第7話 菜々子SOS7

「チタマ。チンタマ。」

 菜々子は暇を持て余していた。

「家の中は平和ですね。敵が出ません。アハッ!」

「やめてよ。家の中で敵が出たからってデビル・スーツを着てハイパーメガ粒子砲を撃ちまくるの。」

 チタマと菜々子は平和なのでまったりしていた。

「この調子で地球も平和になってくれるといいんですけどね。」

「まったくだよ。こんなに平和なのに、どうして未来の地球は二つに真っ二つになるの?」

 チタマの素朴な疑問。

「悪意です。」

「悪意?」

「人の悪意が地球に充満して、地球が支えきれなくなって、地球が真っ二つになってしまいました。」

 これが地球が真っ二つになった原因である。

「うそ~ん。どんだけすごいんだよ。人の悪意は?」

「例を挙げると、暴力、いじめ、パワハラ、セクハラ、育児放棄、虐待、貧困、難民、生活保護、その他諸々ですね。それらが強者の悪意、弱者の悪意を生み出し増大させ、妬みや嫉妬、復讐、報復などの悪意が誕生するのです。そして地球に充満した悪意が地球を汚染し最後には地で純粋な人間は絶滅しました。」

「マジか!? なんて恐ろしい生き物なんだ!? 人間は!?」

 人間の悪意は地球すら飲み込んで滅ぼしてしまった。

「未来の地球では人間は絶滅危惧種ですからね。アハッ!」

「笑って言うな。」

「えー。暗い話だからできるだけ明るく言っただけだのに。シクシク。」

 菜々子は気遣いができる半人半ロボである。

「ごめん。泣かないで。」

「大丈夫です。私、涙は出ませんから。アハッ!」

「嘘泣きかよ!? おまえは子供か!?」

 仲の良いチタマと菜々子。


「出てこい! 裏切り者!」

 その時、空から声がする。

「私を裏切り者と呼ぶこの声は!? ゴエティア!?」

 未来の悪の組織ゴエティアの刺客がやって来た。

「ちょっと地球を守って来ますね。チェンジ・バエル!」

 菜々子は家の中で人間装着型兵器デビル・スーツに着替える。

「菜々子! 行ってきます!」

 菜々子は煙突から飛び出していく。

「おまえはサンタクロースか?」

 チタマは一人ツッコむのであった。


「出たな! 裏切り者! 私の名前はシトリー。ここがおまえの墓場になるのだ。」

 悪の組織ゴエティアの刺客デビル・スーツ・シトリー。

「それはどうかな? いくぞ! シトリー! くらえ! ハイパーメガ粒子砲!」

 菜々子は必殺技のハイパーメガ粒子砲を撃ちまくる。

「ギャアアアアアアー!」

 シトリーはハイパーメガ粒子砲を食らって消滅した。

「私が地球を救います! ロード・トウ・ピースです! アハッ!」

 こうして地球の平和は守られた。

「帰ってお風呂にでも入ろう。きれいな水がある世界っていいな。アハッ!」

 菜々子は水の有難みを感じている。

 つづく。


「平和っていいですね。」

「そうだな。」

 チタマと菜々子はまったりと平和ボケしていた。

「そうだ! せっかくなので自分でシュークリームを作ってみましょう!」

 未来人の菜々子はお菓子作りに挑戦する。

「まずは卵と牛乳と生クリームを買って来ましょう!」

 菜々子は買い出しに行くことにした。

「チェンジ・バエル!」

 菜々子はデビル・スーツに着替えた。

「ただシュークリームの材料を買うだけなのに、なぜに着替える?」

「歩いていくよりも空を飛んでいく方が早いので。」

「うん。納得。」

 ごもっともな意見を言う菜々子。

「それでは行ってきます。」

 菜々子は煙突からスーパーに飛び立つ。

「菜々子がマグロを食べたくなったらデビル・スーツで海に突撃してハイパーメガ粒子砲を撃ちまくるんだろうな。マグロが乱獲されたら食べられなくなっちゃう。」

 菜々子の存在が地球に危機をもたらしているかも。


「スーパー! ロックオン!」

 菜々子はシュークリームの材料を売っているスーパーマーケットを捉えた。

ピュー!

