第19話 魔硝石の換金

 ギルドの一角が換金所になっている。


 ここってギルドでも目立つ所にあるんだよな。

 今回は結構量が多いから、少し気が引ける。


 受付は1つなので朝から行列ができていた。

 ラルゥは列を眺めた。


「行列ですねぇ」


「ここはいつも並ぶんだ」


 受付では屈強な男達が獲得した魔硝石の数を自慢していた。

 ギルドでは日常茶飯事である。


「どうでぇい! 魔硝石21個も換金するんだぜぇ!」


 ギルドの中で「おおーー!!」という歓声が沸き起こる。

 以前の俺なら驚いていた数字だ。


 ラルゥは首を傾げる。


「そんなに驚く数字なんですか?」


「通常は10個以下だからな。一度の冒険で持てる魔硝石には限りがあるのさ」


 俺の目の前の冒険者は女の子達だった。

 全員、歳は14、5といったところ。。


 見ない顔だな。

 妹のイチカと歳が近い。なんだか親近感が湧くな。

 この子らも冒険者なのだろうか?


 俺が眉を上げていると、そのリーダーとおもしき少女が俺に声をかけてきた。


「あんた、初めて見るよ。あたしらは最近、この街に来たんだ」


「ふーーん。そうなのか」


 俺がダンジョンに潜っている時に来たんだな。


「その子と2人パーティーなのかい?」


「いや……。この子は魔剣人だからな。冒険は俺1人さ」


「ま、まけんじん??」


「ラルゥ、もうすぐ魔硝石を出さないといけないんだ。魔剣の姿に戻ってくれ」


「はい! 承知しました!!」


ボンッ!!


 煙りに包まれたラルゥは魔剣の姿となる。

 周囲にどよめきが起こった。


「「「な! あの可愛い子が剣になったぞ!?」」」


 眼前にいる少女のリーダーも目を丸くする。


「じ、人化できるなんて……変わった武器だな」


「頼りになる武器さ」


「ふ……。変わった武器を持っていても単独冒険じゃな。冒険者の格は、ランクと魔硝石の数で決まるのさ」


 その子の胸にはS級冒険者のバッジが付けられていた。

 俺のA級のバッジを見てニヤニヤと笑う。


 この子達、可愛らしい女の子なのにS級冒険者なのか……。


「大したもんだな。そのバッジ」


「まぁね」


 少女達は自分達の番がくると受付のカウンターに魔硝石を山積みした。

 その数、31個。

 周囲にどよめきが起こる。

 

「おい見ろよ! すげぇ数だぜ!!」

「流石はS級冒険者。魔硝石で受付嬢が隠れそうだ!」

「あんなに魔硝石が一杯積まれるなんてよ! 見たことねぇぜ!」

「凄い連中だよ。まったく」


 少女は俺に笑いかけた。その笑みは自慢と嘲笑を感じる。


「すまないね兄さん。私らが換金する時は少々、量が多くてね。少し時間がかかってしまうのさ」


「……ああ。別にいいよ」


 少女はジロジロと俺を見やる。


「あんた……。魔硝石をどこに持ってんだい? もしかしてかなり小さな石かい?」


「いや……。そうでもないが?」


「ははは。それにしても見当たらないじゃないのさ。あたしの後ろに並んだ縁だ。1個あげようか?」


「優しいんだな」


「ははは。そうさ! あんたは、他の男と違って威張っている感じがしないからね。嫌いじゃないよ」


「そりゃどうも」


 少女は魔硝石を1個掴んで差し出した。


「あたしはマヒルっていうんだ。よろしくな」


「俺はゼロだ」


 マヒルは俺の手に大きな魔硝石を置いた。


「ニシシ。ほらよ。今日はラッキーだったな兄ちゃん」


 うーーむ。断るのも悪いのかな。


「ありがとう。貰っておくよ」


「へへへ。気にすんなって」


 マヒルの換金は58万エーンになった。

 酒場の連中から冷やかしと尊敬の声があがる。


「ひゅぅう! 流石だぜ! 一緒に酒でも飲み明かそうぜ!」

「すげぇ金だな!」

「かなわねぇ」


 マヒルは冷やかしをいなしながらも満足げな表情を見せた。


 さぁて、俺の番だ。

 魔硝石を取り出そうか。


収納斬ストレイジスラッシュ


 俺は亜空間の切れ目から魔硝石を取り出した。


 場は騒然とする。


「げっ!! 収納スキルだ!!」

「S級の上位スキルだぞ!!」

「あの切れ目の中にはお宝がたくさん入ってやがる!!」


 俺は金の燭台を取り出した。

 装飾にはダイヤモンドが散りばめられている。


「そうだマヒル。これやるよ」


 彼女は目を見開いた。


「ええッ!? こ、こ、こんな高価なもん貰える訳ないだろ!!」


「いや……。お前だって貴重な魔硝石をくれたじゃないか」


「そ、それは、あんたが……その……」


「まぁいいから。魔硝石のお返しだ」


「こ、こんな立派な燭台! 魔硝石10個以上の価値があるって!!」


「気にすんなよ」


「うう……」


 俺が亜空間から魔硝石を取り出すと、換金所の受付カウンターでは積めないくらいの山となった。

 酒場にいた連中は、この前代未聞の出来事に酒を飲むのもやめて集まった。


「こ、こりゃ、夢か? 幻か?」

「マジかよ…………」

「す、すげぇええ。こんな魔硝石の山。見たことねぇええ……」



 俺はカウンターの目の前に魔硝石を積んだ。



「314個。換金してもらおっかな」



 あ、そうか。

 マヒルに貰ったのがあったんだ。


 俺が彼女にウインクすると、彼女は気恥ずかしそうに汗を飛散させた。



「全部で315個の魔硝石だ。換金頼むよ」



 受付嬢の悲鳴がギルドに響く。



 さぁて、いくらになるのかな?



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武器:魔剣ラルゥ。


魔剣レベル:12。


魔剣スキル: 炎攻撃剣ファイヤーブレード 水攻撃剣アクアブレード 女人化ガール 鑑定剣ジャッジメントソード 小回復剣リトルライフソード 照明剣フラッシュソード 収納斬ストレイジスラッシュ 風攻撃剣ウインドブレード 刃防御エッジディフェンス 風乗り剣サーフソード 剣印ソードスタンプ


住居:ヒポポダーマの屋敷。


従獣:ヒポポダーマ。


アイテム:魔硝石315個。金銀財宝多数。


ラルゥの好感度:♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡




貯金:0エーン

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