第5話 菜々子SOS5

「秋といえば読書の秋ですね。それではおやすみなさい。」

 菜々子は本を顔に被せて昼寝に着いた。


「情けない! バルバトスはあんな裏切り者にやられたというのか!?」

 菜々子の様子を盗み見るゴエティアがいた。

「私のスキルが大声しかないと思ったら大間違いだ。今から面白異世界にしてやろう! パイモン・ワールド!」

 パイモンは自分の世界に菜々子を引きづり込む。

「zzz。もう食べれませんよ。マロンシュークリーム。」

 菜々子は涎を垂らしながら寝言を並べていた。


「うわ~あ! よく寝た。」

 菜々子は目が覚めた。

「なんじゃこりゃ!? 色々増えてる!?」

 菜々子のステータスに菜々子の占有している町のステータスも追加されていた。

「こんな面倒臭いことをするのは・・・・・・ゴエティアの仕業だな!」

 菜々子の女の第六感である。

「その通り! 私の仕業だ!」

 そこにパイモンが現れる。

「何者だ?」

「私はパイモン! 裏切り者を殺しにやって来た! 私の世界で戦ってもらうぞ!」

「こい! パイモン! 返り討ちにしてくれる!」

 菜々子はパイモンと戦うつもりだった。

「でやあああー!」

 しかし、そこにパイモン兵が菜々子に襲い掛かってくる。

「なに!? どういうことだ!?」

 一般兵士の登場に戸惑う菜々子。

「私たちの戦いだけでは格闘ゲームにしかならない。そこで我々を武将扱いにして、兵士も戦いに参加させて戦略シュミレーションゲームにもするのだ!」

 恐るべし! パイモンの世界。

「なんだって!? その内、我々にアイドルを目指させてリズムゲームにもするとか言い出しそうだな!?」

「ギクッ!?」

 図星でたじろぐパイモン。

「とりあえず初回だ。街作り、兵士の訓練なども含めて、おまえに時間をやろう。ゲーム時間で1年の12か月の12回ターンは不可侵条約だ。私も自国を強兵するので決戦は1年後だ。分かったか?」

「パイモンさんっていい人なんですね。アハッ!」

「それほどでも。」

 菜々子はパイモンを直感的に良い人に感じた。

「それでは戦略シュミレーションの始まりです!」

 こうして菜々子はマンネリの脱却のために新たな戦いに挑む。


「まずは田畑を耕すか。働け! 農民たちよ!」

 菜々子は農民に田畑を耕す様に命令した。

「・・・・・・。」

 しかし返事は帰ってこなかった。

「なんでよ!? どうしてよ!?」

 逆ギレする菜々子。

「え? 自国に民は私しかいない・・・・・・ええー!? 田畑も自分で耕すの!?」

 恐るべし! 戦略シュミレーションゲーム。

「バエル! 田畑も何から何まで自分でやって領地を大きくしていくのよ!」

 恐るべし! パイモン!

