第8話 ダンジョン2日目


〜〜ゼロ・バンカー視点〜〜


 俺は回復薬を探してダンジョンを彷徨い、モンスターを倒していた。

何も状況が変わらないまま、 水攻撃剣アクアブレードで喉を潤し、時間だけが経っていた。




 ダンジョンに入って2日目。



ザンッ!!



 斬ったのはダンジョンラビット。

ダンジョンの中では最もポピュラーなモンスターである。


「はぁ……はぁ……。ま、まだか……レベルアップ」


 脇腹の傷の影響もあり、疲労はかなり溜まっている。

貧血も相まってもう倒れそうである。

 ダンジョン攻略の為にも、なんとか傷は治したい。


 ラルゥと2人で回復アイテムを探しても見つからないしな。

希望は魔剣の力しかない。

 何か……。この状況を打破するようなスキルでも獲得できればいいが……。



 魔剣人ラルゥの声が響く。



『てれてれってれー! れべるあーーーーっぷ!!』



 よし! やっとだ!!


 この緩い感じのセリフに、ワクワクするようになってしまったな。

 さぁ、どんなスキルを覚えるんだ?

 攻撃系のスキルは勘弁して欲しいところだ。何かもっと応用の効くような……。



『レベル5になりました。スキル  鑑定剣ジャッジメントソード を取得しました』



  鑑定ジャッジメントだと……?

 何かを鑑定するスキルか??


「そのスキルはどんな能力なんだ?」


『あらゆる物を視覚化して鑑定できます。モンスターの名前や特徴。弱点なんかもわかりますよ』


 ほう……。弱点がわかるのは便利だ。

が、今はもっと優先したいことがあるんだよな。

身体がまいってしまったら戦闘ができなくなってしまう。


 思わずため息が出る。


「ハァ〜〜」


『お、お役に立ちませんか私?』


 しまった。

 これは感じが悪かったか。


「そんなことはない。お前は役に立っているよ」


『グスン……。本当ですか?』


「ああ。ありがとうな」


『へへへ……。ご主人様って優しいですね』


 落ち込む前にこのスキルを使ってみよう。


鑑定剣ジャッジメントソード


 俺は横たわるダンジョンラビットの死体に剣を向けた。


「あれ? 何も起こらないぞ?」


『何を鑑定するか事前に宣言してください。出せる情報が莫大でスキル名だけだと発動しないんです』


 ほう……。そんなになんでも情報が出せるのか……。


「じゃあ、名前と弱点を 鑑定ジャッジメントだ」


 剣身に文字が浮かび上がる。



鑑定結果。

名前:ダンジョンラビット。

弱点:目。腹部。



 なるほど。

こいつの腹は柔らかいからな。斬る時にそこを狙えば楽に倒せる訳か。


 待てよ。なんでもってことは……。



「こいつは食べれるか? 毒はないか?  鑑定剣ジャッジメントソード



鑑定結果。

名前:ダンジョンラビット。

無毒。

生食不可。

加熱殺菌必須。

肉は柔らかく美味である。



「美味だと!? そんなことまでわかるのか!!」


『あ! でもでも、生食不可になっています。そのまま食べたらお腹を壊しちゃいますよ!!』


「大丈夫だ!!  炎攻撃剣ファイヤーブレード!!」



 俺はスキルを使って炎を出し、ダンジョンラビットを炙った。


『うわぁ! 流石はご主人様です!! もうスキルを使いこなしています!!』


 モンスターなんて食ったことは無いが、背に腹は変えられん。


 俺はこんがり焼けたダンジョンラビットにかぶりついた。



ガブリ!



「モグモグ……。モグモグ……。ううっ!!」


「大丈夫ですかご主人様!?  鑑定剣ジャッジメントソードの鑑定は絶対です。毒は無いはずですが!?」


「うめぇええええええええええええええ!!」



 油が乗っていて、柔らかくて美味い!! こりゃ最高だ!!

 ダンジョンモンスターなんて食う話は聞いたことはないが、意外にもいけるぞ!!


 俺はあっという間にダンジョンラビットを平らげた。



「ぷはぁああああ!! 腹が満たされたぁああああ!!」



 今まで水だけだったからな。

栄養が取れたし満足だ。



『良かったですねご主人様。私も嬉しいです』



 問題は脇腹の傷なんだ。

化膿してかなり悪化しているようだし、なんとか早く治療したい。

鑑定スキルが出たなら、他にも使えるスキルがあるかもしれないな。



「なぁラルゥ。お前のスキルってどんな種類があるんだ?」


『すいません。それは呪態者の影響を受けるので、魔剣の私でもわからないんです』


「そっか……」


『ふみぃ……。お役に立てなくて申し訳ありません。うう……』


「気にすんなよ。どんなスキルが出てくるか楽しみじゃないか!」


『うう……。ご主人様優しいです』


 実際、魔剣ラルゥのスキルは強力なものばかり。

そうなると、これから会得する未知のスキルには期待できる。


 それに、この鑑定の能力は相当な応用が効きそうだ。


 俺は壁に自生する苔に目をやった。


 これってもしかして……。


「あの苔に傷薬としての効能はあるか?  鑑定剣ジャッジメントソード




鑑定結果。

名称:ダンジョン水苔。

傷薬の効能あり。

微量だが有毒。





「惜しい!!」


 うーーん。効能があっても有毒かぁ。

魔法で加工できれば傷薬が作れるが、今はそんな仲間がいないからな。


 しかし、腹が満たされると安心するな。

ホッとしてなんだか体がポカポカする。



「なんか体が熱いや。ははは」



 俺はバタリと地面に倒れ込んだ。



『きゃあ! ご主人様ぁああ!!  女人化ガール!!』



ボンッ!!



 煙に包まれた魔剣は美少女ラルゥに変化した。



「うーーん。頭がクラクラするぅうう」


『ご主人様、凄い熱です。ご主人様の容態を 鑑定剣ジャッジメントソード



名前:ゼロ・バンカー。

脇腹の炎症悪化による発熱。

体温42度。



「うええ〜〜ん!! ご主人様ぁああ!! どうしたらいいの〜〜!!」



 どうりで熱い訳だ。

こりゃ早くダンジョンを出ないと死んじまうな。






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武器:魔剣ラルゥ。


魔剣レベル:5。


魔剣スキル: 炎攻撃剣ファイヤーブレード 水攻撃剣アクアブレード 女人化ガール 鑑定剣ジャッジメントソード


アイテム:松明2本。カエル戦士の油。


ラルゥの好感度:♡♡♡♡




貯金:0エーン。

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