第12話 涙が出るほど嬉しいスキル

 俺はラルゥに 収納斬ストレイジスラッシュの使い方を聞いた。


『技名を声に出して、何も無い空間を斬ってください。そうすれば亜空間の収納スペースと繋がって、いくらでもアイテムを入れることができますよ』


 いくらでも?

それは最高のスキルなのでは?

 言われたとおりやってみよう。

声に出して、



収納斬ストレイジスラッシュ


 

 空間を斬る。



ザン!



 すると、斬り筋が輝いて見えた。


「これは?」


『手で広げて見て下さい』


 おお、手で広がるのか。


「この先に空間が見えるな。これが亜空間か?」


『そうです。斬った威力分だけ空間が広がります』


「ほう……。つまり、大量に収納したい場合は大きく斬ればいいってことか!」


『あと、便利なのは表示で管理できますよ。斬り筋の上に表示が見えますか?』


「ああ、【倉庫1】となっているな」


『その数字でどの亜空間に収納したかわかるようになっているんです。数字は魔剣エネルギーが続く限り永遠に続きますよ』


「なるほど! 無限に収納が可能なのか!!」


 だったらやることは一つだ!!


地図剣マップソード!」


 えーーと、宝箱のマークがこことここだから……。


「よおおし! 行くぞラルゥ!!」


『はい! 下の階に向かうんですね!!


「その前にやることがある!!」


『え!?』


 俺はマップに表示された宝箱のマークへと急いだ。




ーー火馬のダンジョン 22階ーー


 ラルゥは不思議そうな声を出す。



『ご主人様。ここはさっき来た場所ですよ?』


「ああ、勿論わかってる! 目的はこれさ!」


 俺は黒く鮮やかに光る魔硝石を掴んでいた。


『魔硝石ですね。ご主人様がそんなにこだわるなんて、一体それってなんの石なんですか?』


「ダンジョンが生成される際、その魔力の残りカスが魔硝石だと言われているんだ。呪術で使ったり装飾品にしたり、用途は様々。1個1万エーン以上の価値があるんだぞ」


『ふ〜〜ん……。人間って変わってますねぇ。そんな石が貴重だなんて』


「これ1個でチョコレートパフェが食べ放題だぞ」


『ええ!! それはいいことを聞きましたぁあ!!  女人化ガール!!』



ボンッ!!



 ラルゥは煙に包まれたかと思うと、あっという間に美少女の姿へと変貌した。



「ご主人様! 魔硝石を 収納斬ストレイジスラッシュで収納するんですよね! 入れるの手伝います!!」


「ははは。現金なやつだな」


「だってこれ1個でチョコレートパフェなんですからね! うんしょ!」


 よおし、俺もはりきって入れるぞぉ!



 俺はマップの宝箱マークのポイントを全て巡り、 収納斬ストレイジスラッシュの倉庫に魔硝石や金銀財宝を詰め込んだ。

 亜空間の倉庫1はお宝で埋め尽くされた。

 

『ふはぁあ! もう魔硝石で一杯ですね! 100個以上はあると思いますよ! 金銀の装飾品もたくさんだし、絶景ですね!』


 ぼ、冒険者になって初めてだ……。こ、こんなにお宝を運べるなんて……。

 魔硝石を持っていけてもせいぜい3個が精一杯。それを100個以上も……。

 しかもまだダンジョンは続くんだ。もっともっとお宝が増える……。



「た、助かるぞ……」


「え? 何が助かるんです、ご主人様?」


「これだけの金があれば妹が助かる!! これでイチカを救うことができるんだぁあああああああああああ!!」



 イチカは大病の為、入院している。その治療費は莫大だ。しかし、これだけの金があれば、イチカを助けることができる!!


 涙が溢れて止まらない。

 あまりの嬉しさに膝から崩れ落ちる。


「ご、ご主人様! 大丈夫ですか!? どこか痛いところがあるのですか?」


「いや……。嬉しくってさ。こんなに嬉しいことはないよ」


「う、嬉しいと泣くのですか?」


「ああ、そうだ。人間は嬉しいと泣くんだ」


「で、でも……。お金が増えるだけなのでは?」


 そうだな。きっと普通の感覚じゃわかんないんだ。


「俺ん家は貧乏だったからな。だから、いつもお金には苦しめられていた。これだけの金があれば、必ずイチカはよくなる。もう最高だよ」


 ラルゥはハンカチで俺の涙を拭いた。


「じゃあ、このダンジョンを出て、イチカさんが治ったらまた泣いちゃうんじゃないですか?」


「ははは……。情けないけど、泣いてしまうかもな」


「情けなくなんてありません! 妹想いの優しいお兄さんです! その時は……。また私に涙を拭かせてくださいね」


「おかしな奴だな」


「だって……好きになってしまったんですもの」


 ん?


「何が好きなんだ?」


「はッ!」


 ラルゥの顔は真っ赤である。


「あ、いや、そのぅ……。チョ、チョコレートパフェです!!」


「ふふ……。食いしん坊だなぁ」


「えへへ……。ほんとはそっちじゃないんだけど……」


「ん? なんか言ったか?」


「あ、いえ! なんでもないです!!」


「よおおし! んじゃあダンジョンの奥に進みますかぁ!!」


「はい!!」



 地図を頼りに地下へと降りる階段に向かう。

 その手前。1匹の小さなトカゲで出くわす。




『ギュイイ!!』




 大きさは俺の腰程度。真っ赤な舌をチョロチョロと出す。

全身は鉄の皮膚でキラリと輝いていた。


 メタル系だ!



「あのモンスターを 鑑定剣ジャッジメントソード!!」



 知らないモンスターはこのスキルにかぎる!



鑑定結果。

名前:メタルリザード。

特徴:弱点なし。攻撃力はそれほど強くないが、とても素早く防御力が高い。経験値が高く、メタルタートルの10倍はある。


 メタルタートルの10倍!? 経験値ヤバすぎだろ!


「こりゃ倒すしかねぇな!!」


 弱点なしでも俺には魔剣があるんだ。この世に斬れないものはない!!



 メタルリザードは目を見開いた。



『ギュイイ!!』




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武器:魔剣ラルゥ。


魔剣レベル:8。


魔剣スキル: 炎攻撃剣ファイヤーブレード 水攻撃剣アクアブレード 女人化ガール 鑑定剣ジャッジメントソード 小回復剣リトルライフソード 照明剣フラッシュソード 地図剣マップソード 収納斬ストレイジスラッシュ


アイテム:魔硝石126個。金銀財宝多数。


ラルゥの好感度:♡♡♡♡♡♡♡♡




貯金:0エーン。

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