第21話 太っちょの悩み 【ざまぁ回】


〜〜魔法使いドド視点〜〜


 僕は魔法使いドド。

 今は病院に来ている。

 とにかく足のつま先が痛いのだ。


ーー待合室ーー


「あーーあ」


 ゼロっちの貯金……欲しかったなぁ。

 デオックは昨日の晩からどこに行ったかわからない。あてにしていたゼロっちの貯金は貰えそうにないや。


「痛てて……。うう……先生、早く見てよぉおお! つま先が痛すぎて歩けないぃいいい!!」


 しかし、対応した看護師は順番だからと言う。



「うう、他の患者なんてどうでもいいよぉ」



 ちっくしょう。ゼロっちのバカがいなくなってからついてないや。



◇◇◇◇



ーー診察室ーー



「つ、痛風……?」


 医者はそう診断した。

 付け加える。


「糖尿病も少し入ってますな」


「そんなぁあああああ!! 僕の何が悪かったのさぁ!? 適当な診断してるとただじゃおかないぞ!!」


「暴飲暴食!! 心当たりがあるでしょう!!」


「うッ!!」



 あ、ある……かも、しれない。

 ゼロっちがいなくなってから、好きな物をたらふく食べていた。


「水の代わりにビールを飲んでいたよ」


「それです。ビールは痛風になりやすいんですよ」


「ピザに蜂蜜をかけておやつ代わりに食べてた」


「それです。糖尿病の原因」


「豚の丸焼きが常食なんだ」


「それです。ビール。ピザ。豚の丸焼き。そんなの毎日食べてたら、そりゃあ病気になりますよ」


「そうだったのかぁああああああああああッ!!」


 うう……。ゼロっちが口うるさく毎日言っていたことは間違いではなかった……。


「サラダを食べなさい」


「ううッ!! 先生がゼロっちと同じこと言う!!」


「とにかく暴飲暴食は避けて、野菜中心の食事になさい。勿論、ビールもダメですよ」


「ワ……ワインならいける?」


「死にたいんですか? お酒全般ダメです!!」


 ガーーーーン!!

 生きる楽しみが無くなったぁあああああああ!!


「サラダを中心に、飲み物は紅茶でも飲んでなさい」


「じゃ、じゃあ。せめて紅茶にたっぷりの蜂蜜を入れて飲むよぉおお」


「は? ダメに決まってます。紅茶はそのままです。砂糖なんか勿論ダメ。糖尿病が悪化して死んでしまいますよ」



 だぁああああああああ! そんなぁああああああああああああああ!!



「うう……ううう……。で、でも、治せばまた食べれますよね?」


「痛風は発病してしまうとね。中々、完治はできませんよ。発病する前に暴飲暴食を控えて体の管理をしないといけません」


 うう……。ゼロっちが口うるさく言っていたのはこのことだったのかぁ……。

 でもあいつは本当に気が利かない奴だな! こうなることがわかっていたなら、もっと丁寧に教えてくれりゃあいいのに!! 「痛風になるぞ!」って言ってくれてたら食生活は見直したのにぃいいいいいいい!!


 くそぉお。腹が立つけど、つま先が痛い。

 受付に薬をもらいに行こう。



ーー受付ーー




「薬代、5万エーーーーーーン!?」


 受付嬢は澄ました顔で処理をする。


「ええ。痛風のお薬は高価なんです」


「な、なんでそんなに高いのさぁ!?」


「王都コルトベルラで痛風になるなんて貴族だけですよ? 痛風はお金持ちの病気なのです」


「だ、だからってぇ……。薬代が高すぎるぅう」


「こればかりは魔法で治りませんからね。特別に高価なんです。診療代、検査代、薬代と合わせて7万エーンになります」


「ゲッ!!」





ーー王都 コルトベルラーー



 街中。



 どうしよう?

 仲間はみんなバラバラになっちゃったし。

 冒険したくても足先が痛いしな。

 痛風を治さないとダンジョンに潜れないよ。



 僕の全財産はあと残りどれだけだろう?


「うう……10万エーンかぁ……」


 うーーん。野菜中心の生活をして病気を治して、それからどこかのパーティーに入らないとなぁ。


 突然、横頬に激痛が走る。



バシィイインッ!!



 強烈な殴打に僕の体は3メートル吹っ飛んだ。



「ぎゃぶぅううううううううううううゥッ!!」



 な、な、なんだ!?

 急にめちゃくちゃ痛い!!



「っく、くそ! だ、誰だ僕を殴ったのは!?」



 眼前にはゼロ・バンカーが立っていた。

 右手には漆黒の剣を持ち、こちらを睨みつける。



「げげッ!! ゼロっち!? どうして!? 生きてたのか!?」


「地獄の淵から戻って来た」


「っく! クソォォオ!! お前のせいで僕の人生はめちゃくちゃだぁあああ!!」


「なんの話だ? 俺を殺そうとした癖に」


「ぼ、僕は今、死にかけているんだ!! 痛風に糖尿病!! どうしてくれる!?」


「なるほどな。だから病院から出て来たのか」


「お、お前がもっと丁寧に指導してくれていたらこんなことにはならなかった!!」


「はぁ? 俺が痛風とか、糖尿病に詳しいと思うか? 以前より医者から注意を受けていたから、お前の食の管理をしていただけだぞ」


「ク、クソォオ!! チクショウッ!!」


「日頃から好きな物ばかり食べてるからそんなことになるんだ」


「ふざけるなぁああああッ!!」


 ゼロっちは冷ややかに笑った。








「 自 業 自 得 だ な 」






 くそぉおおお!!