「なんのこっちゃ!?」

 呆れる菜々子。

「はい! 質問!」

「なんだ? バエル。」

「今はそれでいいけど、1年たって不可侵条約の期間が終わったら、どの道私たちが戦うことになるんでしょ? それだったら何にも変わりはないと思うんだけど?」

 良い質問をする菜々子。

「そう言われてみればそうだな。仕方がないから領民は1ターンごとに1人ずつ増える仕組みにしよう。」

「セコ!」

 これで最小限度の体裁を調整する。


 1ターン目。

「菜々子。何をしよう?」

 菜々子の領民チタマが現れた。

「そうですね。お米がないと困るので田畑を耕しましょうか。」

「おお!」

 菜々子は田畑の開墾をした。

「汗を流すって気持ちいい! アハッ!」

 菜々子の領地のお米が獲れる量が増えた。

「でも、これって最初っから領民がいないと話にならないような。」

 菜々子は疑問を感じていた。


 2ターン目。

「台風が来たら川が氾濫して、せっかくのお米が食べれなくなっちゃう。治水工事をしよう。」

「おお! 多摩川なんか氾濫させないぜ!」

 菜々子は治水工事をした。

「ふ~う。これで大雨も大丈夫。アハッ!」

 菜々子とチタマと新たな領民の合計3人で治水工事をした。

「でも、少ししか治水工事できてないけど、まあ、いいか。」

 3人しかいないのでほんの少ししか工事できなかった。


 3ターン目。

「お金がないと何もできないので商業開発をしよう。」

「おお! いっぱい儲けるぞ!」

 菜々子は商いをした。

「なんだろう? 私の領土には人がいないな。これではまったく利益がでない。」

「人は夢のある所に集まるかな。もっと商いを繰り返して村から町、町から都市へと魅力を上げていかないとね。」

 僅か3カ月では街づくりは完成しない。


 4ターン目。

「盗賊がでたぞ! 領土を守るんだ!」

 町を開発して豊かになると賊から狙われる。

「チタマ! そして領民諸君! 賊と戦い領土を守るのだ!」

「おお!」

 菜々子の領民は賊と戦う。

「でやー!」

「とりゃあ!」

 何とか勝利した菜々子軍。

「やったー! 勝ったぞ!」

「でも領民の半数が死んじゃいましたね。」

 領民が4人から2人になってしまった。

「領民の訓練をしておけば良かった。」

 公開先に立たずである。

「その前に防衛線に菜々子が参戦すれば誰も死ななくて良かったんだよ。」

「あ!? そっか!? その手があったか!? アハッ!」

 笑って誤魔化す菜々子。


 5ターン目。

「えい! やあ!」

 チタマは剣を振って訓練する。

「一般領民は兵士なのかな? 普通は一般領民から兵士を募集して義勇軍を作るのでは?」

「そうか? 一般の領民は人口で、そこから兵士を募集するのが自然の流れか。」

 やってみると問題が次々と出てくるもんだ。


 6ターン目。

「今、人口は4人。そこから兵士を募集して2人を兵士にしよう。しっかり働いてね。」

 菜々子は兵士を募集した。

「これで賊とも戦えるはず。」

 少しずつだが街づくりは進んでいく。


 7ターン目。

「やったー! お米の収穫だ!」

 菜々子はお米を手に入れた。

「え・・・・・・これっぽっち。」

 開墾を1回しただけなのでお米の収穫量は少なかった。

「こんなに少なかったらお米を巡って内乱が起こっちゃうよ!?」

 町づくりは大変なのだ。

「まだ私の領土の人口が5人なんだが、その五人が少ないお米を奪い合って殺し合うのか!?」

 思わず笑ってしまう面白さである。もちろん兵士の2人が一般領民を殺して、兵士2人と一般領民のチタマ1人しか生き残っていない。

 

 8ターン目。

「こういう時には治水工事だ! 台風に備えるぞ!」

 菜々子たちは治水工事に精を出した。

「結局、治水工事も4人でやることになるのか。いつになったら堤防が完成するのやら。」

 先の遠い話である。


 9ターン目。

「町を開発しよう。5人でやれば少しは賑わうはずだ。」

 菜々子は街を開発した。

「まだまだ通行人が少ないからお金が儲からない。」

 先の遠い話である。


 10ターン目。

「族が出たぞ!」

 菜々子が街を開発すると必ず族が金品を狙ってやってくる。

「いけ! 兵士たち!」

「おお!」

 前回を反省して1回兵士を募集して、1回訓練をした。

「ギャアアアアアアー!」

 兵士数が少ないのと訓練回数が少ないので賊に菜々子軍の兵士は皆殺しにされた。

「兵士がゼロで、金品も奪われてしまった!? ガーン!」

 菜々子の人口は領民4人だけになってしまった。


 11ターン目。

「兵士を募集するぞ!」

 菜々子は兵士を募集した。

「3人の兵士を雇用したぞ!」

 人口は5人。兵士3人。領民2人。

「こんなんじゃまったく街が大きくならないよ!」

 菜々子、心の叫び。


 12ターン目。

「遂に最終ターンになってしまった。何もできていないような・・・・・・。」

 菜々子は1年12カ月設定の12ターンの不可侵条約期間を終えようとしていた。


ピキーン!


