第22話 動揺する霧丸 【ざまぁ前編】
〜〜戦士 霧丸視点〜〜
そんなバカな……。
青のギルドがゼロの噂で持ち切りになっている。
聞けば、あのダンジョンを単独で攻略して、人化する魔剣と共に帰って来たらしい。
しかも、魔硝石を山のように換金したそうだ。
ゼロが生きていたことも信じられないが、他の噂は信じがたい。
どうやってそんなことができたのだろう??
奴の実力は拙者より劣るはず。
何度か戦いを挑み、その全てで拙者が勝ってきた。
………………まぁ、いつも奴が降参して終わるのだが……。
ーー青のギルドーー
拙者はデオックを待っていた。
奴がゼロの死亡認定書を取りに来たところで預金通帳を奪おうと思ったのだ。
しかし、奴は姿を見せなかった。
おそらく、ゼロの噂を聞いたのだろう。
これであの預金通帳は紙切れ同然になってしまったな。
やることも無くなったし、2階の宿に戻って今後の作戦を練り直すとするか。
ーー宿屋ーー
「な!? どういうことだ!?」
部屋は荒らされ、ベッドには血だらけの賢者ガルパチョフが寝ていた。
「おい! 大丈夫か!? 何があった!?」
「ゼ……ゼロが……き、来た」
ちッ! なるほどな。
奴が拙者達に復讐しに来たって訳かい。
「て、手当て……して……く、くれ……」
「はぁん? 貴様、誰に頼んでいるのだ?」
「体中……が……痛い……」
「そうか……。じゃあ楽にしてやるよ」
拙者は長刀を抜き、そのままガルパチョフの喉元へと突き刺した。
グサッ!!
「うッ……!」
「これで楽になったろう」
たしか、魔法使いドドはつま先が痛いからと病院に行っていたな。
もしかすると、そこにゼロがいるかもしれん。
ーー病院ーー
太っちょの魔法使いドドは手術を終えて部屋で寝込んでいた。
全身を包帯でグルグル巻きにされている。まるでミイラのようだ。
「何があった?」
「ゼ……ゼロっち……だよ」
やはりな。
奴は拙者達全員に復讐するつもりだ。
「き、霧丸……2人で逃げよう」
「はぁ?」
「ゼ、ゼロっちは恐ろしく強いよ!! あんなの誰も勝てないよ!!」
「拙者は奴より強い!」
「あいつの強さは化け物級なんだ!! こんなことなら、あいつに手を出さなければ良かった!!」
「やれやれ。お前が弱かっただけだろうが」
「うう……。こんなことなら、あのダンジョンで魔剣に呪われたゼロっちを助けてあげるべきだったんだ」
「よく言うぜ。お前はゼロのことをうっとおしがっていたじゃないか」
「だ、だってぇ……。あいつは食べ物にうるさいしさ。戦闘だって、計画、計画って……」
「そうだ。あんな奴。うるさいだけだ」
「でも違ったんだよ!! 全部意味があったんだ!! 計画は大切だよ! だって僕達だけで無計画に進んだダンジョンはみんな失敗だったじゃないか!! 食べ物だって、ゼロの言うとおりにしなかった僕は痛風と糖尿病になったんだ!!」
「それはお前の暴飲暴食が原因だろうが!」
「で、でもゼロっちが全部管理してくれてるおかげで上手くいってたんだ! あいつがパーティーにいなくなって冒険は失敗ばかり、最後はみんなでバラバラになった。それだけならまだしも、僕はゼロっちにボコボコにされた……。お金も無い! 全部、あのダンジョンから狂ったんだよ!!」
チッ! こいつの妄想には付き合い切れんな。
「ま、待ってよ霧丸!! どこ行くのさ!?」
「ゼロを探す。そしてぶっ殺してやる」
「辞めようよ。きっと返り討ちにされるよ!! それより僕と逃げようよ!! 2人でやり直そう!!」
ったく……。その大怪我でどうやって逃げるのだ。
それに──。
「ドド。聞き捨てならんなぁああ。拙者が返り討ちに遭うだとぉお?」
「そうだよ!! ゼロっちは強いんだから!!」
拙者はドドの首を絞めた。
「ぐっ……ぐるじいい……。や、やめで霧丸ぅう」
「誰がゼロより弱いだってぇええ??」
「ぐ……ぐふぅうう…………」
ドドはそのまま目を覚さなかった。
逝ったか。
フン! ゼロが拙者より強いなどと、ありえんことだ。
◇◇◇◇
外。
病院から出ると背後より声が掛かる。
「よぉ、霧丸」
こ、この声……間違いない!
