第17話 地球”SOS17

「新入生の皆さん。渋谷小学校に入学おめでとうございます。」

 面白くない校長先生の話が永遠に続く入学式。

「僕は佐藤蒼。よろしく。」

 もちろん座っている生徒たちは校長先生の話など聞く訳がない。

「俺は鈴木樹。よろ。佐藤くん。」

 新入生たちは自己紹介を始める。

「僕は絶対に地球を守る勇者になって見せるんだ。」

「俺は剣で世界一、いや、地球一の剣の勇者になってみせる。」

「なら私は宇宙一の魔法使いになるわ。」

 男の子2人の会話に女の子が割って入る。

「君は?」

「私は高橋詩。よろしくね。」

「僕は佐藤。よろしく。」

「俺は鈴木。よろ。」

 高橋は隣に座っている友達も紹介する。

「この子は田中笑。私の幼馴染で大人しい引っ込み思案な子なの。仲良くしてね。」

「た、田中です。よ、よろしくです。」

「よろしく。」

「よろ。」

 挨拶を交わした新入生4人。

「ガヤガヤ!」

 活発な三人は自分の言いたいことばかり言い大人しい田中は蚊帳の外。

「・・・・・・。」

 3人の会話に参加できない田中は戸惑う。

「君も大変だね。」

「え?」

 その時、田中の高橋と反対側の席に座る新入生が声をかけてくる。

「私は伊藤朧。よろしく。田中さん。」

「はい。よろしくです。」

 伊藤は落ち着いた雰囲気で田中は安心できた。 

「新入生の皆さん。地球を救う良い子に育ってくださいね。以上です。」

 長い校長先生のお話が終わった。その頃には話を聞いていなかった新入生たちは挨拶を済ませ仲良しになっていた。


「私が1年2組の担任の山田です。国語、算数、英語だけでなく、今年から剣と魔法の勉強もすることになりました。皆さん、良い生徒になって地球を守ってくださいね。」

「はい。」

 担任の山田先生の挨拶を教室で受ける新入生たち。主人公の佐藤たちが1年1組出ないのは2組でも主人公になれるという配慮からである。また担任の先生というカテゴリを忘れていたので学年主任のはずだった山田が担任の先生に配備された。