 死に損ないの癖にぃいいいいいいい!!



「殺してやるぅううう!! ファイヤーダーーン!!」



カツーーーーーーーーーン!



 え!? あれ!?

 弾かれたのか??

 れ、連続ならどうだ!?



「ファイヤーダーーーーン!! ファイヤーダーーーーン!! ファイヤーダァアアアアアアアアアアアーーーーン!!」



 3連続の炎魔法。

 ククク。これなら奴も丸焦げだ!


 しかし、ゼロっちは剣身を火球に押し当てるだけだった。


刃防御エッジディフェンス……」



カツーーーーーーーーーン!

カツーーーーーーーーーン!

カツーーーーーーーーーン!



「何ィイイイイイイ!? 魔法を全て弾くだとぉおおおおおおおお!?」


「もうおしまいか?」


 だ、だったら上位魔法だ!!



「跡形もなく燃え尽きろ! メガファイヤーダァァアアアアアアアアアアアアアン!!」




カツーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!




 は………………!?

 そ、そんな………。上位魔法もあっさりと弾くなんて……。


「ドド。貴様はダンジョンで俺を殺そうとしたな。そんなことが許されると思うか?」


「わ、わかったよ!! じ、自首する!! 殺人未遂なら禁錮3年くらいで済む話だ!! それでいいだろ!?」


 ゼロっちはギロリと睨んだ。





「 ダ メ だ ! 」





 ん、んなバカな!?

 つまり、僕を……。

 

 こ、殺すのかぁああああああああ!?



「お前みたいな人間のクズ……俺が裁く」



 ま、まずい!! 奴の怒りは半端じゃないぞ!!

 本気で僕を殺すつもりだ!!


 謝罪しよう!! 形だけでも謝りまくって許してもらうんだ!!

 ゼロっちはお人好しのバカだから泣いて謝れば許してくれるはずだ!!


 即座に土下座。





「ごめんなさぃいいいいいいいいい!! い、命だけは助けてくださ──」




 頬に激痛が走る。




バシィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!!




「ぼげらぁあああああああッ!!」




 僕は5メートル吹っ飛ばされた。





「貴様のする、形だけの謝罪など1ミリもいらん」




 ひぃいいッ!!

 見透かされてるぅうう!!





「この剣は片刃でな。峰打ちならば死ぬことはないんだ」





 み、峰打ちぃ!?

 さっきの激痛は峰打ちだったのかあああ!?




「しかも、俺は気絶を治す急所を知っているんだ」


「は……はい? どういう意味??」


「気絶なんかで楽に終わらせないってことだ。その急所を峰打ちで打って激痛を味合わせ続ける。俺がダンジョンで受けた苦しさ以上のな」


 だ、だからぁあ……。


「どういう意味ですかぁああ!?」


「峰打ちの連打を貴様に喰らわすってことだよ」


 し、死んでしまうぅううう!

 あんな激痛を気絶もせずに受け続けば死んでしまうぅうううううう!!


 逃げなければ!

 逃げなければぁあああああああああああああああああああああああああああ!!








「みーーーーーーーね! 峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰峰ッ峰打ちぃゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」



ババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババッ!!



「あぎゃ! はぎゃッ! げぼッ!! あぎゃ! はぎゃッ! げぼッ!! でべらぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」







 峰打ちの連打を食らった僕は10メートル吹っ飛ばされる。

 薄れゆく意識に女の子の声が聞こえてきた。




「ご主人様。あの人が吹っ飛んだ先。病院ですよ?」


「ふん……たまたまだ」


「ふふ……。ご主人様……優しい♡」




 病院?

 ぼ、僕は病院の前にいるのか?


 今度は看護師の声。


「先生! 病院の前に重傷者が!? 複雑骨折に出血多量!! このままでは死んでしまいます!!」


「いやしかしな。ウチは慈善事業ではないのだ」


「大丈夫です。この人、10万エーンも持ってますよ」


「よし、なら、そのお金を使って緊急手術だ!」


 いや……。僕の全財産なんだけど……。

 うう……意識が……ガクリ。




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武器:魔剣ラルゥ。


魔剣レベル:12。


魔剣スキル:

炎攻撃剣ファイヤーブレード 水攻撃剣アクアブレード 女人化ガール 鑑定剣ジャッジメントソード 小回復剣リトルライフソード 照明剣フラッシュソード 収納斬ストレイジスラッシュ 地図剣マップソード 風攻撃剣ウインドブレード 刃防御エッジディフェンス 風乗り剣サーフソード 剣印ソードスタンプ


住居:ヒポポダーマの屋敷。


従獣:ヒポポダーマ。


アイテム:金銀財宝多数。


ラルゥの好感度:♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡



所持金:800万エーン。


貯金:0エーン。

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