第4話 菜々子SOS4

「なに!? ウァレフォルも負けたというのか!?」

 報告を聞いて驚くアモン。

「クソッ! 裏切り者如きが私の地球満喫の旅を邪魔するというのか!」

 悪の組織ゴエティアのアモンは旅のスケジュールを狂わされてお怒りだった。

「こうなったら私が出るしかないな。私の恐ろしさを教えてやる!」

 アモンが菜々子に向かって飛び立つ。


「平和っていいですね。」

「それはお腹がいっぱいですという意味か?」

 菜々子はご飯を食べて満足だった。

「でも、こういう平和っていつまでも続かないんですよね。きっと敵が現れて平和な時間が終わっちゃうんですよね。」

「仕方がないよ。そうしないと物語が成立しないんだから。」

 意外に現実的な菜々子とチタマ。


「出てこい! 裏切り者!」


 その時、チタマの家の外で呼び出しを叫ぶ声がする。

「ほら、おいでなさった。」

 菜々子の予想は的中した。

「がんばってね。菜々子。」

「はい。私が地球を救います! ロード・トウ・ピースです! アハッ! チェンジ・デビル・スーツ・バエル!」

 菜々子はバエルに変身する。

「今日のおやつは塩せんべいだ。」

「やったー! 塩せんべい! 食べるまで死ねませんね! アハッ! 菜々子! 行ってきます!」

 菜々子はチタマの家のカタパルトから発射する。

「それ! いけ! 菜々子!」

 チタマは笑顔で手を振り菜々子を見送る。


「来たな。裏切り者。」

 アモンは菜々子を迎え撃つ。

「なんだ!? おまえたちは!? 確かに私が倒したはず!?」

 菜々子の目の前には倒したはずのウァサゴ、ガミジン、マルバス、ウァレフォルがいた。それとアモンも。

「私の名前はアモン。炎を扱うゴエティアだ。私の炎は死者を操ることができるのだ。」

「なんだって!? なんて恐ろしい能力なんだ!?」

 菜々子はアモンに恐怖した。

「さあ! 戦おうかバエル! 私たちは戦うことでしか分かり合えないのだからな!」

 アモンがゾンビのゴエティア4体と同時に菜々子に襲い掛かる。

「ウワアアアアアー!」

 菜々子は5対1という不利な状況でなぶり殺しにされる。

「どうした! 裏切り者! 今更謝っても許してやらないぞ! ワッハッハー!」

 迫りくるアモン。

「クソッ!? 私はここで死ぬのか? まだ・・・・・・クリスマスケーキも寒ブリも食べていないのに・・・・・・せめて、おせちを食べて見たかった・・・・・・無念だ。」

 菜々子は朦朧とする意識の中でも食い意地がすごかった。

「とどめだ! 裏切り者!」

 アモンが炎の剣で菜々子に迫る。


グサッ!


 その時、アモンの後ろからアガレスが斧を突き刺す。

「バカな!? なぜアガレスが!?」

 アモンは不意を突かれた。

「明日香!?」

 菜々子の窮地を救ったのは明日香のアガレスであった。

「私は菜々子のお友達だから、菜々子がピンチの時には駆けつけるよ。」

「ありがとう! 明日香!」

 素晴らしい菜々子と明日香の友情であった。

「それに貸したお小遣いの3000円も返してもらってないしね。」

 お友達同士でお金の貸し借りはやめよう。

「利子もつけて3300円で返すわよ。」

 思わぬ救援に感動する菜々子。

「クソッ! 私が死んでも次から次へと強いゴエティアが未来からやってくるのだ! 覚悟していろよ! 裏切り者! ギャアアアアアアー!」

 アモンは倒されて消えていった。

「さようなら。菜々子。この美しい地球を必ず守ってね・・・・・・。」

 明日香もアモンが消えると同時に消えていく。

「約束するわ! 絶対に地球を守ってみせるから!」

 菜々子は涙を流しながらお友達の明日香に別れを告げた。

「お金返さなくて済んだわ。ラッキー! 帰りにどら焼きでも勝って帰ろう! アハッ!」

 運も菜々子に味方した。

「私が地球を救います! ロード・トウ・ピースです! アハッ!」

 果たして菜々子は地球を救えるのだろうか?