「それでは早速、学校を案内したいと思います。皆さん、付いてきて下さい。」

「はい。」

 山田先生に連れられて学校案内に入る。


「こちらは保健の中村先生です。」

 1年2組はの生徒たちは保健室にやって来た。

「はい。保険の中村です。みんな、怪我をしたらやって来てね。」

「はい。」

 挨拶を済ませて保健室を去っていく生徒たち。


「ここは購買部の山本さんです。」

 次に1年2組は購買部にやって来た。

「文房具からおにぎり、パンまで何でもあるよ。いっぱい買ってね。体力が回復できるよ。」

「はい。」

 生徒たちは購買部を後にした。


「ここは給食室です。お昼には美味しい給食が食べれますよ。」 

 最後に給食室にやって来た生徒たち。

「私がみんなの給食を作っている松本です。いっぱい食べて大きくなってね。」

「はい。」

 生徒たちは12時には給食のおかげで体力を回復できる。


「おまけに掃除のおばちゃんの山口さんです。」

 掃除のおばちゃんの休憩所にもやって来た。

「ええー!? なんですか!? 宜しくお願い致します。」

「はい。」

 さすがに予期せぬ挨拶に掃除のおばちゃんはテンパっていた。


「職員室は・・・・・・変な先生が多いので行かなくていいでしょう。」

 山田先生もかなり変な先生である。

「教室に戻りましょう。」

「はい。」

 こうしてチュートリアル的な学校の紹介が終わった。


「教科書を配ります。明日からの授業に備えてしっかり読んできてくださいね。」

「ええ~!」

 もちろん生徒たちは大ブーイング。いつになっても生徒は勉強が嫌いなのだ。

「おお! 剣と魔法の教科書がある! スゲエ!」

 剣と魔法の教科書に感動する生徒たち。剣術の本とグリモワールと呼ばれる魔法の教科書である。

「勉強は嫌だけど、剣と魔法の勉強なら楽しそうだぜ!」

 佐藤は小学一年生の入学式を楽しんだ。

「また明日な。」

「バイバイ。」

 こうして佐藤は重たい教科書は剣と魔法の教科書だけランドセルに入れて去って行った。国語や算数の教科書はお自分の机に置いて帰ったのだった。


「はい! チーズ!」

 蒼はお父さんとお母さんと一緒に入学式に来て校門の前で桜の木をバックに写真を撮っていた。

「蒼。学校は楽しかい?」

「うん。お友達も直ぐにできたよ。」

 蒼は順風満帆に小学生生活を始めた。

「勉強もがんばるのよ。」

「はい。」

 蒼の返事には、剣と魔法の勉強をがんばるという意味であった。


「剣はこうして持つのか。」

 剣の本を読んでいる蒼。

「そうだ。新聞紙で剣でも作ってみるか。」

 行動力のある蒼は新聞紙で剣を作り始めた。

「できた。えい! やあ! たあ!」

 新聞紙で作った剣で素振りする蒼。

「僕が強くなって地球を守るんだ。ワッハッハー!」

 小学一年生の蒼の志は高かった。


「おはよう。」

 蒼は学校にやって来た。

「おはよう。」

 1年2組の生徒たちが出迎えてくれる。

「佐藤くんはしっかり予習をしてきたかい?」

「もちろん。剣の握り方もバッチリさ。」

 得意がる蒼。

「え? 今日、算数のテストだけど。」

「なんですと!?」

 こうして蒼のテストの結果は木端微塵に飛び散った。


「それでは剣の授業を行う。剣術の担当の小林だ。」

「待ってました!」

 剣の授業に喜ぶ蒼。

「そこ! 燥ぐな! 剣は手が切れるから危ないんだぞ!」

「すいません・・・・・・。」

 怒られる蒼。

「蒼は落ち着きがないな。」

「何んだと?」

 剣が好きな樹が蒼に声をかける。

「剣とは心だ。扱う者の心次第で剣は人を救うこともできるが凶器にもなる。」

「おまえ本当に小学一年生かよ?」

 疑いの眼差しで樹を見る蒼。

「それでは紙で作った剣で素振りをするぞ。」

「ええー!? 僕が家でやったのと同じかよ!?」

 思わず本音がでる蒼。

「えい! えい! えい! 強くなって地球を守ってみせます!」

 蒼は必死に剣を振るのであった。


「魔法の授業の担当の加藤です。みんな、がんばって魔法を使えるようになりましょう。」

「はい。」

 次は魔法の授業である。

「それでは教科書を開いてください。」

「え? 魔法の実習をするんじゃないんですか?」

 蒼の予想と授業カリキュラムはズレていた。

「小学一年生は魔法を使ったら危ないでしょ。だから最初は魔法の基礎知識を覚えるだけですよ。」

「ええー!? つまらない。ブー、ブー。」

 ぐれる蒼。

「蒼。あんた火の魔法の詠唱は知っているの?」

 魔法が好きな詩が声をかけてくる。

「詠唱? なんだよ。それ?」

「火の魔法を発動させる時に唱える言葉よ。そんなことも知らないんだったら教科書を読むしかないわね。」

「・・・・・・さあ! 教科書を読むぞ! うおおおおおおおー!」

 ものすごいスピードでグリモワールの魔法の書の魔法の教科書を読む蒼。

「うんん。全く分からん。」

 蒼に魔法の才能は感じられなかった。


「クソッ。剣と魔法の授業が楽しそうだと期待していたのに楽しくない。なあ、笑も楽しくないよな?」

「え!? 私!? 学校の授業なんか誰も期待していないよ。」

 声をかけられてビビる笑。

「え?」

「樹くんは剣術の道場、詩ちゃんは魔法の塾、私も親の病院で回復魔法を使って修行してるよ。学校の授業は先生たちも公務員というだけでやる気はないし、形だけだから自宅でどれだけ勉強するかにかかっていると思うよ。」

「なんですと!? なんちゅう格差社会だ!? 親の財力で習い事したり、親の子供の将来に対する勉強させる意欲によって、できる子とできないダメな子に分類されるなんて!?」