 その時、スーパーの駐車場から弓矢が菜々子に向けて飛んでくる。

「キャア!? 危ない!? 何者ですか!?」

「人が空を飛んでいる!? 悪魔だ! きっと悪魔に違いない!」

「なんなんだ!? この世界は!?」

 そこには弓兵が3人いて、現代世界に驚いていた。

「原始人かな? ゴエティアかモンスター出もないし、困ったな。」

 菜々子は一目で敵とは分からない人間の姿をした弓兵の対応に困る。

「あの人たちは元の世界に流してしまいましょう。」

 その時、菜々子の耳元で水が囁く。

「あなたは誰?」

 菜々子の目の前に水の小さな女の子が現れる。

「私は水の妖精ウンディーネです。」

「水の妖精!?」

「はい。私は水のある所に存在します。ただ現代人は心が汚れすぎて私の姿が見えないだけです。」

 現れたのは水の妖精ウンディーネだった。

「分かった! 私が今まであなたを見たことがないのは未来の地球では水が無いからよ! 海は干上がり、水道水は放射能塗れ! 未来では水は無くなり、代わりに工場で作られるエネルギー水を燃料として飲んでますからね。」

 恐るべし! 未来の水事情!

「ええー!? 私は未来では絶滅してしまっているんですか!? そんなー!」

 自分の未来を知ってショックを受ける水の精霊。

「ええ~い! 水を汚す忌々しい人間どもめ! 私が水攻めにして滅ぼしてくれるわ!」

 水の精霊は悪魔へと姿を変えようとしていた。

「やめて下さいー!!!」

 菜々子は悪魔を止める。

「おっといけない!? 私としたことがもう少しで悪魔に魂を売る所でした!?」

 正気に戻る水の精霊。

「私は菜々子。名字はありません。3000年の未来の地球からやって来ました。滅びゆく地球を救うために!」

「私も地球から水が無くなってしまうのは困ります。菜々子。一緒に地球を救いましょう!」

「おお!」

 未来人の菜々子は過去の地球の精霊とお友達になった。


「ギャアアアアアアー!」

 その時、弓兵たちが悲鳴を挙げる。

「なに!?」

 菜々子と水の妖精は悲鳴の方へ振り返る。

「ゲロゲロ!」

 大きなカエルが弓兵たちを大きな口で食べていた。

「大ガエル!? 菜々子! みんなを助けるのよ!」

「やめなさい! みんなを食べるのをやめなさい!」

 菜々子と水の妖精が大ガエルに迫る。

「ゲホッ。ゲロゲロ。」

 弓兵3人を食べ終わって満足そうな大きなカエル。

「許さないぞ! 大きなカエルさん! くらえ! ハイパーメガ粒子砲!」

「地獄を見せてやる! フロッグめ! 水の精霊! ウンディーネが命じる! 貫け! 水魔法! ウォーター・ランス!」

 菜々子と水の精霊が大きなカエルに攻撃を仕掛ける。

「ギャアアアアアアー!」

 カエルは倒された。

「私が地球を救います! ロード・トウ・ピースです! アハッ!」

「水は命の源よ! 私に貫けないものはない! アハッ!」

 菜々子と水の精霊は勝利を喜ぶ。

「すごいわね。ウンディーネの水魔法。」

「そういうあなたのハイパーメガ粒子砲も中々のものよ。」

「ワッハッハー!」

 互いの健闘を称える二人。

「でも過去や異世界の人々まで現代世界に現れるなんて、私が未来からやって来てしまったせいなのかな?」

「それだけではないわ。私も地球を助けたいと願っていたら現代世界にワープしていたもの。きっとどこかで地球に歪みが生じていて、時空の入り口や出口がたくさん出現しているんだわ。」

「何とかして地球を守らなくっちゃ!」

「そうよ。私たちの水の星ですもの!」

 菜々子たちは地球の平和を守りたかった。

 つづく。


「私たちが強すぎる?」

「盛り上がりに欠けるのはそのせいかもしれない?」

 サイボーグ菜々子と水の精霊ウンディーネは悩んでいた。

「やはり危機があるから物語が盛り上がるのよ!」

「そうね。お腹が空いた人に顔を食べさせて窮地になる。でも援軍が来て新しい顔をくれて敵を倒す。これよ!」

 よく考えれば1話10分アニメの顔を食べさせるマンだが、毎回のようにピンチを迎える。そうすることによって視聴者と汚れていない純粋な子供たちの心をゲットしていくのである。

