第13話 デオックの気づき 【ざまぁ回】
〜〜デオック視点〜〜
ーー青のギルドーー
俺達は命からがらカマキリのダンジョンから逃げ帰ってきた。
全身傷だらけ。回復魔法が使える賢者ガルパチョフは右手を失い重症である。
なんでこんなことになったんだ?
このダンジョンはB級のはず。俺達はA級の冒険者なんだぞ。ランクを落として挑戦しているのに失敗するなんてとんだ赤っ恥だ。
こんな話はギルド内で広まってしまうじゃねぇか。くそ。ついてねぇぜ。
太っちょの魔法使いドドは体に傷薬を塗りながら首を傾げた。
「1人いなくなったのが原因かなぁ?」
ゼロのことか……。
戦士霧丸は眉を寄せた。
「ゼロは妙に腕の立つところがあった。ここ3年で少しは成長したと言っていい。とはいえ、実力は拙者の方が上。それにあいつは荷物持ちだったからな。あいつがいなくなったところで戦力はさほど変わらんはずだ」
「だよねーー。ゼロっちは荷物持ちだもん。戦力じゃないよね。うーーん。おっかしいなぁ」
考えられるのは荷物持ちがいなくなった分、俺達が持っているということだ……。
「そうか! ゼロの持っていた荷物を俺達が負担した分、速度が遅くなったのか!!」
「それだよ、それ! それしか考えられないよ!! ゼロっちのバカは死んでまで僕達に迷惑をかけているんだよ!!」
「ゼロ……迷惑……いなくなって……せいせいする」
「だよねぇ。ゼロっちなんかいない方が気が楽でいいよねぇ。毎日、ピザも豚の丸焼きも食べ放題だしさぁアハハ!」
そうなると、荷物持ちが必要か……。
「仕方ねぇ。ギルドでメンバーを探してみるか」
「美少女……が……いい」
「おめぇは本当に好きだなぁ。右手を無くしても性欲は無くさねぇな」
「おっぱい……大きな……美少女……」
「俺だってそんな奴を入れたいがな。女どもは警戒して入らねぇ。とりあえず臨時的に男を入れるからな」
「うう……男……興味ない……」
俺だって興味ねぇぜ。
待てよ……。
「どうせ男を入れるんならよ。またゼロみたいにダンジョンに置き去りにしねぇか?」
仲間は俺の話に耳を寄せた。
「有り金、全部奪ってよぉ。ククク……」
みんなはニヤリと笑って承諾する。
ククク……悪って最高だぜ。
しかし、そう上手くことは進まなかった。
ーーギルドの酒場ーー
「おめぇさん。腕が立ちそうだ。どうだい、デオックのパーティーで活躍してみねぇか?」
「デオックのパーティーねぇ……。小耳に挟んだんだがな。なにやら等級を落としてダンジョンに潜ったそうじゃないか」
「あ、いやぁ……。ははは。ちょ、ちょっと色々あってな」
「……フッ。片目のデオックね。悪いがこの誘いは遠慮させてもらうよ」
「………………」
く、くそっ!!
もう噂が広まってやがる!!
声を掛けてもみんなが失敗したことを知っていて入りたがらねぇ!!
魔法使いドドは眉を寄せた。
「落ち目のパーティーに入りたがらないのは冒険者の常識だもんね……」
「ドドてめぇ! 誰が落ち目のパーティーだってぇ!?」
「ご、ごめん!!」
ったく、どいつもこいつもぉ。片目のデオックを舐めやがってぇえ。
俺はギルドの酒場から外へ出た。
「ちっ! むしゃくしゃするから気晴らしに酒飲みに行くぞ!!」
「死ねぇえええええええええええええええええええええッ!!」
突然の襲来。
若い男が短剣で斬りつけて来る。
くそ! 賞金稼ぎか!