 その時、菜々子は閃いた。

「そうか! 私を不老不死にして100年くらい生きて、街づくりを続けていけば、きっと初心者が来たら簡単に踏み潰せるくらいの強国になっているはず!」

 継続は力なり。

「かといって、こんなつまらない展開を10万字が終わるまで続けるものだろうか?」

 まあ、物語とはこういうものの積み重ねである。

「三国志、信長。どちらもスタート時点で人口がいたり、お米やお金が手に入ったり、恵まれてるな。恵まれ過ぎだ。」

 でも確かに物語を進める上で時間軸というものも大切ではある。永遠に年を取らない物語や連載20年で100巻を超えるようなアニメや漫画はキャラクターはいいが、実際に生きている人間はどこかで、そのアニメを卒業しないとダメ人間になってしまう。

「だからドラえもんとかアンパンマンは、どこかでファンが引退、卒業できるように1話完結のどうでもよい内容の繰り返しなのか。そう考えると納得できる。」

 下手に○○編とかにしてしまうと、その辺が終わったら、その作品は終わりだからな。

「と、言っている間に制限時間が過ぎてしまい12ターン目は何もしなかった。」

 こんな人生で菜々子は1年を無駄に過ごした。

「これ受験生ならアウトじゃねえ? 1年を無駄に過ごすなんて、私はなんという取り返しのつかないことをしてしまったんだ!? うおおおおおおおー!」

 若さ故の過ちである。ちなみにもう鬼滅の刃の再放送なんかは見ない。飽きた。何が面白いんだか。大人がお金儲けのために誇大広告をうち、自分の意見の無い一般大衆が右向け右しただけである。

「完成された街が合って、そこに人が生まれたという解釈が正しい。」

 結論である。


「ふっふっふ! ふがいっぱい! 勝負だ! バエル!」

 不可侵条約の1年の月日が過ぎてパイモンが現れた。

「クッ!? こんな状態でどうやって戦えばいいんだ!?」

 菜々子は焦っていた。それもそのはず町というものは1年12ターン如きでは完成しないということを実感したからだ。昔の人は本当に偉いぜ、と思う菜々子であった。

「街づくりに苦労したようだな。」

「ギクッ!」

 パイモンには一目瞭然であった。

「私が正解を教えてやろう!」

「なに!?」

「これが街づくりの正解だ!」

 今明かされる戦略シュミレーションゲームのパイモンの攻略法とは。

「なに!? 兵士ばっかりじゃないか!?」

 パイモンの兵士は訓練されて精鋭に育っていた。


 パイモン1ターン目から12ターン目までの行動。

1ターン目、兵士を募集。領民1、兵士1。

2ターン目、兵士を訓練。領民2、兵士1。訓練1

3ターン目。兵士を募集。領民3、兵士2。訓練1

4ターン目。兵士を訓練。領民4、兵士2。訓練2

5ターン目。兵士を募集。領民5、兵士3。訓練2

6ターン目。兵士を訓練。領民6、兵士3。訓練3

7ターン目。兵士を募集。領民7、兵士5。訓練3

8ターン目。兵士を訓練。領民8、兵士5。訓練4

9ターン目。兵士を募集。領民9、兵士6。訓練4

10ターン目。兵士を訓練。領民10、兵士6。訓練5

11ターン目。兵士を募集。領民11、兵士8。訓練5

12ターン目。兵士を訓練。領民12、兵士8。訓練6


「兵士を強くして戦で勝てばいいのだよ! 勝手略奪するから内政に意味はないのだ! 田畑や治水、商業など放っておけばいいのだ! これが正解だ!」

理にかなったパイモンの戦略。

「私のために街を開発してくれてありがとう! ワッハッハー!」

 最初っから他人が開発した街を奪うつもりのパイモン。

「そ、そんな・・・・・・。」

 落胆する菜々子。

「いけ! 兵士ども! バエルの国を滅ぼすのだ!」

「おお!」

 パイモン軍がバエル領に襲い掛かる。

「ギャアアアアアアー! 殺される!」

 領民のチタマはパイモン兵から命かながら逃げ回る。

「ええ~い! こうなったら一騎打ちだ!」

 菜々子は敵の大将のパイモンの首を狙う。

「え? 一騎打ち? そんなことしたら戦略シュミレーションの意味がないじゃん。」

 結局、菜々子とパイモンが戦うことになる。

「いくぞ! パイモン! これが私のハイパーメガ粒子砲だ!」

 菜々子はハイパーメガ粒子砲をぶっ放す。

「ギャアアアアアアー!」

 パイモンは倒された。

「私が地球を救います! ロード・トウ・ピースです! アハッ!」

 勝利を告げる菜々子。

「菜々子ちゃん。ご飯よ。」

 チタマのママが菜々子にご飯を伝える。

「はい。直ぐに行きます。ご飯! ご飯!」

 そして何事も無かったようにご飯を食べる菜々子であった。

「美味しい! アハッ!」

 戦え! 菜々子! 地球の平和のために!

 つづく。

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