第26話 チョコレートパフェ


 俺は王都のカフェに来ていた。いや、俺は、と言った方がいい。


 ここはお金に余裕のある上流家庭の人間が集まる店。貴族なんかがお茶を楽しむ場所だ。貧乏だった俺がこんな所に来るなんて初めてで、少々緊張してしまう。

 

「鎧を脱いでるご主人様なんて初めて見ますねウフフ」


 人化したラルゥが俺の方を見て幸せそうに笑う。

 

 ここに来たのは彼女との約束を果たす為だ。


 彼女の目の前にはチョコレートパフェが置かれたいた。真っ白い生クリームにとろりと溶けたチョコが掛けれている。


「ああ! これがぁあああああああ。夢にまで見たぁあ。あははぁあああああああああああああああああああああ〜〜」


 俺はお茶でも良かったんだがな……。

 なぜか勢いでフルーツパフェを頼んでしまった。


 生クリームの上には大小様々なフルーツが乗る。

 

 こんな豪華な物……。なんだか食べるのに気が引けるな。


 ラルゥはずっとチョコレートパフェを見つめていた。その目はハートで恍惚とした表情を浮かべる。


「さぁ食べてくれ。ほんのささやかなお礼だよ」


「ありがとうございます! ご主人様ぁああ」


「S級ダンジョンを攻略できたのはラルゥのおかげだよ。本当に感謝してる」


「私なんかご主人様に感謝してもしきれません! あんな暗くてジメジメしたダンジョンから出してくれたんですから。しかもチョコレートパフェまで食べれるんです! もう夢のようです!!」


 魔剣人の価値観なんてよくわからんが、彼女にとって今が一番幸せなんだろうな。


「じゃ、じゃあ……。い、いただきますね」


 ラルゥがパフェを口に入れるとガタンと音を出して飛び上がった。


「んんッ!!」


「うぉッ!? ど、どうした?」


「おいしぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」


 なんだよ。驚かせるなよな。

 しかし、意外だったな。


「魔剣人でも味がわかるんだな」


「いえ、わかりません」


「は?」


「魔剣人は敵を斬ることでエネルギーを得ますからね。味覚なんてありません。そもそも食事なんてとりませんから」


「じゃ、じゃあなんでパフェを食べたかったんだ??」


「天界から見てたんです。仲の良い男女がチョコレートパフェを食べるのを。その姿がとっても素敵で……。憧れていたんです」


「そうか……。味がわからないんじゃ、ちょっと味気ないな……」


「えへへ……。そんなことありませんよ。とっても美味しいです」


 ラルゥが二口目のパフェを口に運ぶと、その目から涙が流れた。溢れ出る幸せが止まらなくなったようだ。


「甘いです……。とっても美味しい」


「味……わからないんじゃなかったのか?」


「えへへ……。天界から見ていた男女が、そんなことを言ってました。だから、見よう見真似です」


 憧れと……。ほんの少しの悲しみか……。

 きっと、彼女は味を感じたいんだろうな。

 

「ご主人様も食べてください」


「え?」


「はい。あ〜〜〜〜ん♡」


「……これも天界から見えていた男女がやっていたのか?」


「そうです。これもやってみたかったんです」


 うーーむ。断るのも感じが悪いしな。


 俺は周囲をキョロキョロと見渡してから、ラルゥの差し出したスプーンにかぶりついた。


「おいしい?」


「うん。甘い」


「あは♡ 良かったです!」


 うーーむ。こうなると俺のフルーツパフェもあげた方がいいのか……。


 ラルゥは俺のパフェをジッと見つめていた。


「……えーーと。食う?」


 俺がパフェを差し出すと、彼女はニコリと笑った。


「食べさせてください」


 うーーむ。やっぱりかぁ……。


 俺は周囲をキョロキョロと見渡して、誰も見ていないことを確認すると、クリームと桃をスプーンに乗せてラルゥの口へと持っていった。


「じゃ、じゃあ……。これ」


「うふふ。口に入れてくださいね。あ〜〜ん」


 スプーンを口に入れると、彼女は幸せそうに咀嚼した。


「もぐもぐ……。うふ♡ とっても甘くて美味しいです!!」


 やれやれ。味がわからん癖に……。


 それから3、4回そんなことを繰り返して、パフェを食べ終えた。

 

 かなり恥ずかしかったが、喜んでくれたので良しとしよう。






 カフェを出た俺達は今夜の宿を探すことにした。


「剣を収納する鞘を買ったからさ。魔剣に戻っていいぞ」


「えへへ……。ちょっとこうして街を歩きたいです」


 そう言って俺の腕を抱く。


「おいおい。 女人化ガールはエネルギーを使うんだろ?」


「大丈夫です。それより好きなひ……。あ、いえ、ご主人様と街を歩きたいんです」


 ラルゥは甘えただなぁ。仕方ない。少しだけつきあってやろう。




「見つけた! おいゼロォ!」


 眼前に現れたのは4人の美少女だった。


 えーーと、確か名前はマヒルだったか。青のギルドで俺に魔硝石をくれた女の子だ。

 彼女はS級パーティーのリーダーだ。だから一緒にいる子らは仲間だろう。


「俺になんのようだ?」


「あんた今、F級なんだってな?」


「ああ、デオックのパーティーから抜けて単独になったからな。等級は最下位になったよ」


「あんた程の腕が最下級なんて勿体ないよ。あーー、それで……。よ、良かったらあたしらのパーティーに入らないか?」


 4人の美少女達は期待を込めた目で俺を見つめていた。






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武器:魔剣ラルゥ。


魔剣レベル:12。


魔剣スキル:

炎攻撃剣ファイヤーブレード 水攻撃剣アクアブレード 女人化ガール 鑑定剣ジャッジメントソード 小回復剣リトルライフソード 照明剣フラッシュソード 収納斬ストレイジスラッシュ 地図剣マップソード 風攻撃剣ウインドブレード 刃防御エッジディフェンス 風乗り剣サーフソード 剣印ソードスタンプ


住居:ヒポポダーマの屋敷。


従獣:ヒポポダーマ。


アイテム:金銀財宝多数。


ラルゥの好感度:♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡



所持金:800万エーン。


貯金:626万エーン。

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