 蒼は小学一年生で日本の格差社会を実感して打ちのめされる。

「お、朧。おまえは塾とか実家が金持ちだとか言わないよな?」

 蒼は朧にも声をかけてみた。

「私は何も習い事はしていないよ。それに親が金持ちとい訳でもない。蒼と同じ日本に多い一般家庭だよ。」

「良かった。僕を裏切らないのは朧だけだ。」

 自分と同じ者がいて安堵する蒼。

「ただ才能は違うと思うけどね。燃えろ。火よ。火の魔法ファイア。」

 朧は火の魔法の詠唱を始めると火が現れる。

「おおー! 火だ! スゲエー!」

 火が現れたことに感動する蒼。

「私たちは、まだ小学一年生だけど、もう既に生徒各自の勉強力や剣と魔法の能力には差があるんだよ。蒼はもっと努力をした方がいいよ。そうじゃないと落ちこぼれてしまって、自分の将来の選択肢を狭めてしまう。優秀であれば色々な素晴らしい未来を選ぶことができるよ。」

「朧。おまえも本当に小学生かよ。ケッ!」

 荒れ狂う蒼。

(このままでは僕は落ちこぼれになってしまうのか!?)

 危機感が蒼にプレッシャーをかける。

(まずい! 真面目に勉強しなければ!)

 こうして蒼は人並みレベルまでは真面目に国語に算数、剣と魔法の勉強に取り組んだ。

(オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!)

 蒼は1学期の末には人並みに成長していた。


「それでは1学期の期末試験を行います。国語、算数、英語の筆記試験と剣と魔法の実技試験を行います。」

 月日が過ぎるのは早いもので蒼は期末試験を迎える。

「わ、分からん!」

 国語などの勉強に悪戦苦闘する蒼。

「やればなんとかなるものだ! ワッハッハー!」

 国語、算数、英語の筆記試験を赤点の追試スレスレで合格した蒼。

「追試を受けて一から勉強し直した方が蒼のためには良かったんじゃないだろうか?」

「そうね。この調子だと赤点追試組にも2学期は負けるんじゃない。」

 蒼を哀れむ樹と詩。

「わ、私は何も言ってませんよ。」

「どうなるかは蒼の運命次第だね。」

 関わりたくない笑と朧。


「それでは皆さんがどれだけ剣が上達したのかを見るために紙の剣で対戦してもらいます。」

 剣の実技試験が始まった。

「よし! やってやるぜ! 燃えてきたぞ!」

 蒼は剣の試験に燃えている。

「勝負あり! 勝者! 井上楓!」

 しかし蒼は一瞬で楓に負けた。

「男のくせに情けない。」

 楓は男尊女卑の逆であった。

「好きで男に生まれたんじゃないわい!」

 負けたのが悔しい蒼。


「めん!」

「勝者! 鈴木樹!」

 剣が好きな鈴木は順当に木村築に勝った。

「いいのよ! 私は魔法にしか興味はないから! アハッ!」

 詩は堂々と林空に負けた。

「うえーん! うえーん! うえーん!」

 笑は戦わずして泣き出して斎藤蛍に不戦敗した。

「ありがとうございました。」

 朧は手加減する様に清水心に勝利した。


「それでは皆さん。夏休みの間に勉強と剣と魔法の修行をしっかりと行ってくださいね。夏休みの宿題を忘れた人は2学期の剣と魔法の授業はウケさせないで補修ですからね。」

「ええー!?」

 恐るべし学校での教師の権限の大きさ。

「みんな。良かったら夏休みは全員で剣と魔法の稽古をしないかい?」

 予想外に蒼が全員に呼びかける。

「珍しいね。蒼にやる気があるなんて。」

「本当は国語や算数の勉強を教えてほしいだけでしょ?」

「バレたか。」

「ワッハッハー!」

 蒼はそういう男であった。

「じゃあ夏休みは蒼の家に集合ね。」

「おお。」

 こうして夏休みの宿題をお友達に手伝わせることに成功した蒼であった。


1年2組

佐藤 蒼

鈴木 樹

高橋 詩

田中 笑

伊藤 朧


1年2組

井上 楓

木村 築

林  空

斎藤 蛍

清水 心


校長 渡辺

購買のおばちゃん。 山本

保健の先生 中村 

剣の先生 小林

魔法の先生 加藤


悪役で教頭。吉田

担任の先生。山田

VR全否定の普通の授業の先生。佐々木

掃除のおっちゃん。山口

給食のおばちゃん。松本

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