振り返ると奴がいた。
「ゼロ・バンカー!!」
「久しぶりにだな。貴様が俺を殺そうとしてから1週間振りか」
くっ! 皮肉のつもりか!
「し、しかし。拙者の居場所がよくわかったな! さてはこの病院で張り込んでいたな?」
「そんな面倒なことはしない。
ゼロは剣身から映像を発生させた。それにはコルトベルラの地図が表示されている。
よく見ると、赤い点が点滅しており、それには【霧丸】の表示がしてあった。
「どうして拙者の名前が載っているんだ?」
「このスキルは自分がいる場所、周囲50キロを表示できる。しかも対象物や人物の表示も容易なんだ」
な、なんて便利な……。
さては……あの魔剣のスキルか。
「ゼロ……。貴様もしかして、魔剣のスキルであのダンジョンを攻略したのか?」
「そうだ……。俺は呪われて、この魔剣と離れられなくなった。その代わり、様々なスキルを使えるようになったんだ」
く……。まさか魔剣を使いこなすとはな……。
「お前の目的は復讐か?」
「当然だ。俺を騙し、殺そうとした。貴様らを許す訳にはいかん」
「ク……ククク。身の程知らずとはこのことだ! 俺に殺されに来るとはなぁ!!」
「身の程知らずか……ふっ。お前のことかもな」
「な、何を言う!! お前は俺と戦った時、いつも降参していた!!」
「俺は強くなった。あの時よりも更にな」
っこ、この野郎ぉおお!! 舐めた口利きやがってぇええ!!
拙者は剣を抜き構えた。
「ど、どこからでもかかってこい!!」
「この場所はまずい。さっきドドと戦って周囲の注目を浴びてしまったんだ」
「だ、だったらどうするんだ!?」
ゼロは街から離れた高原を指さした。
「あそこで戦おう。人気がなくて存分にできる」
かなりの距離だ……。
「そうなると、決闘は明日だな?」
「いや、今すぐだ」
「は? 貴様狂ったか? まさか2人であそこまで歩いて行くのか? 何時間かかると思っているのだ? 無計画にも程があるぞ!!」
「いや、計画というほどのものではないがな。すぐ行ける。
ゼロは魔剣の上に乗って空を飛ぶ。
し、信じられん。
あの魔剣、空を飛ぶのか!?
ゼロは俺の襟首を片手で掴んだ。
「くっ! な、何をする!!」
「空を飛んで高原に行くんだよ」
そのまま大空を飛ぶ。
ギュゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!!
「んおおおおおおおおおおおお!!」
す、凄まじい速度だぁ!!
瞬く間に高原へと到着した。
あ、ありえん!
歩けば3時間はかかる距離だぞ!!
そ、それを一瞬で……!?
「さぁ霧丸。ここなら存分に戦えるぞ」
や、やってやる!!
ゼロを返り討ちにしてやるぞぉお!!
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武器:魔剣ラルゥ。
魔剣レベル:12。
魔剣スキル:
住居:ヒポポダーマの屋敷。
従獣:ヒポポダーマ。
アイテム:金銀財宝多数。
ラルゥの好感度:♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡
所持金:800万エーン。
貯金:0エーン。
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