第18話 地球SOS18

「でやあー!」

 2学期を迎えた頃には蒼は少しは強くなっていた。夏休みの血の滲む猛特訓が功を奏した。

「俺には叶わないが蒼も戦力にはなれるようになったな。」

「ありがとう。これも樹くんのおかげです。」

 剣は剣術が得意な樹に教わった。蒼の前身はあざだらけである。

「でも魔法はスッカラカンで全然ダメね。」

「ダメ言うな! ダメっていう奴がダメなんだ!」

「はいはい。」

 魔法が得意な詩が蒼の魔法を稽古したが、軽い回復魔法ぐらいしか蒼は使えなかった。

「やめて! 近寄らないで! 怖い! 私の代わりに戦って!」

「スゴイ! 中級の回復魔法並みの威力だわ!?」

「バリアまで使えるのか!? 一番成長したのは笑だな。」

 逆に高い成長を見せたのが笑。自虐の反動で大きく魔法力が爆発上昇した。

「前衛は私と樹。中盤に蒼。後衛に詩と笑。我々のフォーメーションは完璧ですね。」

「学年トップの成績の朧が言うんだから間違いないな。僕たちが最強です。アハッ!」

 朧は全員の力量を把握する賢さを見せていた。

「それはどうかしら?」

「井上!? いったいどこから現れたんだ!? 盗み聞きとは卑劣な!?」

「こら! 好き勝手言うな!」

 そこに楓と仲間たちが現れる。

「もうすぐ夏休みの成長を見るためのクラス対抗戦があるわ。そのために1年2組の代表を決めないといけない。私たちとあなたたちの戦いよ。手加減しないからね。」

「望む所だ! 僕が夏休みにどれだけ猛勉強して、剣と魔法も猛修行した成果を見せてやる!」

 蒼はひと夏を超えて、がんばった自分に自信を持っていた。

「見ろ! 赤点よりも10点も高いぞ!」

 2学期最初のテスト。赤点は30点として蒼のテスト結果は40点だった。

「おめでとう。蒼。」

 朧100点満点でクラス1位。

「40点で自慢になるの?」

 楓99点でクラス2位。

「赤点で追試にならなければいいのだ! ワッハッハー!」

「ダメだこりゃ。」

 蒼に呆れる面々であった。


「これよりクラス対抗戦の代表を決めるために5対5で戦ってもらいます。」

「おお!」

 1年2組はクラス対抗戦の代表を決めるために内戦を始める。

「ルールは簡単。相手を時間内に多く倒したチームの勝ちです。それでは始めてください。」

 こうして戦いの火ぶたは切って落とされた。

「僕があいつらを全員倒してやる!」

「それは無理。」

「そうそう。」

「ありゃ?」

 仲間は誰一人として蒼を信頼していなかった。

「敵の手の内が見えない以上、こちらから仕掛けるのは得策とは言えない。」

「まずは回復ができる笑をまもらなくっちゃ。」

 回復役がいるかいないかでチームの持久力が変わる。

「頼もう!」

 そこに楓が単身で乗り込んでくる。

「なに!? 一人!?」

「私と勝負しなさい! さあ! かかって来なさい!」

 楓が堂々と仁王立ちしている。

「いいだろう! 僕が相手になってやる!」

「それは却下。」

「そうそう。あんたは後衛の護衛役なんだから大人しくしておきなさいよね。」

「ええー!?」

 ショックを受ける蒼。

「こいつとは俺がやる。」

 樹が楓の前に出る。

「一人でいいの? 私は強いわよ。」

「なめるな!」

 樹は剣で楓に斬りかかる。

「なかなかやるわね。」

「そっちこそ。」

 何度か剣と剣を交えると相手の強さが伝わってくる。

「だが、圧が弱い! うおおおおおおおー!」

 樹は力押しで楓に襲い掛かる。

「そうだな。確かに剣だけの勝負なら私はおまえには叶わないだろう。だがな、魔法も使えるのだよ! 魔法もな!焼けろ! 火の魔法! ファイア!」

「しまった!?」

 楓は火の魔法を至近距離で樹にぶっ放す。

「ウワアアアアアー!」

 樹は火で包まれる。

「これで一人倒したわ。」

 樹を倒したと確信している楓。

「癒せ! ヒール!」

 笑が樹に回復魔法を使う。

