?」


「へん! そんなの凶悪レベルのS級ダンジョンに決まってるだろ! マヒルのパーティーなんだからな!」


「やめておけ」


「は? なんであんたにそんなこと言われなきゃならないのさ」


「仲間がいないなら等級を落としたダンジョンに潜るか、休養を取るのが鉄則だ」


「はん! ふざけんなよ! 偉っそうに!! あんたやっぱり他の男達と同じだな!!」


「そんなつもりじゃない。とにかく冒険するなら等級を落とせ」


「あたしらは今、最も勢いのあるS級パーティーなんだよ!! 等級を落としてダンジョンなんかに潜れっかよ!! あんた男の癖に恥ってもんを知らないのか!?」


「命の危険がある冒険に、男も女もないだろう。とにかく等級を落とせ」


「嫌だね。マヒルのパーティーは無敵なんだからな」


 自意識過剰だな。こういう時が一番危ないんだ……。


「忠告はしたからな」


「ふん! いらないお節介だね! あんたなんか誘うんじゃなかったよ!」


 マヒルは舌を出して去っていった。

 ラルゥが俺の顔を覗き込む。


「心配……なんですか? あの子達のこと?」


「別に……。俺は仲間にならなかったからな。他人事だよ」


「ふーーん……。そんな風には見えませんが?」


「……明日は妹のイチカが入院しているサードナルに行くんだからな。俺に冒険をしている時間はないんだ」


「ふふふ……」


「な、なんだよ?」


「ご主人様、優しいです」


「なんの話だよ!」


 ラルゥは俺の腕を強く抱きしめるのだった。




◇◇◇◇



──次の日。



ーー青のギルドーー



 俺は王都を離れる申請を受付にしていた。

 ギルドに登録している冒険者は、その街を離れる際に必須事項である。


「サードナルまで行かれるんですね。了承しました」


 受付をしていると、ギルド内の噂が耳に入った。


「またS級ダンジョンに挑戦したんだってよ」

「マヒルちゃん、可愛い顔してめっぽう強いからなぁ」

「また魔硝石をたんまり持って帰ってくるんだろうな」


 あいつら……。ギルドにはいないな。

 受付嬢なら知っているか。


「マヒルはもう旅立ったのか?」


「ええ。今朝早くにダンジョンに潜られましたよ」


「ダンジョンの等級は?」


「勿論、S級ですよ。死亡率50パーセント越えの凶悪なダンジョンです」


 

 やれやれ……。俺の忠告は無視か……。



「ギルドから忠告はしなかったのか? マヒルの仲間は一人足りないだろう?」


「勿論しましたよ。冒険者の死亡率を下げるのは私共の責務ですから。でも、その仲間が入院されてましてね。治療費を稼ぐ為に等級の高いダンジョンに潜るそうですよ」


 なるほど……。無茶をするにもそれなりの理由があった訳か。


「竜のダンジョンですからね。中には凶悪なドラゴンがうじゃうじゃいます。ちょっと心配ですよね」


 ……ま。俺には関係ないさ。





◇◇◇◇



ーーコルトベルラの港ーー



 体長30メートルを超えるカバの神、ヒポポダーマは、船の停留所から離れた海に浸かっていた。

 俺はこいつの口の中にある屋敷の中でくつろぐ。


「お前、海も泳げるんだな」


『主よ。我が海を泳げばサードナルなど3日で着くだろう』


 そんなに早いのか。金はたんまりあるからな。イチカに会うのが楽しみだ。


 人化したラルゥはお茶を入れながら微笑む。


「ヒポポさんの移動なら快適ですね」


「ああ。何もかもが順調だよ……」


 何もかもか……。


「ちょっと港で買い物でもするか」


「あは♡ ご主人様とショッピングです」




◇◇◇◇


──数分後。


 俺達は再びヒポポダーマの屋敷に戻った。


「ご主人様。変わった仮面を買ってましたけど。イチカさんのお土産ですか?」


「あーー。ラルゥ、ちょっと魔剣に戻ってくれ」


ボンッ!!


 彼女が煙りに包まれると、魔剣の姿になった。


『どうしましたか? ご主人様?』


「いや……。別に大したことじゃないんだがな。 地図剣マップソード

 

 俺は剣身に地図を浮かび上がらせた。


「ヒポポダーマ。ちょっと南西に向かってくれないか?」


『主の命ならなんなりと』


 ヒポポダーマは、その大きな体の向きを変えて南西へと歩き始めた。


『あれれ? ご主人様。サードナルとは逆方向ですよ?」


「あーー。ちょっとな……。寄り道だ」


『向かってる先にはマヒルちゃん達が潜ってる竜のダンジョンがありますねぇ』


「あーー。そ、そうなのか……。ふーーん」


『うふふ……。ご主人様。優しいです♡』




======================

======================



武器:魔剣ラルゥ。


魔剣レベル:12。


魔剣スキル:

炎攻撃剣ファイヤーブレード 水攻撃剣アクアブレード 女人化ガール 鑑定剣ジャッジメントソード 小回復剣リトルライフソード 照明剣フラッシュソード 収納斬ストレイジスラッシュ 地図剣マップソード 風攻撃剣ウインドブレード 刃防御エッジディフェンス 風乗り剣サーフソード 剣印ソードスタンプ


住居:ヒポポダーマの屋敷。


従獣:ヒポポダーマ。


アイテム:金銀財宝多数。変な仮面。


ラルゥの好感度:♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡



所持金:799万エーン。


貯金:626万エーン。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る