「タ、
俺は即座にスキルを発動。片目から真っ赤な光を放つ。高速移動で攻撃をすり抜けた。
距離を取ると、何人もの賞金稼ぎが他の仲間を襲う。
「デ、デオックゥウ、た、助けてぇえええ!!」
おちおち、酒も飲みに行けねぇのかよ!!
「
──5分後。
「はぁ……はぁ……」
俺達の周囲には賞金稼ぎの遺体が10人以上横たわる。
「やっぱり、早くこの街を出ねぇと殺されっちまう」
とにかく金が必要だ。
仕方ない。もうプライドなんか捨てちまおう。
「明日はC級のダンジョンに潜るぞ!」
A級の俺達が2級もランクを下げてんだ。
これなら4人でも余裕だろう。
◇◇◇◇
──翌日。
ーー青のギルドーー
「C級ダンジョンの挑戦ですね。了承しました。デオックさん、気をつけてくださいね。等級落としの挑戦で2度失敗するとパーティーの等級が落ちますからね」
ギルドの受付嬢は冷たく事務処理をした。
「ふん! わかっている。メンバー1人が右手を負傷しているからな。ちょっと楽なダンジョンに入るだけだ。おめぇさんは心配なんかしなくていい。ただ粛々と事務処理だけやってりゃいいんだよ」
「……ご武運を」
「ちっ! 余裕だっての」
ーーカナブンのダンジョンーー
俺達は水を持ってくるのを忘れて喉がカラカラだった。
「くそ! まずはお宝より水を探すんだ」
「もう〜〜。デオックが無計画だから余計な体力を消耗するんだよぉおお」
「うるせぇえ!! 食いしん坊のおめぇが飲水を忘れるのが悪いんだろがぁ!!」
その時、ブルーゴブリンが現れた。その数5体。
「よし、やっぱりC級ダンジョンだ! こんな敵、余裕だぜ!」
しかし……。
魔法使いドドの絶叫が響く。
「ぎゃああああ!! つ、強いよ、ここのブルーゴブリン!! 攻撃が物凄く強い!!」
戦士霧丸はブルーゴブリンの斧攻撃を受け止めるのに精一杯。
「くっ……。な、なんだこの力……。いつもはもっと弱いはずなのに……何故だ!?」
ク、クソ!
どうなってんだ!? ここでもこの前と同じかよ!!
喉が渇いているだけで、こんなに力の差が出るなんて考えられねぇ!
「デオック助けてぇえええ!! 僕の魔法が効かないよぉおお!!」
魔法が効かないだと!?
何故だ!?
以前は効いていたのに何故!?
「デオックゥウウウウ!!」
クソ! 俺のスキルはボス戦で温存したいのに序盤で使うなんてありえんだろうが!!
「バカ! どうして魔法が効かないんだよ!! 今まで魔法で倒していた敵だろうが!!」
「だってぇ。分厚い盾を持っているんだもん。それで防がれちゃうんだよぉおお!!」
盾だとぉ!?
ブルーゴブリンは盾を持っているのか!?
新種!? 進化した!?
いや、待て待て……。
待てよ……。よくよく考えると、確かにいつも持っていたな。
そうだ! 奴らは盾を持っていたぞ。
しかし、おかしいな。俺達は一度だって盾で防御をされたことなんかないぞ?
何故だ?
俺達が攻撃する時はいつも、盾を持っていなかった……。
そうだ! ブルーゴブリンは盾なんか持っていなかったんだ!!
そうなるとますますわからんぞ。
何故、盾を持っていなかったんだ??
始めは持っていたのに、戦闘に入ると持っていない。
何故だ??
誰かが盾を取ったのか?
俺達がわからないほどのスピードで、ゴブリンから盾を奪った。
誰だ? そんなことができる奴は??
……そういえば、いつも盾は地面に落ちていたな……。
奪ったんじゃないのか……。叩き落としたんだ。
俺達が攻撃する前に超スピードで盾を叩き落とした。
そんな芸当ができる達人はこのパーティーにはいないはずだが…………。
ま……まさか……!?
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