第10話 デオックの苦戦 【ざまぁ回】


〜〜デオック視点〜〜


ーー王都コルトベルラーー



 青のギルド。



 この街に賞金稼ぎが来てやがる。

 3年間も音沙汰無しだったのによ。一体どうなっちまったんだ?


 俺達は旅立つ準備をして、ギルドの受付で出発の手続きをすることにした。



「40万エーンになります」


「何!? なんでそんなに高いんだよ!!」


「ギルドの酒場での飲み食いでのツケ。宿泊費用込みでこうなりますね。今まではゼロさんが小まめに払ってくれていましたよ」


 クソ! ゼロの野郎、こんなことまでやっていたのか!

 仕方ねぇ、この前の冒険で得た金を全部出すしかねぇな。


「おいお前達、有り金全部よこせ」


「「「 ええ〜〜!! 」」」


「いいから出せ! この街を出ねぇと賞金稼ぎに命を狙われんだよ!!」


 メンバーはやむなく有り金を出した。



「22万エーンしかねぇ……。てめぇら何に使ったんだごらぁあ!!」



 聞けば、みんな借金をしていて、その返済に使ったらしい。


 チッ!! どいつもこいつもぉおお。俺も同じだがよぉお!!


 受付嬢は冷たい視線を見せる。


「40万エーンです。返済が済むまではこの街からは出れませんよ」


 っく! このまま街を出れば、ギルドが俺達に懸賞金を掛けて賞金が跳ね上がっちまう。そうなると、ますます殺し屋がやってくる。絶対にそれは避けてぇ。

 てことは、なんとか金を用意しないといけねぇってことか。まったくついてねぇぜ。



「おめぇ達。明日はダンジョンに潜るぞ!」



 俺の発案に太っちょの魔法使いドドが難色を示した。


「ゼロッちがいなくなったからさ。メンバーは4人だよ。ちょっと厳しいんじゃない? まさか、またS級ダンジョンに潜るの??」


 確かにな。金稼ぎで全滅なんてアホらしい。


「流石にS級ダンジョンには行かねぇよ。無難に2級落としたB級ならなんとかなんだろ」


 スキンヘッドの賢者ガルパチョフは眉を寄せた。


「腰……痛い……。誰か……揉んで」


 そういや、こいつのマッサージはゼロがまめにやっていたな。


「もうゼロはいないんだ。マッサージくらいてめぇでやりやがれ」


「うう……。痛い……」




◇◇◇◇



 次の日。


ーーカマキリのダンジョンーー



 ククク。俺達の実力ならB級ダンジョンならちょろいぜ。


「パパッと攻略して、金を稼いで街からズラかるぞ!!」


「「「 おおッ!! 」」」


 俺達が階段を降りると、天井からコウモリのモンスターが襲ってきた。


「「「 キキキーーッ!! 」」」


 ダークバッドの下位種ダンジョンコウモリである。

 こんな雑魚は余裕だ。


「霧丸。斬っちまえ!!」


「任せておけ!」


 戦士霧丸は鋼の長刀を振り回した。


ブゥウン!!

ブゥウン!!


「あ、当たらない!! こ、ここのコウモリは結構強いぞ」


 何? そうなのか?


「ドド!! 炎の魔法で燃やせ!!」


「わかった! ファイヤーダーン!!」


 ドドの杖先から火球が出現する。

 群れを狙うも、コウモリ達は悠々と交わした。


「僕の魔法が交わされたーー!!」


 クソ。どうなってる!!


「ガルパチョフ! お前の風魔法だ!!」


「腰……痛い……」


「バカ! そんなことより魔法を出せ!!」


「あぎゃっ!! ……か、……噛まれた!!」


 こいつもダメか。

 仕方ねぇ。

 片目のスキルを発動させる!



高速移動眼ターボアイ!!」



ギュゥウウウウウウウンッ!!



 俺は高速移動でダンジョンコウモリの群れに突入した。腰に挿した小斧を取り出し、コウモリ達を殲滅する。



 俺の周囲にはコウモリの死骸が散乱した。



「ハァ……ハァ……。なんとか倒したぜ」



 ドドは呑気に笑っている。



「なんとか勝てたねデオック」


「バカ!! 俺のスキルは最下層にいるダンジョンボスに対抗する為のものなんだぞ!! それをこんな入り口付近で使わせやがって!!」


「ご、ごめんよぉお。でも、なんかコウモリが強くてさぁ」


「大方、普段の不摂生が祟ったんだろう。みんなダラけ過ぎなんだ。気合いを入れ直せ!」


「う、うん……。でもさぁ……。今日は引き返さない? なんか僕、嫌な予感がするんだけど」


 こんな所で引き返したら青のギルドでいい笑い者だ。片目のデオックの名がすたるぜ。



「い、行くぞ! 次、手を抜いたら承知しねぇからな!!」





 メンバーは渋々ダンジョンを進んだ。

 ドドの不安は的中して戦闘は大苦戦を強いられる。



ーー地下3階ーー


「デオックが無計画に地図を持ってこなかったから道に迷っちゃったじゃないかぁあ!!」


「う、うるせぇ!! 地図くらいてめぇで用意しやがれ!!」


 チィッ! 地図はいつもゼロが用意していたな。調子が狂うぜまったく。


 俺達は歩き疲れた。

 そんな時、大きなウサギが俺達を襲う。


「は、速い!! なんだ、いつもより速く感じるぞ!?」


 か、体が重い!!

 道に迷ったのがあだになった! いつもならもっと精神的に余裕があるはずなんだ。ダンジョンラビット程度でひるむ俺達ではない。



「魔法……全部……避けられる」



 くそ! どうなってやがる!!

 疲れているだけじゃないのか!?

 何かがおかしい!!


「拙者の剣技も一切当たらぬ。相手の速度が速すぎるんだ!」


 ま、まるで格上のモンスターと戦っているみたいじゃないか! さっきから俺の 高速移動眼ターボアイを使いっぱなしだ。これじゃあ俺がまいっちまう。


 ガルパチョフの絶叫が響く。





「腕がぁあああああああ!! あああああああああああ!!」





 見ると、右腕がうさぎの噛みつきによって引きちぎられていた。


 くそぉ! どうしてこうも苦戦するんだあああ!?

 ここはB級ダンジョンのはずだろうがぁあああ!!





「ひ、引くぞ!! て、撤退だぁああああ!!」




 くそおおおおお!!

 どうしてこうなった!?

 どうしてぇえええええええ!?

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