「なに? 裏切り者のバエルを倒しに行ったアモン隊が全滅だと!?」

「はい。アモン小隊長と連絡が取れなくなりました。」

 3000年の未来の悪の組織ゴエティアの本部にアモンが倒された報告があった。

「まさか!? バエルにやられたのか?」

「厄介だな。バエル。」

 ゴエティア本部に激震が走る。

「何を言っているのです。私たちが行ってバエルを倒してみせますよ。」

 そこに何人かのゴエティアが現れる。

「おまえたちは!? バルバトス! パイモン! ブエル! グシオン!」

 新たなゴエティアが現れる。

「裏切り者の処刑はお任せください。」

「そうです。私たちならバエルなんてちょちょいのちょいですよ。ワッハッハー!」

 バルバトスたちは自信満々である。

「おまえたち!? ただ過去の地球が見たいだけとか言わないだろうな?」

「ギクッ!? ま、ま、まさか!? 私たちは裏切者が許せないだけですよ!」

 本音がバレそうでドキドキするバルバトスたち。

「分かった。それではおまえたちに裏切り者バエルの処理をまかせよう。」

「はい。かしこまりました。」

「やったー! 水と緑の地球旅行だ! わ~い!」

 過去の地球に行けるので大喜びのバルバトスたち。

「なんか言ったか?」

「い、いいえ。何も言ってませんよ。それでは準備がありますので失礼します。」

 バルバトスたちはゴエティア本部から逃げ去った。

「待ってろよ! バエル! もうすぐ私が行くからな!」

 バルバトスはバエルと何やら因縁があるらしい。


「美味しい! 秋はやっぱり秋ナスだな~! アハッ!」

 その頃、危険が迫っているとは知らない菜々子は秋ナスを食べていた。

「機械の体のどこに秋ナスを楽しむ味覚があるというのだ?」

 チタマには菜々子の体は不思議の塊であった。

「ありますよ。3000年のロボットは味覚センサー付きです。アハッ!」

 絶対に無敵、絶対に引かないのが菜々子である。

「ああ言えばこう言う奴だな。正にロボットというより人間だ。」

 呆れるチタマ。

「お褒めいただきありがとうございます。半人半ロボですから。アハッ!」

 驚異の未来の地球の科学力。

「人間模様とか、人間関係とか大事でしょうか? 自分と同じ立場だから共感するとか、弱いのが強くなるから応援したいとかいいますが、結局の所、話が長いので面白くないとファンがついてきません。だから私は天然でネジが1本抜けている毒舌ロボットなのです。アハッ!」

 丁寧に説明してくれる菜々子。

「納得するわ。」

 感心するチタマ。

「例えば第1話に巨人に母親を食われた、鬼に家族が皆殺し生き残った妹は鬼にされた、本当は猫型ロボットなのにネズミに耳をかじられる、おじいちゃんが死んだのは自分が満月の日に申に変身して踏み潰した、鮫に片腕を食べられるぐらい弱かった人に麦わら帽子を貰うとか、第1話にこれだけ不幸を並べた物語なんて嫌ですよね。」

「でも現代人の心は歪んでいるから闇に堕ちるくらいの設定が好きな人が多いんじゃない?」


ピキーン!


 その時、菜々子は何かを感じ取った。

「ゴエティアの気配! 結局、私は戦い続けるしかないんですね! チェンジ・バエル!」

 菜々子はバエルに変身する。

「菜々子! 行ってきます!」

「それ! いけ! 菜々子!」

 菜々子は空高く飛び立った。



ズドーン!

 どこからか弾丸が飛んでくる。

「なに!?」

 菜々子は弾丸を交わす。

「敵の姿が見えないのに弾が飛んでくる!?」

 次々と飛んでくる弾丸を交わす菜々子。

「相変わらずやるな! バエル!」

 そこにゴエティアが現れる。

「おまえはバルバトス! どうしておまえがここに?」

 菜々子はバルバトスを見て驚く。

「アモンたちが役立たずなので私がおまえを倒すために派遣されたのだ。ここをおまえの墓場にしてくれるわ!」

 バルバトス特攻する。

「そうはいくか! 私だって戦いを繰り返すことで強くなったのだ! おまえなんかに負けるものか!」

 菜々子も突進する。

「でやあああー!」

「だああああー!」

 菜々子とバルバトスの激しい撃ち合いが繰り広げられる。

「なぜだ!? 以前のバエルとパワーが違う!? 私と互角に剣を撃ち合えるなんて!?」

 バルバトスは菜々子のパワーがアップしていることに驚く。

「おまえなんかに分かるまい! これは私の亡き友のアガレスのパワーだ!」

「なに!?」

 重装型のアガレスと戦ったことによりバエルのパワーはアップしている。

「なら! この近距離で私の射撃からは逃げられないぞ! 死ね! バエル!」

 バルバトスは近距離射撃を行う。

「それはどうかな?」

 バエルがバルバトスの放った弾丸を交わす。

「バカな!? 私の近距離射撃を交わしたというのか!?」

 バルバトスは驚く。

「まさか!? この見えない動きはウァサゴの暗殺起動か!?」

「その通りだ。私はウァサゴと戦ったからこそ、奴の消える動きを覚えることができたのだ。」

 バエルは敵と戦うことで能力が成長していた。

「それではおまえは戦えば戦う程強くなるというのか!?」

「おまえにも見せてやろう。おまえの心の中のトラウマを。バエル・ドリーム!」

 菜々子はバルバトスの心のトラウマに触れる。

「やめろ! お父さんとお母さんを殺さないでくれ! 従う! 従うからやめてくれ! ゴエティアに忠誠を誓うから!」

 バルバトスは両親を悪の組織ゴエティアに人質に取られ仕方がなく悪の手先になっていたのだった。

「はあ・・・・・・はあ・・・・・・夢だったのか!?」

 冷や汗をかきまくったバルバトスが正気を取り戻す。

「夢じゃない。本当のこともあるぞ。」

「なに!? なんだ!? この倦怠感は!? まるで病気にかかったような!?」

 バルバトスは健康に不安を感じた。

「それはマルバスのロナ・ウイルスだ。」

「ロナ・ウイルス!? あの世界の人間を半壊にまで滅ぼしたという!? あのロナ・ウイルスか!?」

 バルバトスはロナ・ウイルスに感染した。

「なぜだ!? なぜ私がロナ・ウイルスに感染するのだ!?」

「私は戦った相手の技を盗むことができるのだ。ウァレフォルの盗むスキルを会得したのだ。」

「なんだと!?」

 菜々子はドンドン強くなる。

「そして、これがアモンの炎の力だ!」

 菜々子のバエルが燃え上がる。

「バルバトス! おまえの正確な射撃のスキルはもう頂いた! 安心して成仏するがいい! くらえ! バエル! ファイア・メガ粒子砲! 発射!」

 菜々子は炎のメガ粒子砲をぶっ放す。

「ギャアアアアアアー!」

 バルバトスを倒した。

「私が地球を救います! ロード・トウ・ピースです! アハッ!」

 菜々子は戦いに勝利した。

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