「危ない。危ない。油断した。もう少しで死ぬ所だった。ありがとうよ。笑。」

「ど、どういたしまして。」

 傷を癒してもらってお礼を言う樹。

「チッ! 仕留め損ねた。」

 悔しがる楓。

「剣の勝負に魔法を使うな。卑怯者。」

「剣と魔法が使えるんだから、これも戦略よ。フン。」

 確かに楓の言う通りである。

「なら私の魔法もお見舞いしてあげるわよ! 吹雪け! スノー!」

「こんな小雪。積もりもしないわ。」

 詩が雪の攻撃魔法で楓を攻撃する。

「それにしてもいいのかしら? あなたたち。私の挑発で私ばかりに注目しているけど。これは5対5のチーム戦よ。」

「なんだと!?」

 楓にもチームメイトが4人もいる。

「くらえ! 5人の連携魔法! 焼き尽くせ! ファイブ・ファイア!」

 楓、築、空、蛍、心の5人が同時に火の魔法で攻撃してくる。その準備のために態と楓は目立っていたのだった。

「こんなもの小学一年生が扱う炎じゃないわ!? なんていう発想力なの!? これじゃあ教室が吹き飛んじゃう!?」

 担任の山田先生は子供の成長は早いとビビっていた。火ではなく立派な炎になっていた。

「ドカーン!」

 見事に教室は炎が爆発して吹き飛んだ。

「ギギギギギギギー!」

 そして火災報知器がなりスプリンクラーから水が飛び出て火を消化していく。

「あなたたち! もっと小学一年生らしく可愛く生きなさい!」

「はい・・・・・・。」

 そして僕たちは先生に思いっきり怒られた。

「罰として今回、1年2組はクラス対抗戦を辞退します!」

「ええー!? そんな!?」

 こうして1年のクラス対抗戦に僕たちが出場することはなかった。

「ですが、次は夏の全国大会です! 気持ちを切り替えていきましょう!」

「おお!」

 僕たちのスケジュールは忙しかった。


1年2組

佐藤 蒼

鈴木 樹

高橋 詩

田中 笑

伊藤 朧


1年2組

井上 楓

木村 築

林  空

斎藤 蛍

清水 心


校長 渡辺

購買のおばちゃん。 山本

保健の先生 中村 

剣の先生 小林

魔法の先生 加藤


悪役で教頭。吉田

担任の先生。山田

VR全否定の普通の授業の先生。佐々木

掃除のおっちゃん。山口

給食のおばちゃん。松本


「世界が確立していない?」

 VRのはずが現実で、現実のはずがVRで。何かが辻褄が合わないのかしっくりこない。普通の授業に本当に剣と魔法があるのか。それともVRが壊れて現実に剣と魔法があり人が死んでしまうのか?

「現実に剣と魔法の授業がある。」

 その方がいいだろう。VRは忘れてしまおう。その方がリアリティーがある。

「もちろん生徒の誰かは死ぬ。」

 死んで冥界でハーデースでもやってもらおうか? 海で溺れてポセイドン。ありきたりだがありだな。聖衣? 役職が海王ポセイドンだけでいいか。そうしよう。生まれ変わりでいいか。

「守護星座? 守護天使? なにか流れができるな。」

 蒼は・・・・・・例えば、ゼウスの力の一部を使える? 神の紋章? それを伝えに来る神の使途、天使エルエル。繋がった。アハッ!

 ダメダメな蒼が神の力に導かれ地球の平和のために戦う物語。


「街にスライムが出る?」

 VRでなく本当の世界で剣と魔法が使えるということは、渋谷の街にモンスターが出現するということ。

「常に共存しているのか?」

 常時、道端にスライムがいる? そうすると高齢者や女子供は危ない。ということで突然現れて遭遇したら戦うということになる。

「次元の歪みからモンスターは出現する?」

 ウルトラエースのヤプールみたいなものか。敵役1人体制の方が良いのはバイキンマンでも立証済み。


「だから、学校の授業でも剣と魔法を勉強する必要がある。生きるために。」


 思考中


「2022年。地球は魔王の襲撃を受けた。このままでは地球は真っ二つになってしまう。それに対抗するべく小学生にも義務教育で剣と魔法を授業でウケることになった。」


 地球SOS!


