第7話 ついてないデオック 【ざまぁ回】


〜〜デオック視点〜〜


 俺はデオック・ジャックス。職業盗賊だ。

 やっと、生真面目でうっとおしかったゼロを殺せた。

 ククク。あいつとはどう折り合いを付けようか迷っていたが最高の別れ方になったな。



ーー青のギルドーー


「では、仲間の死亡が受理されるのに1週間かかります」


 受付嬢は澄ました顔で処理をした。

 スキンヘッドの賢者ゴルパチョフはつまらなさそうだ。


「ゼロの……金……下ろせない」


「仕方ねぇだろ。ギルドの調査が入んのに1週間かかんだからよ。死亡認定さえされりゃあなんだかんだ理由をつけて126万の貯金は全額、俺達がいただくってもんだ」


「ゼロの……妹……。病弱な妹……。犯したい」


 まぁ、妹の治療の為にゼロの遺言で俺達が彼女の保護者になるって筋書きが一番かもしんねぇな。へへへ、美少女か……たまんねぇな。


 戦士霧丸は眉を寄せた。


「デオック。雑用係がいなくなった。ここらで新しいメンバーを入れたらどうだ?」


「確かにな。とするなら女で決まりだな」


 メンバー一同、二つ返事である。


 何せ、今まで女メンバーが入ると必ず俺達の誰かが襲ったからな。

ゼロのクソ野郎がいつも未然に防ぎやがったが、あいつがいなくなった今、女の仲間は犯し放題じゃねぇか。ククク。


 太った魔法使いドドは笑う。


「今まではゼロッちがいたから女の子の仲間は入らなかったよね」


「あいつ……。女……。入れるの……。拒んだ……。クソ野郎……。死んで……。清々する」


「あはは! 本当、ゼロっちがいなくなったら監視役がいなくなって解放された気分だよね」


 全くだ。アイツは一々うるさかったからな。

 

「よおおし。だったらとびきりいい女を仲間にしようぜぇ」


「「「 賛成!! 」」」


 ギルドに一人。仲間を探す女を発見する。

 最近フリーになった女剣士だ。金髪でスリム。巨乳な美人である。


 ミニスカートで戦うのかよ。白い肌の太ももがたまんねぇなデヘヘ。

 よし、こいつに決めた。



「ちょっとあんた。仲間を探してんのかい? 良かったら俺らのパーティーに入らねぇか? 丁度、剣士の枠が一人、空いてんだ」


「あなたはえ……と。その目……。片目のデオック?」


「おお。俺の噂はアンタみたいな美人にも伝わってるか!!」


「最近調子いいじゃない。もうA級でしょ? ここ3年で急成長したって、界隈じゃ噂よ」


「へへへ。まぁ、大したことねぇよ。で、どうだい? 仲間になるかい?」


「そうね〜〜。考えても良いわね」


「おお!! そうこなくちゃ!!」


 ゲヘヘ! お前は今晩、俺達に犯されまくるんだよ!!


 女は俺達をジロジロと見た。


「あの……。もう一人いなかったかしら?」


「え? 俺達はこのメンバーだけだが?」


「あのう……。爽やかで、優しそうな男の方……」


 おいおい、まさか……。


「剣士ゼロのことかい?」


「そうそう!! その人!!」


 チッ! クソあまがぁ。


「ゼロっちは死んじゃったよ。もういないんだ」


「え? あ、そうなの??」


「あんな奴いなくてもさ。僕達が君を優しくエスコートしちゃうけどねデヘヘ」


「……………………」


「剣士ゼロはな。くだらない男だったんだ。死んで当然。あんな奴、いなくても俺達がお前を可愛がって……いや、違う。大切にするぜ。へへへ」


 女はもう一度、俺達をマジマジと見つめた。



「あはは……。嬉しいお誘いだけど、ご遠慮するわ。ゼロさんがいないんじゃね。入る意味無さそうだし」


「おいおい待てよ! 話はまだついてねぇだろが!!」


「あなた達、仲間の死を軽く見てるみたいだしね。そんなパーティーに入る気なんか微塵も湧いてこないわ。じゃあね」


「クソがぁあ!! お高くとまりやがってよ!! このブス!! お前なんかもう誘わねぇ!! 後悔したってしらねぇぞ!!」



 ったく。片目のデオック様を舐めやがって。


 俺はギルドにいる単独の女冒険者に声をかけまくった。

しかし、全員が口を揃えて言う。



『ゼロさんはいないのですか?』



 死んだことを伝えると風のように去って行った。


 あんの野郎、やたら女に人気があるじゃねぇか!

気分悪いぜ。


「おいみんな。金は魔硝石を売ってたんまりあるんだ。今夜は飲みつぶれようや」


 仲間達は歓喜の声を上げる。

 青のギルドでは酒が飲めるが、こんなに気分が滅入る時は外で飲むのが1番だ。


 俺達はギルドを出た。

 その瞬間。



ビュッ!!



 俺の肩に激痛が走る。


「痛てぇ! なんだこりゃ?」


 それは木の矢だった。


 畜生! 賞金稼ぎが俺の命を狙ってやがんのか!


 矢が放たれた方向を見やると、屋根の上に人影を発見する。


 俺は瞬時にスキルを発動させた。

潰れた左目が真っ赤に光る。


高速移動眼ターボアイ!!」


 俺の体は高速で移動した。



ギュゥウウウウウン!!



 即座に屋根の上に登る。

 賞金稼ぎは悲鳴を上げた。



「ひぃいいい!!」



 俺は、腰に挿していた小斧を取り出すと、そいつを賞金稼ぎの額に打ちつけた。



「ぎゃああああああッ!!」



 よし、倒した。


 下を見やると仲間達は地面に倒れて眠っていた。

いや、眠らせれていたと言ってもいい。

 仲間達に黒装束の賞金稼ぎが短剣を持って近づく。


 やれやれだ。

 今日はついてねぇ。



高速移動眼ターボアイ!!」



 再びスキルを発動。

黒装束の賞金稼ぎを小斧で一撃。

眉間のザックリと入る。


「ぎゃぁあ!!」


 絶命と共に筒を落とした。


 こいつは吹き矢だ。

となると、寝てるこいつらは眠り薬の針を刺されたんだな。


 矢と吹き矢の遠距離攻撃。

これは相手が手強い時の常套手段だ。

つまり、俺達の強さが知れ渡ってるってこった。


 チッ……! 本格的に賞金稼ぎがこの街に来たってのか!

3年くらい何も無かったから、てっきり忘れ去られているのかと思ったぜ。


「おい、てめぇら起きろ!! 気楽に出歩くのは危険だ!!」


 くそぉお。呑気に酒も飲めなくなっちまったぜ!!

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