「まるで詐欺師ね。雨と鞭だわ。」

「物語なんて不幸の連続よ。不幸が無ければ物語にならないんだもの。」

 探偵モノは誰かが殺されて事件が起こる。戦いモノは宇宙の支配者だの、魔王だの、悪役の海賊だのが罪のない一般市民をいじめていく。正にアニメに漫画は不幸ばっかり。

「私たちも負けそうになってみない?」

「ワザとピンチに陥るというの!?」

 背に腹は代えられないと覚悟を決める二人。

「うっ!? なんて強い敵なんだ!?」

「ああ~! このままでは私たちはやられてしまう!? 地球が滅んでしまう!?」

 迫真の演技を見せる二人。

「でも私たちは諦めない!」

「絶対に地球を救うんだ!」

 そういえば偉い漫画家さんの物語の書き方13のストーリー構成にも同じように「危機」というものがあったような。

「なんか正義のヒーローみたい・・・・・・。」

「照れ臭いね・・・・・・。」

 結局、タイトルや設定が違っても物語の内容は同じである。それが一般大衆が求めているストーリー。

「なんかひたすら戦っているだけの物語の方が楽ね。」

「オリンピック、リーグ戦、トーナメントとかの展開に持っていった方がいいわね。」

 最終的に楽な道に逃げる菜々子。


「結局、毀滅は格闘ゲーム止まりよね。」

「キャラクターはコラボして野球ゲームでも何でも登場してるけどね。」

 やっぱり刀を持っているのだから格闘系(野球やサッカーも)が多い。

「菜々子のバエルなら空を自由飛行できるのでシューティングゲームにもできるはず?」

「私も水の精霊で空を飛べるので戦闘機の様な画面で戦うゲームができるのでは?」

 一番の理想はディズニーやUSJのライド系のゲームにすることである。既にテーマパークで成功しているのだから需要はある。現在のゲーム会社がそういうゲームを配給していないだけである。

「私たちは可愛い。どうせアニメでもゲームになれば声優はつく。イメージソングの歌も歌わされる。踊りもやらされる。音楽配信も2、5のライブに舞台もお金儲けのためにやらされる。」

 盛り上がっているというより、大人の金儲け、金儲けばかりである。

「んん? 私たちは何をやっているんでしょう?」

「企画会議かな? それとも製作委員会?」

 なんとなく現在の表舞台に出ているアニメ、漫画、ゲームが製作サイド側のお金儲けの都合で、一般大衆が求めているものとはかけ離れていると気づく。例えるとアニソンのリサが勝ち、現在の歌手、俳優、女優、ドラマに映画なんて全滅状態。

「何か新しいものはできないかな?」

「結局、無いからタイトルと設定を少し変えて、物語は同じことの繰り返しでいいんじゃない?」

 結局はそうなるのであった。ちゃんちゃん。

「後は毎回新しいアイテムを出すか、新しいモビルスーツを出すか、新しいキャラクターを出してローテーションで回すか。他は日常のクリスマスや入学式のイベントで回すか、単純なテレビのリモコンの取り合いの殺し合いや、りんご飴を誰が食べるかの奪い合いしかない。」

「支離滅裂ですな。」

 彷徨う二人。

「どうすれば話が回るんだろう?」

「一人では右も左も分からないので、案内役が必要になる。」

「つまり二人ということですね。人間と人間。人間とゆるキャラ。人間と魔王。何でもいいです。」

 細かいことは気にしない二人。

ピキーン!

「そうだ! 私が異世界に行ってみよう! アハッ!」

 菜々子はウンディーネの世界にタイムワープして行ってみたら面白いと考えてにやけた。

「そんな化学兵器を持って異世界に行ったら、きっと神として崇められるでしょうね。」

 水の精霊は予知していた。

「私が異世界ファンタジーの地球も助けてみせます! ロード・トウ・ピースです! アハッ!」

「そうか! 私が現代に来たのは異世界が魔王に征服されて地球の危機で助けを求めてやって来たんだわ! こうすれば話が繋がる! アハッ!」

 昔、竜玉でパンツが未来から助けを求めにやって来たの異世界から来た版だな。

「新キャラクターを毎回出すのは、まず簡単。それに登場して何をしに来たかという動機があれば物語が回るのか。」

「いい勉強になりましたね。人の意志。各キャラクターにも意思や動機、目標、人間関係があるんですね。」

 少しづつ成長していく菜々子。

「レッツ! 異世界!」

 菜々子はバエルのタイムワープ機能で異世界に向かうのであった。

 つづく。

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