 ここでタイトルコール。


「ウワアアアアアー!」

 ある日、佐藤蒼は空から降ってきた何かにぶつかった。

(私の名前はゼウス。神である。)

「神? なんだかおかしいな? そうか! 僕は頭を撃って死んだんだ! そうに違いない! 短い人生をありがとう! お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください。アーメン。」

「勝手に死ぬな! 起きろ!」

 蒼は神の言葉も聞かない自分勝手な思い込みの激しい男の子であった。

「いいか! 蒼!」

「なぜ僕の名を!? さてはおまえストーカーだな! 僕をさらっても親はお金持ちじゃないから、身代金は諦めろ!」

「いちいちボケを挟んでくる子供だな。」

 神は蒼の相手をするのが億劫になった。

「地球は魔王に狙われている。君は地球が真っ二つになるのを阻止するべく剣と魔法で魔王を倒す地球の騎士になるのだ。」

「難しいことは分かりません! だってまだ小学校入学前だもの!」

 蒼は幼稚園生だった。

「ダメだ。この子の相手をするのが疲れる。神ゼウスの名において命じる。いでよ。天使エルエル。」

 神は召喚魔法で小さな天使エルエルを呼び出す。

「ゼウス様お呼びですか?」

「うむ。この男の子に立派な地球の騎士になるように見守ってやってほしい。」

「嫌です! 今日は天界テレビで神様大食い選手権を見るんです!」

「え?」

 天使にも見たいテレビ番組があった。

「後で録画してメールの貼り付けて送ってやるから。」

「それならいいですよ。アハッ!」

 見たいテレビ番組が見れるので安心した天使エルエル。

「おまえ本当に神に仕える天使か?」

「はい! 私は神の使徒の立派な天使です! アハッ!」

 手に乗りそうな小型のカワイイ天使である。

「ダメだ! こいつらは異端だ! 私の手には負えない! さらばだ!」

 神ゼウスは逃げ出した。

「さようなら!」

 天使は笑顔で神の背中に手を振る。

「という訳で、これからよろしくね。蒼。アハッ!」

 天使エルエルが仲間に加わった。


「はあ!? 何か悪い夢を見ていたような!?」

 蒼は目を覚ました。何かにぶつかって気絶していたようだ。

「大丈夫? 蒼。」

「え?」

 そこには夢で見た小さな天使がいた。

「ええー!? 夢で見た人形が喋った!? きっと呪いの人形に違いない!? 僕は呪われているんだ!?」

「おい。誰が呪いの人形だ。誰が。」

 冷たい目線で蒼を見つめる天使。

「私は天使エルエル。神のゼウス様の命令であなたの成長を見守ることになったの。これからよろしくね。アハッ!」

「夢だ!? これは夢に違いない!? こいつは天使じゃない! きっと堕天使だ! そうに違いない!」

「堕天使言うな! 私は立派な天使だっの!」

 こうして人間と天使の奇妙な共同生活が始まった。

「今日から僕も小学一年生か。僕も大きくなったもんだな。アハッ!」

 蒼の神ゼウスに憑依された小学校生活が始まる。


 自然な流れだ。完璧。

 だが、批評でいろいろやり過ぎで面白くないドクターXとあった。基本は米倉と西田の戦いで、絶対に手術は成功。単純で見ていて結果の分かっている疲れない物語が良いらしい。後、出演者が多すぎて誰が誰だか分からない物語もダメだという。

 5対5の戦いとした場合。確かに登場人物が多くなる。しかし仕方がない。最大限の許容人数か? 敵の手の内が分からない間は攻めるのは難しい、だろう。

 でもこれで、主人公の蒼に神ゼウスは仕込めたし、物語創作としては万々歳である。ああ~これでまた書き直しか。物語創作はキリがない。きっとプロはもっと適当に、もっと普通に同じことの繰り返しを作って悩まないんだろうな。締め切りもあるから、駄作でもとりあえず作るんだろうな。だから最近の深夜アニメが脚本不足でとりあえず作るけど全滅なんだろうな。細くではなく太く作らないとヒット作品は作れない。漫画原作をアニメにするのは時間がかかるしね。

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